「LEAPWING AUDIO RootOne」製品レビュー:サブハーモニクスとハーモニクスを生成し低域を拡張するプラグイン

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 EQやコンプレッサー処理以上の低音増幅への欲求は、1990年代中期から高まり、DBX 120XPやSPL Vitalizerなどサブハーモニック系ハードウェアの名機を生み出しました。その後WAVES MaxxBassやRenaissance Bass、BRAINWORX BX_Subsynthなどの優秀なプラグインが生まれ、現在もさまざまなヒット曲に使用されています。ここ数年は、ストリーミングが主なリスニング環境になり、もはやサブハーモニック・ジェネレーターはジャンルを問わず使われるように。その需要に答えてか、このたびLEAPWING AUDIOからサブハーモニクス系プラグインRootOneがリリースされました。

 

任意の周波数で低域を3分割
サブ付加のばらつきもコントロール

 LEAPWING AUDIOは定番のDynOneを生み出した信頼のおけるメーカーという認識があり、低音処理はもともと非常に興味があるので、今回のRootOneはリリース直後に即試しました。サブハーモニクスの合成の自然さも合成された量感も驚くレベルというのが第一印象。キックやベース、低い帯域のパーカッションなどさまざまな素材で試しましたが、どれも今まで聴いたサブハーモニクス系プラグインの中では断然ナチュラルです。LEAPWING AUDIOのアルゴリズムの仕上がりはかなり高いレベルだと感じました。

 

 RootOneは、Mac/Windows対応で、AAX/AU/VSTに準拠。プラグイン内部はサブベース成分を付加するサブハーモニクス部門と、倍音を付加するハーモニクス部門で構成されています。まずはサブハーモニクスから見てみましょう。こちらは、低域を任意の周波数で3分割できます。

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サブハーモニクス部では、低域をSUB、THUMP、PUNCHの3帯域に分割することが可能。クロスオーバー周波数は任意の数値に変更することができる

 各帯域には、ひずみを加えるDRIVE、音量のダイナミクスの具合を調整するDYNAMICS、音のリリースを制御するDECAYの3つのパラメーターを搭載。低音はピッチが低過ぎると音としての存在感が分かりづらくなるため、DRIVEは必須です。サブベースの処理にはひずみ系プラグインを使用するのが定番技となっています。DYNAMICSは、数値を下げると音高によってバラつきの出がちなサブベースの音量差を無くすことができ、かつサブベース成分をブーストした感じに鳴らせます。逆に数値を最大にするとオリジナルの音量に追従することも可能。サブベースの音量がフレキシブルに調整できるので非常に便利でした。キックの長さが足りずローエンドの存在感が出づらい場合、DECAYの数値を上げるとサブベースの成分が長くなり、オケ中でのキックの存在感をコントロールできます。ソロ・ボタンを使うと帯域ごとに試聴できるので、設定したいポイントを見付けるのも簡単です。

 

 周波数設定のTipsとしては、楽曲のキーを調べてそのスケールに対応した周波数で設定するとうまくいくことが多いです。まずルート音の周波数を設定し、残りをその倍数もしくはスケールに対応した音階の周波数に設定すると抜けが良い低音を作りやすくなります(プリセットでも周波数設定が倍数になっているのを確認できます)。

 

倍音を加えることで
小さいスピーカーでも低域の存在感を出す

 次に、ハーモニクス・セクションです。こちらはピッチが低過ぎて小さいスピーカーで聴こえないことに対処するところ。倍音を付加することで上の周波数を意識させ、ピッチが低過ぎるサブベースなどのベース・ラインがとらえやすくなります。パラメーターも的を射た内容です、DRIVEでひずみ成分を付加。さらにCOLORというパラメーターでは、最小の場合はテープ・シミュレート、最大にすると真空管シミュレートというように、生み出される倍音の特徴を選ぶことができます。また、ローパス・フィルターも搭載。倍音成分がうるさくなり過ぎたときには重宝します。

 

 RootOneで合成したサブハーモニクス、ハーモニクスと原音の量を調整する“ドライ/ウェット”のパラメーターは無いですが、ORIGINALフェーダーを0にすれば原音が無くなるので合成された音だけを調整できますし、OUTPUTと組み合わせればドライ/ウェットの調整も容易です。

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画面の右側には2本のフェーダーを搭載。左は原音の音量を調整するORIGINALフェーダーで、下げるほど元の素材の音量が下がる。トラックの出力音量は左のOUTPUTフェーダーで調整できる

 サブハーモニクス系のプラグインは素材との相性の問題があるので種類はいくらでも欲しいですが、そういった意味でもRootOneはこれまでにないタイプの効き方をするので、サブベースを多用する方には必携のプラグインだと思います。

 

LEAPWING AUDIO RootOne

19,070円(価格は為替相場によって変動)

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REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.10以降(64ビット)、AAX/AU/VST対応のホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 8/10(64ビット)、AAX/VST対応のホスト・アプリケーション
▪共通:200MB以上のディスク空き容量、インターネット環境およびE-Mailアドレス(オーソライズ用)

 

D.O.I.

【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心に多彩な音楽に精通し、国内外のさまざまなプロダクションに参加している。

 

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