2021年も、音楽制作ツールの世界では個性的な機材やソフトが数多く生み出されました。クリエイターやエンジニアたちは、その中から何を選び活用してきたのでしょう? 総勢30組に“本気で惚れたツール”を紹介していただきましたので、第8弾では馬場友美、諏訪桂輔、鈴木Daichi秀行のツールを見ていきます。
馬場友美
【Profile】サウンド・エンジニア。2007年にエピキュラススタジオへ入社。スタジオ閉鎖とともにフリーランスになる
Recent work
『DORAYAKI』
擬態屋
(トイズファクトリー)
AUDIO-TECHNICA AT4081[Ribbon Microphone]
気軽に使えるリボン・マイクが欲しかったので購入しました。値段もお手ごろなので2本買いです。擬態屋というユニットのアルバム『DORAYAKI』は、楽器をたくさん並べておいてその場で思いついた音をどんどん重ねていく制作スタイルだったのですが、迷ったらこのマイクを使えばいいなという気持ちで常時置いておきました。ギター、ピアノ、パーカッションなどいっぱい使用しています。フルート、ファゴットを同時に録音する機会がよくあるのですが、音が硬くなり過ぎず、かといって埋もれずに聴こえてくるし、何もしなくても2本がなじむのでとても助かっています。見た目もスタイリッシュで美しく、見るたびにテンション上がるところもお気に入りです。
諏訪桂輔
【Profile】PLANET KINGDOM、studio MSRを経て、現在フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニアとして活動中。木梨憲武、三月のパンタシア、anchorage、EOW、Mizkiといったアーティストのほか、アニメ系からネット・アーティストまで幅広く手掛ける気鋭
Recent work
『River』
Mizki
(ユニバーサル)
PUEBLO AUDIO JR2/2[Mic Preamp]
マイクプリです。もともと所属していたスタジオに何セットかあり、自分でも所有したいと思い購入しました。クリーン系のマイクプリには種類がありますが、個人的には少し細かったり味が少ない印象を受けるものが多かったです。ただ本機はそんなことはないですね。低域にもっちりとしたコシがありながら高域も奇麗に伸びています。ジリッとした質感ではなく、とても伸びやかで気持ち良い音だと感じます。
高域がよく伸びているマイクを使用した際、ピーキーに感じられることがあると思いますが、このJR2/2なら程良くいなしてくれるので気にならなくなりますね。SN比も良いので、リボン・マイクとも相性が良いと思います。
マイクプリ2ch+電源ユニットで合計40万円ほどと決して安価ではないのですが、その電源ユニット1台で最大8ch分のマイクプリに電源供給できるので、何chか所有する予定があればコスト・パフォーマンス的にも良い製品だと思います。
鈴木Daichi秀行
【Profile】プロデューサー/作編曲家。Studio Cubic Recordsを主宰。YUI、絢香、Non Stop Rabbit、いきものがかり、家入レオ、ABC-Z、森翼、miwaなどの作品に携わってきた。自らエンジニアリングも手掛け、新旧のレコーディング機材にも造詣が深い
Recent work
『TRINITY』
Non Stop Rabbit
(ポニーキャニオン)
WESAUDIO NGBusComp[Stereo Bus Compressor]
WESAUDIOの製品はAPI 500シリーズの_Dione(ステレオ・バス・コンプ)などをレコーディングやミックスなどで使用していました。_Dioneの上位機種とも言えるNGBusCompは発表当時からとても気になっていて、デモ機をお借りして即購入することにしました。Non Stop Rabbit「BAKEMONO」での使用など、購入後はドラム・ミックス・バスに必ずインサートしています。
プラグインからのコントロールやリコールも簡単で、なおかつ本体そのものはアナログ・ハードウェア。まさにデジタルとアナログの良いとこ取りをした形で、現代の音楽制作にマッチしたユニークな仕様でとても使いやすいです。倍音を足すTHDが連続可変コントロールになっていたり、トランスをドライブさせるIRONモードの効果は絶大で、バス・コンプレッサーとしての機能はもちろん、積極的に音色を作り込むことができるハードウェア・ツールとしてレコーディングやミックスに大活躍しています。
【特集】本気で惚れた音楽制作ツール2021
製品情報
JR2/2-ADR • Dual Mic Preamp with Gain Pots & Limiters