“聴かせたいパートは何か”というのをしっかり決めてユニークな音にする
世界の各都市で活躍するビート・メイカーのスタジオを訪れ、音楽制作にまつわる話を聞く本コーナー。今回登場するのは、東京育ちで現在はロサンゼルスを拠点に活動するシンガー・ソングライターのSHIMAだ。2021年にユニバーサルからメジャー・デビュー。作編曲、ミックス、マスタリングまで一人で行うマルチな才能を生かして、国内外のアーティストへの楽曲提供も行っている。
Interview:Susumu Nakagawa
キャリアのスタート
幼少期からピアノやバレエを習っていて、大学ではミュージック・エンジニア学科を専攻しました。卒業後はロサンゼルスに拠点を置くソフトウェア・メーカーのOUTPUTで働きながら、楽曲を自主リリースしていたのですが、だんだん音楽活動に専念したいと思うようになり現在に至ります。
制作環境
APPLE MacBook Proをメイン・マシンに、DAWはABLETON LiveとAPPLE Logic Proを使っています。前者はビート・メイキング用で、後者は主にボーカル・レコーディングで使用していますね。コンピング機能は両DAWに付いていますが、Logic Pro Xの方が方が扱いやすいです。また、ボーカルだけ別のプロジェクトで編集して書き出す方が、CPU負荷も軽くなるので効率的だと感じています。Logic Pro付属のリバーブ・プラグインSpace Designerのプリセットも気に入っていますね。オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Arrowを持っていて、ボーカル録り用途としては全く問題無いクオリティです。
モニター環境
モニター・スピーカーは、本格的なモニターが欲しいなと思ってYAMAHA HS7をビート・メイキング用に購入しました。このスタジオでは低域が回るので、ベース・トラップを設置して対応しています。ミックス時に使用するヘッドフォンは、AUDIO-TECHNICA ATH-M50X。高校生のころから使用していて、ハイエンドにかけてシャープなサウンドがするのですごく好きなんです。
使用マイク
大学のときにいろいろなマイクを試した中で一番自分の声に合っていると思ったのが、コンデンサー・マイクのNEUMANN TLM 103です。クリアな音質が気に入っています。デモから本番用マイクとして活躍していますね。
お気に入りのソフト音源
ソフト・シンセのXFER RECORDS Serumが、一番のお気に入り。NATIVE INSTRUMENTS Massiveも持っていますが、Serumの方が視覚的にサウンド・デザインしやすく、音の解像度も高いと思います。プリセットは格好良いものが多く、シンセ・パッドやシンセ・ベースなどで多用していますね。ドラムはLive付属のDrum Rack。WebサービスのSpliceからダウンロードしたオーディオ・サンプルをアサインしています。そのほかのパートには、NATIVE INSTRUMENTS Kompleteのインストゥルメントを用いることが多いです。
お気に入りプラグイン・エフェクト
IZOTOPEのプラグインが大好きで、ほとんど所持しています。特にディストーションのTrash 2とマスタリング専用のOzone 9は最高です。マスタリング時はOzone 9とWAVES SSL G-Master Buss Compressorが必須ですね。そのほかOUTPUT Portalもお薦め。聴いたことの無いような複雑なサウンド・エフェクトを施すことができます。退屈なサウンドもこれ一発で面白い音になりますね。
今後の展望
私しか作れないサウンドを表現したいんです。リスナーは大体2つの要素、例えばドラムとボーカルなどしか同時には聴いていないという話があります。だから“聴かせたいパートは何か”というのをしっかり決めて、それらをユニークなサウンドにするのが大事だと考えているんです。そうすることで、リスナーの心に残る曲が作れると思います。またヒップホップが大好きなので、今後は日本のヒップホップ/R&B系アーティストにも楽曲提供できたらうれしいですね。
SELECTED WORK
『CONMAN』
SHIMA、Sumire
(+81 Music/ユニバーサル)
同じ環境でボーカル録りしたのですが、自分とSumireちゃんのEQ処理が全然違っていたので驚きました。2人の声がうまくマッチして聴こえるようにミックスを頑張った作品です。