STEVEN SLATE AUDIO Patrick Carney Expansion レビュー:パトリック・カーニーのドラムを収録したSSD5&Trigger2用拡張音源

STEVEN SLATE AUDIO Patrick Carney Expansion レビュー:パトリック・カーニーのドラムを収録したSSD5&Trigger2用拡張音源

 STEVEN SLATE AUDIOのドラム音源SSD5と、同社のドラム・リプレイサー・プラグインTrigger2の拡張サウンド・パックとして、Patrick Carney Expansionがリリースされました。ザ・ブラック・キーズのドラマー、パトリック・カーニーによる“地球上で最も太いドラム・サウンド”と謳われる新作ドラム音源を早速試していきます。

ドラム音源SSD5&ドラム・リプレーサーTrigger2

 まずは本体であるSSD5とTrigger2の説明からしていきましょう。SSD5は、ポップスやラウド・ロック、インディー・ロックなどにバッチリ合うサンプルに加え、ジャズ系のキットやサンプルも多数収録されたドラム音源です。筆者は長らくSSDを愛用しており、軽快な動作と抜けが良いタイトなサウンドを気に入っています。リアル過ぎて知識が無いとミックスが難しかったり、逆に過激に処理されていてミックス時に困ったり……ということが無く、全体的にバランスの取れた質感が特徴です。

 

 メイン画面左側のメニューから“Create”を選択し、上部メニューから“Kits”を選択すると、ドラム・キットが表示されます。キットをロードするだけで、即戦力になるドラム・サウンドが得られるのがSSD5の魅力です。データ量はどのキットも2GB程度。リアル系のドラム音源の中ではかなり少ない容量なので、CPU負荷が軽いのもうれしいですね。上部メニューから“Inst”を選べば、バス・ドラムやスネアなど個々のパーツが表示されます。まず“Kits”で好きなドラム・キットを選び、その後“Inst”で各パーツを差し替えていくのがお勧めです。

 

 ほかにも、Editメニューから各パーツのピッチやベロシティ・カーブなどの細かい設定をしたり、Mixメニューでミキサーを使ってのフェーダー操作も可能。Groovesメニューには多くのリズム・パターンが収録されているので、打ち込みが苦手な人でも、DAWにドラッグ&ドロップするだけで演奏のMIDIデータを楽曲に取り込むことができます。

 

 続いてTrigger2について説明しましょう。Trigger2は生ドラムなどの音をリプレースするプラグイン。サンプルの音色はロック向けのものが多いです。プリプロでイメージに近い音色を作り込んだ場合、後で生ドラムに差し替えた際に意図したイメージと異なる場合が多くあります。そんなときに、生ドラムをもともとSSD5で作り込んでいた音色に差し替えたり、両者をレイヤーすることで、イメージに近いドラム・サウンドに素早く仕上げることが可能です。単純にサンプルを並べていくよりも、強弱による音色変化が付けられるので生ドラムとのなじみが良く、筆者も愛用している製品です。

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STEVEN SLATE AUDIO Trigger2の画面。生ドラムを差し替えたり、選択した音色をレイヤーすることができる

タイトで骨太なサウンド

 それでは今回の拡張パックPatrick Carney Expansionを見ていきましょう。1961年のGRETSCH Round Badgeや1970年代のLUDWIG Vistaliteというビンテージ・ドラムを使用し、パトリック・カーニーのプライベート・スタジオで収録された拡張ドラム音源です。全体的にドライに録音されており、タイトで重心が低く、骨太なサウンドです。

 

 SSD用に12種類、Trigger2用に18種類のプリセットが用意されています。中でもHybrid Darkは、しっかりミュートされたタイトなスネアとキックがセレクトされており、ファンクやポップスに合いそうです。また、Hybrid Dirtyはパンチがあり重心が低く、オープンなサウンドなのでロック系に合いそうだと思いました。Signatureプリセットも3種類用意されているので、あらかじめ加工された音を使いたい場合はこちらから選ぶと良いでしょう。

 

 サンプルは加工済み(processed)と、加工無し(raw)のデータをそれぞれ収録。素材はなるべくそのままでミックス時に細かい音作りをしたい人、手軽にクオリティの高い音を使いたい人、どちらにも応えられる仕様になっています。

 

 またプレート・リバーブEMT 140のサウンドも収録されており、エフェクトとしてミキサーに立ち上げて個別に調整可能です。滑らかで深みのあるリバーブなので、ミックスの際にも重宝するでしょう。

 

 ルーム感が多いサンプルはほかの楽器とのマッチングが難しい場合が多くあります。その点、Patrick Carney Expansionはタイトに収録されているので、ミックス時の調整もしやすいと思いました。ポップスやロック、ファンクやディスコなどにとても合いそうなサンプルが多数収録されています。こういった質感のサンプルは今までに意外と無かったので、いろいろな場面で重宝しそうです。

 

 駆け足でレビューしてきましたが、Patrick Carney ExpansionはCPUやメモリーの消費量も低く、とてもリアルでタイトなサウンドのドラム音源です。SSD5やTrigger2との組み合わせで、作曲やアレンジ、ミックスまでのサウンド・イメージがシームレスにつながり、楽曲制作の強い味方になってくれると思います。

 

鈴木Daichi秀行
【Profile】幅広い音楽性を生かして活動するサウンド・プロデューサー。家入レオやYUI、miwaらをはじめ、トップ・チャートに輝く楽曲に多く携わる。レーベルStudio Cubic Recordsを運営している。

 

STEVEN SLATE AUDIO Patrick Carney Expansion

オープン・プライス

(市場予想価格:11,000円前後)

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REQUIREMENTS
●SSD5
▪Mac:macOS 10.10以降(64ビット)
▪Windows:Windows 7以降(64ビット)
▪共通:1GHz INTEL Dual Core以上のCPU、AAX/AU/VST対応のDAW、4GB以上のRAM、1,024×768px以上の解像度、マシンIDまたはiLokドングル

●Trigger2
▪Mac:OSX 10.9以降(64ビット)
▪Windows:Windows 7以降(32ビット/64ビット)
▪共通:2.2GHz INTEL Dual Core以上のCPU、AAX/AU/VST対応のDAW、4GB以上のRAM、1,024×768px以上の解像度、マシンIDまたはiLokドングル

製品情報

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