「IK MULTIMEDIA Uno Synth Pro」製品レビュー:3基のアナログ・オシレーターを搭載したパラフォニック・シンセ

「IK MULTIMEDIA Uno Synth Pro」製品レビュー:3基のアナログ・オシレーターを搭載したパラフォニック・シンセ

 最近は高級なビンテージ・シンセやモジュラー・シンセと、低価格のガジェット系シンセの両極端な製品が気になっている。そんな中、IK MULTIMEDIAから発売されたアナログの3パラフォニック・シンセサイザー、Uno Synth Proは、豊富なパラメーターをコンパクトにまとめあげながら、3オクターブ/37鍵で定評のあるFATAR製プレミアム・シンセ・アクション鍵盤を採用。頑丈で高級感がありながら手に入れやすい価格で、注目したい製品だ。

フィルター・モードは合計24種類、つまみ一つで2つのフィルターを操作可能

 Uno Synth Proは3OSC+2VCF+EG(ADSR)+2LFOを搭載したパラフォニック・シンセ。プリセットは256種類あり、DATAつまみを回して全音色に即アクセスできる。パネル下部のALTボタンによるバンク切り替えと、シーケンサーでも使用する16個のボタンを使ってワンタッチで呼び出すことも可能だ。

 

 パネルを見ると、中央にある4つのつまみとその下の文字表示が目を引く。左にあるOSC、MIX、FILTER、LFOなどのモジュール別のボタンを押すことで、相当する段のパラメーターの文字が赤く点灯。上の4つのつまみでエディットするというスタイルだ。機能に対するつまみがすべて搭載されているシンセに比べると操作が2段階になるのだが、モジュール単位で分けられているのでシンセの構造を理解していればそれほど面倒には感じなかった。パネル上に無い細かなパラメーターも多くあり、小さなディスプレイとロータリー・エンコーダー・タイプのDATAつまみでエディットするようになっている。

 

 オシレーターのみ波形選択とチューン、レベルの3段構成。オシレーター波形は三角波からノコギリ波、そこからパルス波のパルス・ワイズ・モジュレーションまでつまみ一つで連続的に切り替えられるようになっており、普通のシンセに比べてさまざまなバリエーションのオシレーターが使用できる。チューンは最初はcent単位で、100cent以降は変化幅が半音単位になり、左右で±2オクターブまで設定が可能。なお、Uno Synth Proは3パラフォニックということで、ポリフォニックと違い、3音ポリで使用するときは3基のオシレーターを1基ずつ使って和音を出す。つまり各オシレーターの設定を変えれば、和音構成音ごとに異なるチューニングや、違った波形、音量バランスにするなど面白いことができそうだ。

 

 フィルターは2ポールのOTAマルチモード・フィルター、2ポール/4ポールのSSIローパス・フィルターの2つが用意されている。レゾナンスを上げたときの自己発振は非常に強烈で、エフェクトをかけたサウンドを作ってみると印象的な気持ち良いものになった。これを直列、並列、位相反転パターンを組み合わせた24種類のフィルター・モードから選択。CUTOFF、RESという重要な2つのつまみは、選択タイプの4つのつまみの左側に独立してあり、いつでも使うことができる。2つのフィルターのリンク機能を使うと、つまみ一つで2つのフィルターのカットオフを同時に動かすこともできる。

 

シーケンサーはオートメーションも記憶。音源部分が同仕様のデスクトップ版も用意

 LFOも2基用意されていて、波形や周波数のほかにもフェード・イン、シンク、フェード・カーブ、リトリガーなどといったかなり突っ込んだ設定も用意されている。アンプとフィルターのエンベロープはADSRタイプだがループ機能が付いており、エンベロープの動きをLFOのように繰り返すことができるようになっている。モジュレーション・マトリクスは16系統用意されているので、さまざまなソースからパラメーターのモジュレーションが可能だ。

 

 シーケンサーは16ステップ×4ページの計64ステップで、リアルタイム入力とステップ入力が可能。なんと最大40ものパラメーターのオートメーションまで記憶するので、表現力のバリエーションはかなり期待できる。プリセット・サウンドにはすべてシーケンス・パターンもプリプログラミングされていて、気持ちの良いシーケンス・パターンはそのままでも使えそうな印象。また、シーケンサー再生中の発音は鍵盤の方が優先されるが、シーケンスは走り続けているので、休符の多いシーケンス・パターンを鳴らしながら手弾きを重ねてパターン演奏にアドリブを加えるなどのアイディアが使えそうだ。さらにシーケンサーとは別で10種類のモードがあるアルペジエイターも用意されている。

 

 最終段にはアナログ・エフェクト・モデリングによるエフェクトがあり、オーバー・ドライブ、ディレイ、リバーブとモジュレーション系の4つのエフェクトを、それぞれ調節しながら同時にかけることができる。

 

 リア・パネルには各種出入力端子に加え、CV/Gateイン&アウトが2系統、複数台をデイジー・チェーン接続するときのパス・スルーとして、あるいは外部信号を鍵盤でトリガーしてフィルターやエフェクトを使用できるオーディオ入力が用意されているので、ユーロラックのモジュラー・シンセなどとの併用にも非常に便利だ。

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リア・パネル。左からMicro USB端子(USB MIDI対応)、CV/Gateアウト×2、CV/Gateイン×2、オーディオ・イン(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、オーディオ・アウトL/R(TRSフォーン×2)、MIDI IN&OUTを搭載する

 音源とシーケンサー&アルペジエイター部分が同内容で、コンパクトなUno Synth Pro Desktopもラインナップされているので、演奏重視、または机の上でDAW中心での制作、あるいはユーロラックと組み合わせるなど、環境で選択するのも良いだろう。

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Uno Synth Proのデスクトップ版となるUno Synth Pro Desktop(オープン・プライス:市場予想価格56,980円前後)も同時発売されている。こちらのモデルは、32鍵の静電容量感知キーボードを搭載。電源はUSBバス・パワー駆動(Micro USB端子)となっている

 

松前公高
【Profile】EXPOやスペースポンチ、S.S.T.BANDで演奏し、これまでにアニメ『キルミーベイベー』、NHK『おしりかじり虫』『大科学実験』の作曲も担当。1台のKORG MS-20を使ったソロ・ライブも行う。

 

IK MULTIMEDIA Uno Synth Pro

オープン・プライス

(市場予想価格:93,280円前後)

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SPECIFICATIONS
▪音源方式:アナログ ▪オシレーター:3基 ▪同時発音数:1ボイスまたは3パラフォニック ▪ノイズ:ホワイト ▪連続可変ウェーブフォーム:三角波、ノコギリ波、パルス波(PWM可能) ▪フィルター:2基 ▪フィルター・タイプ:2ポールOTA HPF/LPF、2ポール/4ポールSSI LPF ▪LFO:サイン波、三角波、矩形波、ノコギリ波、ランダム、サンプル&ホールド ▪モジュレーション・ディスティネーション:16マトリクス ▪エンベロープ・ジェネレーター:2基のADSR(フィルター用、アンプ用) ▪外形寸法:550(W)×70(H)×300mm(D) ▪重量:5.8kg ▪付属品:Micro USB to USBケーブル、専用ACアダプター

製品情報