AIによるフレーズ生成が可能なシンセ内蔵プラグイン「HEXACHORDS Orb Producer Suite V3」

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フックアップが運営するオンライン・ストアのbeatcloudから、注目製品やソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのは、連載第1回にも登場したHEXACHORDS Orb Producer Suiteのバージョン3です。コード/メロディ/ベース/アルペジオにそれぞれ特化した人工知能搭載型プラグイン4つを収録しています。Mac/Windowsに対応しており、AU/VSTフォーマットで使用可能。まさに未来のソフト音源といったイメージですが、果たしてその使用感はどうなのでしょうか? また、バージョン3で追加された新機能にも触れてみたいと思います。

2基のオシレーターやエフェクトを内蔵するウェーブテーブル搭載ソフト・シンセも同梱

 Orb Producer Suite V3はOrb Chords、Orb Bass、Orb Melody、Orb Arpeggiosという4種類のシーケンサー付きプラグインで構成。それぞれコード、ベース、メロディ、アルペジオに特化したMIDIフレーズをAIが自動生成し、それらは内蔵ソフト・シンセであるOrb Synthによって再生されます(画像①)。

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画像① 画面上部の“シンセ”ボタンをクリックすると出現するOrb Producer Suite V3内蔵シンセ音源、Orb Synth。オシレーター×2のほか、サブオシレーター、ノイズ・ジェネレーター、モジュレーター、LFO×2を用意し、ディレイ/リバーブ/ドライブといったエフェクトから、モジュレーション・マトリクスまで備えている

 Orb Synthはウェーブテーブル方式を採用し、オシレーターとLFOをそれぞれ2基ずつ搭載。またアンプ・エンベロープ、フィルターに加え、リバーブやディレイ、ドライブなどのエフェクトを内蔵する本格仕様です。

 

 Orb Producer Suite V3の使い方ですが、まずはOrb ChordsをDAWに立ち上げましょう(画像②)。なぜなら、Orb Chordsで基準となるコード進行を作らないと、ほかの3種類のプラグインが使えない仕様となっているからです。

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画像② Orb Producer Suite V3の中心となるプラグイン、Orb Chords。ここで設定したコードを元に、Orb Melody/Orb Bass/Orb Arpeggiosが機能する仕組みだ。キーやスケール、拍子、小節、コード進行は、これら4つのプラグインすべてにおいて同期している

 コード進行は、あらかじめ用意された膨大なパターンから選択することができ、そのほかAIに任せたランダマイズや、手動で好きなコードに設定することも可能。コード・パターンはメジャー/マイナー/メランコリック/ダークなどといった複数のカテゴリーに分かれており、感覚的に音楽制作ができるので便利です。

 

 “AIによる音楽生成”と聞くと何だか難しいイメージがするかもしれませんが、全くそんなことはありません。実際には画面右上の“ORB”ボタンを押すだけで、毎回AIがボイシングやリズム、オクターブなどを変え、さまざまなコード・バッキングをランダムに奏でてくれます。これがAIから生成されたとは思えないほど音楽的! 時を忘れて、つい聴き込んでしまいます。

 

 MIDIフレーズをより細かく追い込みたい場合は、Orb Chordsの画面右下にあるデンシティーやリズムといったパラメーターを個別に調整しましょう。このように制作していると“このノートだけ気に入らない”という部分が出てくると思いますが、その場合はピンポイントでノートを変更することもできます。使いたいフレーズが決まったら、そのままMIDIデータとしてDAWのトラック上にドラッグ&ドロップでエクスポートすることが可能です。

 

 残りのプラグインも見てみましょう。最初に紹介した通りOrb Bass(画像③)はベース、Orb Melody(画像④)はメロディ、Orb Arpeggios(画像⑤)はアルペジオのフレーズ生成に特化したプラグイン。これらにおいても、前述したOrb Chords同様、画面右上にORBボタンを搭載しています。ワンクリックでそれらにふさわしいMIDIフレーズが瞬時に生成されるわけですから、技術の進歩に驚かされるばかりです。

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画像③ ベース・ラインのフレーズ生成に特化したプラグイン、Orb Bass。Orb Melody、Orb Arpeggiosと共通のパラメーターであるヒューマン・タッチは、発音タイミングをランダムにして人間らしさを加えるという機能

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画像④ メロディ生成専用のプラグイン、Orb Melody。バージョン3では“リリカルなメロディー”という機能が追加され、より器楽的なフレーズを生成できるようになった

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画像⑤ アルペジオ・フレーズ生成に最適なプラグイン、Orb Arpeggios。バージョン3では、Orb Chords、Orb Melody、Orb Bassを含むすべてのプラグインに、ポリリズム機能を搭載する

 ただ、すべてのフレーズが人間らしいかといえばそういうわけではありません。大体そういった場合、原因はベロシティとデュレーションの設定にあることが多いのです。個人的に楽曲を打ち込む際にはその2つを重要視していますが、それらの調整は“サイレンス”というパラメーターや“ベロシティー”タブで行えます(画像⑥)。AIというと、どうしても機械的な音楽になってしまうという印象がありますが、これらのパラメーターを意識して作り込むことで、フレーズに躍動感を与えることができるのです。

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画像⑥ Orb Chords/Orb Bass/Orb Melody/Orb Arpeggiosのすべてのプラグインに搭載されている“ベロシティー”タブ。ストロングビート/ウィークビート/オフ・ビートなどの詳細設定が可能だ。フレーズに人間味を持たせる際に重宝する機能だと言える

 なおOrb Chordsで制作したコード進行は、Orb Bass、Orb Melody、Orb Arpeggiosといったほかの3種類のプラグインで共有されます。そのため各プラグインで生成したMIDIフレーズ同士を同時に鳴らしたときに音楽的に破たんする、という問題が起こることがありません。

ポリリズムのフレーズ生成に対応。よりメロディらしさを演出できる機能も搭載

 バージョン3の新機能としては、まず画面が一新されました。調整/ノート/コード/ベロシティという4種類のカテゴリーはタブを切り替えるだけで行えるようになり、非常に便利です。

 

 次にOrb Producer Suite V3はポリリズムに対応しました。これにより、生成するリズム・パターンに規則性を持たせることが可能になります。通常のランダマイズとは一味違ったフレーズを生成したいときに便利です。お気に入りの使い方は、1小節を5/4で分割するというもの。グル―ビーなリズムを作りたいときにお勧めです。

 

 最後に“リリカルなメロディー”という機能。これはOrb Melodyにおいて生成する際、よりメロディらしいフレーズを提示してくれるというものです。この機能を使用することでメロディ内にロング・トーンが増えるとともに、同じ音の繰り返しが減り、より器楽的なフレーズを奏でてくれるようになります。メロディアスな曲を作りたいときなどに、とても良い機能だと言えるでしょう。ほかにもさまざまなユーザー・フレンドリーな機能が追加されており、アップグレードしたことでより幅広いニーズをカバーできるようになった印象です。

 

 ゲーム音楽や劇伴の世界では、さまざまなジャンルの音楽を短期間に大量に書かなければいけないことも多いのですが、普段の自分とはまた一味違うフレーズを提示してくれるOrb Producer Suite V3は、そんなときにとても便利。またOrb Producer Suite V3からインスピレーションを受けることで、制作がさらにはかどるという相乗効果もあります。

 

 操作方法はとても簡単ですので、音楽初心者の方の入門用にも良いと思いました。初心者のうちは音楽制作といってもどこから曲を作っていけば良いか迷ってしまうものですが(僕もそうでした!)、Orb Producer Suite V3はその手助けをしてくれます。AIによる新しい時代の音楽制作を、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

 

HEXACHORDS Orb Producer Suite V3

価格:12,870円

 Requirements 
■Mac:macOS Catalina 10.15以降、AU/VST3対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 10以降、VST3対応のホスト・アプリケーション
■共通:1ライセンスにつきコンピューター3台まで同時利用可能

 

土屋俊輔

【Profile】ゲームの劇伴を中心に活躍する作編曲家。最近はゲーム会社WFSが配信開始した『アナザーエデン 時空を超える猫』 × 『クロノ・クロス』協奏「COMPLEX DREAM」に作編曲で参加した。

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