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Azu Tiwaline 〜独自のアンビエント〜ダブ・テクノを制作するチュニジア拠点のプロデューサー

Azu Tiwaline 〜独自のアンビエント〜ダブ・テクノを制作するチュニジア拠点のプロデューサー

自分らしいサウンドを確立するには独自の原材料や秘密のスパイスが必要

世界の各都市で活躍するビート・メイカーのスタジオを訪れ、音楽制作にまつわる話を聞く本コーナー。今回登場するのは、フランス出身で現在チュニジアを拠点とするプロデューサーのアズ・ティワリンだ。ミニマルかつオーガニックな独自のアンビエント〜ダブ・テクノを制作し、Livity SoundやI.O.T Recordsからのリリースで注目を集めている。

キャリアのスタート

 産まれはパリですが、母はチュニジア出身で父はカンボジア出身です。コートジボワールやタンザニアなどいろいろな場所に住んできたので、自分を“地球市民”だと思っています。チュニジアには4年ほど前から住みはじめました。2年ほどレコード・レーベルの仕事をしていたことがありますが、あとは独学でテクノやヒップホップのビートをもう20年以上作り続けています。アズ・ティワリン名義で出した2020年の1stアルバム『Draw Me A Silence』とEP『Magnetic Service』が多くの人の耳に届き、現在はツアーで忙しくしています。

スタジオについて

 フランスの南西部に位置する自然に囲まれた村に停めたバスが住居兼スタジオです。5年ほど使用しており、電力はすべてバスに取り付けられたソーラー・パネルでまかなっています。現在はヨーロッパでの公演が多いのでここで過ごす時間の方が長いですが、冬の4カ月間はだいたいチュニジアのサハラ砂漠で過ごし、その間集中的に作品を作ります。向こうにあるスタジオも同じセットアップです。ヒップホップを作っていたころは、リズム・マシンとIMAGE-LINE FL Studioを使っていましたが、現在はABLETON Liveが中心。今やりたいと思うことはすべてLiveでできるので、これ以外に何も必要ありません。私にとってLiveは楽器のようなものです。

「スタジオの内装はすべて木製なので、とても音響が良いんです。移動が多いので、ハードウェアは最小限にしていますね」と話すアズ・ティワリンのプライベート・スタジオ。モニター・スピーカーはYAMAHA MSP5を備え、ラップトップの下にはオーディオ・インターフェースのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinや、MIDIキーボードのAKAI PROFESSIONAL LPK25の姿が見える。サブ・ウーファーのYAMAHA HS8Sも使用しているそうだ

「スタジオの内装はすべて木製なので、とても音響が良いんです。移動が多いので、ハードウェアは最小限にしていますね」と話すアズ・ティワリンのプライベート・スタジオ。モニター・スピーカーはYAMAHA MSP5を備え、ラップトップの下にはオーディオ・インターフェースのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinや、MIDIキーボードのAKAI PROFESSIONAL LPK25の姿が見える。サブ・ウーファーのYAMAHA HS8Sも使用しているそうだ

ビート・メイキングの手順

 音楽に対する関心はドラムが出発点。サンプル・パックや定番の電子楽器の音も使いますが、25年間録りためているサンプル・ライブラリーは、私にとって最も大事なものです。スタジオには、どんな曲を作りたいのかをある程度イメージしてから入るようにしています。色やムード、感情といったものを、大抵の場合は自分でフィールド録音した素材を使って表現するのです。例えば風や雨、虫の声といった自然界の音や、人の会話などを用いて、曲の雰囲気やアンビエンスを作るところから始めます。次にリズム・セクションに取り掛かりますが、ここでもストックの中から最適なサンプルを選ぶことが重要です。

デスク左端にはABLETONのフィジカル・コントローラー、Pushをセット

デスク左端にはABLETONのフィジカル・コントローラー、Pushをセット

ビート・メイキングのこだわり

 自分だけのサウンド、自分らしい音楽を作るように意識しています。自分らしいサウンドを確立するためには、やはり独自の原材料や秘密のスパイスが必要だと思うんです。私は、自分しか持っていない音の素材がたくさんあるので、曲を聴けばすぐに私の曲だと分かると思います。

MIDIコントローラーのNOVATION LaunchControl XL MKII

MIDIコントローラーのNOVATION LaunchControl XL MKII

ミックスについて

 かつては作曲後にミックスをしていたんですが、その後やり方を変えて、今は作曲とミックスを同時進行で進めるという方法に落ち着いています。楽曲全体のバランスをみながらエフェクトを付加する作業を行うということです。かつてはハードウェア・ミキサーを使っていましたが、今はミックスもLive上で行っています。そして、ダブのように音の要素が少なく間が多い楽曲の場合、何がエッセンシャルであるかを見極める作業が非常に重要です。常に“この音は必要か?”ということを自問しながら削ぎ落としていくことも、いわば作曲の一部だと考えます。私の曲では“大切な音が奇麗に聴こえるかどうか”を確認しながら進めなければいけないので、今はこのやり方の方がうまくいっていますね。

スタジオのコーナーにはDJコントローラーのPIONEER DJ DDJ-1000がスタンバイする

スタジオのコーナーにはDJコントローラーのPIONEER DJ DDJ-1000がスタンバイする

若いクリエイターへのアドバイス

 毎日やること! 楽器であれ、DAWのプログラミングであれ、自分がやると決めたことを毎日練習することです。私は毎日ABLETON Liveを30分でもいいから使うようにしています。失敗したり上手くいったりを繰り返すことで、実力というのは付いてくると思います。

 

SELECTED WORK

『Vesta』
アズ・ティワリン
(I.O.T Records)

 “Vesta”というのは星の名前で、地球とほぼ同じ古さらしいんです。オーガニックかつミニマルなサウンドでありながら、宇宙的でもある作品ですね(笑)

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