【初級編】やさしいインピーダンス入門|インピーダンスって何だっけ?25のQ&Aで完全攻略!

【初級編】やさしいインピーダンス入門|インピーダンスって何だっけ?25のQ&Aで完全攻略!

音楽制作をしている方なら、どこかで必ず耳にする“インピーダンス“というワード。しかし、“その正体って、何?“と聞かれたら、意外と曖昧になってしまう人もいるのではないでしょうか? この特集では、音響ハウスで数々の機材のメインテナンスや修理を行っている須田淳也氏を講師に迎え、インピーダンスにまつわる25のQ&Aを紹介! まずはインピーダンスについての基礎知識から。インピーダンスって“一体何?”の方も“何だっけ?”の方も、飛ばさずに、こちらからじっくり読んでみてください。

Q1. インピーダンスについて知るとどんなメリットがありますか?

A1. 機材の接続方法を見直すきっかけになるかもしれません

 50年以上前の真空管を中心とした回路では、機器間の回路インピーダンスを意識する必要がありました。しかし現代では、ICをはじめとするパーツの進化とともにオーディオ機材のアナログ回路が改善されて、インピーダンスの影響を受けにくくなりました。ただし音楽業界では、楽器も含めたビンテージ機材も現役で使われますし、インピーダンスは楽器や機材、スピーカー、ヘッドフォンなどの接続にも影響するので、知っておくと機材の選び方や接続方法を見直すきっかけになりいいかもしれませんね。

Q2. そもそもインピーダンスとは何ですか?

A2. 電流の向きが周期的に変わる“交流回路”での電流の“流れにくさ”です

 直流回路では抵抗器だけが電流の流れにくさの要因ですが、交流回路では、抵抗器のほかにコイルやコンデンサーなどが電流の流れにくさの要因となります。加えて、交流回路での電流の向きと大きさの周期的な変化に合わせて、常時変動する周波数によってコイルやコンデンサーの抵抗値も変化します。それらの振る舞いが絡み合った電流の流れにくさ(電気抵抗)の値をインピーダンスと呼んでいます。

交流回路では抵抗器のほか、コンデンサーやコイルが電流の流れにくさに影響。それぞれ種類によって抵抗値は異なる

交流回路では抵抗器のほか、コンデンサーやコイルが電流の流れにくさに影響。それぞれ種類によって抵抗値は異なる

COLUMN|オームの法則

 電気回路の中では、電流(電気の流れ)や電圧(電流が流れるための力)を調整するために、電流の流れを抑制する“抵抗器”というパーツが使われます。このとき、抵抗と電流、電圧の間には、電圧(V)=抵抗(Ω)×電流(A)という関係が成り立ち、これを“オームの法則”と言い、抵抗の値が大きくなるほど、電流の流れる量は少なくなります。

COLUMN|直流と交流

●直流(DC=Direct Current):電流の向きが一定(例:乾電池やスマホ、パソコンのバッテリー)
●交流(AC=Alternating Current):電流の向きと大きさが周期的に変化する。1秒間で電流の向きが逆になって戻るまでの回数を周波数で表す。商用電源の場合、東日本では50Hz、西日本では60Hz。交流は巨大な発電機で大量に発電でき、電圧を容易に変化させられる(例:コンセント)

直流と交流

COLUMN|コイルとコンデンサー

 コイルとコンデンサーはいずれも音響機器の回路で欠かせないパーツです。性質が真逆でお互い補完し合います。例えばコンデンサーは回路に直列に組むと低域をカットして、コイルは高域をカットします。これらはノイズ除去にも使えますし、コンデンサーを多く使う電源回路にコイルを一つ入れて性能改善したり、特定の周波数をカットすることから複数組み合わせてスピーカーのクロスオーバーにも使います。

Q3. インピーダンスが高いとは?低いとは?

A3. 高いと電流が流れにくく、低いと電流が流れやすくなります

 インピーダンスが高い=交流回路での抵抗値が高いということなので、その分、電流は流れにくくなります。一方、インピーダンスが低い=抵抗値が低いということになるので、電流はたくさん流せます。

インピーダンスが高いと電流が流れにくく、低いと電流が流れやすくなります

Q4. インピーダンスと音質は関係あるのでしょうか?

A4. 音質の良しあしには関係ありません

 インピーダンスは“高いから音が悪い”“低いから音が良い”というものではありません。アンプに使うパーツで例えると、真空管とトランジスターでは真空管の方が総じてインピーダンスが高いのですが、真空管の方が音が悪いとはなりませんよね。例えばスピーカーの音量はインピーダンス以外の要素が同じ条件であれば、インピーダンスが低い方が基本的には大きくなります。なお、インピーダンスが高い真空管アンプでは、真空管をより大型のものに変えたり、アンプ出力段に用いる電力を増幅する“電力増幅管”の使用数を増やしたりすることで、スピーカーを駆動するための電力(パワー)を増強できます。

真空管の一例。左の大きな真空管が電力増幅管、EL34。大きさや種類によって値は異なるが、基本的に真空管はインピーダンスが高いパーツである

真空管の一例。左の大きな真空管が電力増幅管、EL34。大きさや種類によって値は異なるが、基本的に真空管はインピーダンスが高いパーツである

Q5. 入力インピーダンス、出力インピーダンスって何ですか?

A5. 入力インピーダンス=入力段、出力インピーダンス=出力段で生じるインピーダンスです

 各機材では入力段でも出力段でもインピーダンスが生じ、入力側の交流回路の電気抵抗値を“入力インピーダンス”、出力側の交流回路の電気抵抗値を“出力インピーダンス”と言います。入力側と出力側の回路は役割が異なり、機材によって構成はさまざまですが、入力回路では送り側の機材から入ってきた電気信号をトランス、またはOPアンプでバランスからアンバランスに変えるなどした後、信号レベル調整や電圧増幅回路などで適切な電圧への変更を行います。出力回路では、機材内で処理した電気信号を次の機材に送り出すための信号増幅(電流増幅)などを行います。

各機材では入力段でも出力段でもインピーダンスが生じ、入力側の交流回路の電気抵抗値を“入力インピーダンス”、出力側の交流回路の電気抵抗値を“出力インピーダンス”と言います

Q6. よく耳にする「ロー出しハイ受け」とは何ですか?

A6. “出力側機材は低いインピーダンスで出力し、入力側の機材は高いインピーダンスで受けましょう”という意味です

 詳細は省きますが、入力インピーダンスが出力インピーダンスに近い、もしくは低いと電圧を大きくロスしてしまいます。例えるなら、送り手(出力側)が“そんなに電流を供給できない”と言っているのに、受け手(入力側)は“どんどん電流を送ってほしい”と言って絞り出させるような状況なので、周波数特性に影響を及ぼしたり、ひずみなどが起きてしまいます。一方、受け手のインピーダンスが高ければ必要な電流は少なくなるので、送る側は“これならつらくならずに電流を流せるよ”ということになります。だから、送る側は可能な限りインピーダンスを低く(ロー出し)設計して、受け手側ではインピーダンスを高く(ハイ受け)すれば、無理のないやりとりができるのです。

“出力側機材は低いインピーダンスで出力し、入力側の機材は高いインピーダンスで受けましょう”という意味

Q7. インピーダンスが合っているかどうかは何をすれば分かりますか?

A7. 低域や音量の不足、ひずみなどを感じたらインピーダンスが合っていないかも

 機材をつないだときに、なぜか〝低域が足りない〟とか〝レベルが下がっている〟とか、〝ひずんでいるな〟というときは、もしかしたらインピーダンスが合っていないかもしれません。現代の機材ではほぼ問題は起きないと思いますが、ギターのピックアップなどは出力インピーダンスがすごく高い一例で、入力したプリアンプなどとインピーダンスが合わない(ロー出しハイ受けにならない)場合があるので気を付けましょう。


【特集】インピーダンスって何だっけ?25のQ&Aで完全攻略!

実践編 〜インピーダンスで何が変わる?〜
応用編 〜もっと知りたい!インピーダンス〜

 

須田淳也(音響ハウス)

講師:須田淳也(音響ハウス)
大の音楽好きのテック・エンジニアで約30年のキャリア。とりわけビンテージ機材に強く、マイクをはじめ直すだけではなくオリジナルの良さを生かしチューニングも行う。さらに機材販売やビルの構造管理まで受け持つ、何でも屋的な立ち位置

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