【応用編】もっと知りたい!インピーダンス|インピーダンスって何だっけ?25のQ&Aで完全攻略!

【応用編】もっと知りたい!インピーダンス|インピーダンスって何だっけ?25のQ&Aで完全攻略!

音楽制作をしている方なら、どこかで必ず耳にする“インピーダンス“というワード。しかし、“その正体って、何?“と聞かれたら、意外と曖昧になってしまう人もいるのではないでしょうか? この特集では、音響ハウスで数々の機材のメインテナンスや修理を行っている須田淳也氏を講師に迎え、インピーダンスにまつわる25のQ&Aを紹介! ここまで読んだ方は、相当インピーダンスの知識が身に付いたことでしょう。ならば、もっと詳しくなれるチャンス! さらに深遠なるインピーダンスの世界へと羽ばたきましょう。

Q20. 宅録をする人はインピーダンスにどのくらい気を配るべき?

A20. 楽器の入力、音の出力部分には気を付けましょう

 ここまでお話ししたように、現代の機材はインピーダンスをさほど気にしなくても制作できるようになっています。ですので、ギターやビンテージ楽器をオーディオI/Oに直挿しするときにはHi-Z入力を使用するなど、メーカーが用意している環境をきちんと利用するようにしましょう。また音の出力部分、スピーカーやヘッドフォンを購入する際には、インピーダンスや能率を確認するとともにオーディオI/Oやヘッドフォン・アンプの出力インピーダンスを確認し、ロー出しハイ受けになるかどうかを確認しましょう。

Q21. 「推奨負荷インピーダンス」って何ですか?

A21. メーカーが、〝このインピーダンス以上の機材を使用してください〟と勧めている値のことです

 例えば、あるパワー・アンプで推奨負荷インピーダンスが8Ω以上と規定されていた場合、負荷インピーダンスが3Ωのスピーカーをつないだら性能を保証できません、という値です。〝規定以上にインピーダンスが低い(=電流が流れやすい、または電流を要求する)機材をつなぐと製品が持つ能力を十分に発揮できませんよ〟という意味を持ちます。ですから、推奨値より〝低いインピーダンス〟の機材をつながないことが大事です。

Q22. オーディオ機器以外でもインピーダンスはあるんですか?

A22. もちろん、ありますよ!交流回路があるところにインピーダンスあり

 最新の、ハイスピードな信号を処理するデジタル機器やコンピューターの基板設計などでは、非常に高度な知識が必要です。デジタル接続規格の50Ωや75Ωもインピーダンスを意味します(インピーダンス・マッチング)。

Q23. インピーダンス測定のためのツールってあるんですか?

A23. あります。ただ基本的には開発メーカーが使用するものかと思います

 インピーダンス測定器という、スピーカーやヘッドフォンなどに接続して測定できる機器がありますし、回路インピーダンスを測定するものもあります。ただ私のような職業でもインピーダンスの測定自体はあまり行いません。主には音響機器メーカーが開発時に使用されていると思います。音響ハウスでは、スタジオ機材の修理や開発の際にチェック用途で用いますが、単体のインピーダンス測定器ではなく、AUDIO PRECISIONが開発した多用途のオーディオ・アナライザー、APX555Bを使用しています。

AUDIO PRECISION APX555Bは、測定時に入出力インピーダンスの値をそれぞれ個別に設定でき、SN比やひずみ率、周波数特性のほか、デジタル機器の信号測定FFTなど、音響機器のさまざまな測定に使用可能。またAUDIO PRECISIONでは、スピーカーやヘッドフォンのインピーダンスを測定できるモデルもラインナップしている

AUDIO PRECISION APX555Bは、測定時に入出力インピーダンスの値をそれぞれ個別に設定でき、SN比やひずみ率、周波数特性のほか、デジタル機器の信号測定FFTなど、音響機器のさまざまな測定に使用可能。またAUDIO PRECISIONでは、スピーカーやヘッドフォンのインピーダンスを測定できるモデルもラインナップしている

Q24. 音響機器の開発者は“インピーダンスを高くしよう/低くしよう”と考えて作っている?

A24. ハイエンドな機器であるほど意識しているかもしれません

 これまでのお話の通り、今は技術が進歩したおかげで、インピーダンスについて強い意識を持つ必要はなくなっているかもしれません。ただハイエンド・オーディオの分野では、例えば入力(負荷)インピーダンスや能率が低いパッシブ・スピーカーへ接続するために、出力インピーダンスが十分に低いパワー・アンプを開発する必要がありますし、どんなソースにも対応できるパワー・アンプにするなら、入力インピーダンスを高くしないといけません。それにはインピーダンスだけでなく、さまざまな面で回路設計の知識や技術、さらに高品質なパーツが必要となるため、ハイエンド機器の開発にはかなりのコストがかかっているのです。

Q25. インピーダンスについての知識は、エンジニアになる上で必須ですか?

A25. 必須ではないと思いますが、もちろん、知識を持っている方がいいです!

 知識を持っているか持っていないかで対応できることに差はあります。私も長年専門書を読んできたり、インターネットで最新のレポートを読んだりと、常に勉強してきました。この記事をきっかけに興味を持った方はぜひ自分でも調べてみてほしいです。自分で体験することも大事で、ミックス・エンジニアの方がどうやってミックスすれば理想の音になるか、それぞれの経験から身に付けた方法を皆さん持っていますよね。それと同じで、実際に機材を触ってみてどんな結果になるのか、好奇心を持って体験してみてくれたらと思います。

COLUMN|放送用機器の600Ω時代

 数十年以上前の放送局やポスプロ・スタジオでは、放送用の音響機器を接続する際に600Ωで出して600Ωで受けるという規定がありました。ロー出しハイ受けではなく、1対1で成立していたんです。600Ωというインピーダンスは今の基準から見ればすごく低い値なので、電流をたくさん流せてノイズにも強いです。電流が少ししか流れてない(ハイインピーダンス)と、ちょっとしたノイズでも大きな影響を受けますが、たくさん電流が流れていればノイズの影響を受けにくくなりますよね。しかも放送局では長い距離をケーブルで引き回すため、さらにノイズに強くするために、バランス伝送も組み合わせていました。ただそれを実現するには、大きな部品を使い、回路設計や放熱対策をしっかりしなければならず、コストがかかってしまいますし、機材は大きくなり設置場所も取ってしまうので、機器のデジタル化をはじめIC(LSIも含めて)やパーツの進化、小型化とともにいつしかその規定はなくなりました。


【特集】インピーダンスって何だっけ?25のQ&Aで完全攻略!

初級編 〜やさしいインピーダンス入門〜
実践編 〜インピーダンスで何が変わる?〜

 

須田淳也(音響ハウス)

須田淳也(音響ハウス)
大の音楽好きのテック・エンジニアで約30年のキャリア。とりわけビンテージ機材に強く、マイクをはじめ直すだけではなくオリジナルの良さを生かしチューニングも行う。さらに機材販売やビルの構造管理まで受け持つ、何でも屋的な立ち位置