タイガーカブ『As Blue As Indigo』、メラニーC『In and Out of Love (Acoustic)』 〜エンジニア今本 修's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。今本 修氏の今月のセレクトは、タイガーカブ『As Blue As Indigo』、メラニーC『In and Out of Love(Acoustic)』です。

爆音で聴いても疲れ知らずな
パワフルかつ引き算のうまいミックス

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タイガーカブ『As Blue As Indigo』

 ニルヴァーナ以降のグランジ文化を支えるブライトン出身のグループ、タイガーカブの新譜が出ていたので早速チェック。前々作、前作とグランジ色は少しずつ削られていくが、同郷で兄貴分のロイヤルブラッド寄りなどっしりと重みのある音に、そして落とすところはしっとり落として緩急のあるアルバムとなっている。フー・ファイターズや新作も好調なミューズの作品でも手腕を振るうエイドリアン・ブッシュビーとピクシーズやロイヤルブラッドのミックスに携わるトム・ダルゲティらとともに、2年の歳月をかけて作られた。爆音で聴いても疲れ知らずな、パワフルかつ引き算のうまいミックスに仕上がっている。

 

アコースティック・アレンジのお手本とも言える
生々しい質感の丁重なミックス

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メラニーC『In and Out of Love(Acoustic)』

 一世を風靡したスパイス・ガールズの元メンバーで現在も歌手として活躍するメラニーC。ヴァージン・レコードを経て自身のレーベルを立ち上げ、ゴールド・ディスクを各国で受賞するなど、アイドルからアーティストへと歩みを進めてきた。2010年以降はEDMの流れに乗りダンス・ミュージックに特化した作品を出し続け、進化を遂げている。本作はそのダンス楽曲をしっとりしたアコースティック・バージョンの構成で作り上げた作品で、本来の歌の良さを十二分に堪能できる。ピアノやギター1本と歌、厳選された打楽器類の録音が素晴らしく、アコースティックな質感が生々しい丁重なミックスは、アコースティック・アレンジのお手本とも言えるだろう。心が落ち着く、栄養素的なアルバムだ。

 

今本 修

【Profile】DOGLUS MUSIK主宰。クラブ・ミュージックを熟知した音作りに定評がある一方、ロックの分野でも手腕を発揮するエンジニア