第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。今本 修氏の今月のセレクトは、LUMIÈRE『A.M.I.E.S.A.M.O.U.R』、Damien Jurado『The Monster Who Hated Pennsylvania』です。
1970年代の音を極めるために新鋭な音を一切排除しつつも
きちんと現代的に聴こえる音作り
全く知らなかったが聴いた瞬間にどハマりしてしまったルミエール。カナイユとボン・アンファンにも所属するエティンヌ・コート率いるプロジェクトだ。モントリオールのレーベルBonsoundからリリースされた1stの本作を聴くと、1970年代の音を極めるために新鋭な音は一切排除しているのが伝わってくるが、きちんと現代的に聴こえる音作り。時にしっとりとしたストリングスで英国風な楽曲が現れたり、サブボーカルの女性とともに歌ったり、最後はローファイで締める。知名度こそまだ低いが、ぜひYouTubeで「AMITIÉ.DÉCHUE live à l’École du Grand-Voilier」を見ていただきたい。この冬に撮られた映像だと思われるが、子供たちとマスクを外して歌う姿にはただただ勇気をもらえた。
余計な音や展開が一切無く
ただただシンプルさを追求した心落ち着く作品
シアトルでカルト的人気を博すシンガー・ソングライターダミアン・ジュラードの新作。20年以上の活動の中で、アメリカの名門レーベル=Sub PopからSecretly Canadianとわたり、本作は自身のレーベルであるMaraqopaからのリリースになった。ルー・リードの『警鐘』やポール・マッカートニーの『ラム』に触発され、シンプルかつ乾いた音を目指したというアルバム。とはいえ、多くの木々や森の大自然を頭に描けるような壮大な音の深みは、キャンプなどに音源を持って行き、焚き火を見ながらじっくり、しっぽり、ずっと聴いていたくなる。余計な音や展開が一切無く、ただただシンプルさを追求した心落ち着く作品。
今本 修
【Profile】DOGLUS MUSIK主宰。クラブ・ミュージックを熟知した音作りに定評がある一方、ロックの分野でも手腕を発揮するエンジニア