Berlin Calling〜第75回 ついにコロナ規制が大幅に緩和、音楽イベントが再開し始める

Berlin Calling〜第75回 ついにコロナ規制が大幅に緩和、音楽イベントが再開し始める

ベルリンの中でも老舗のClub der Visionäreは、もともと開放的な屋外クラブであったため、いち早く営業再開が可能になった

 

屋外クラブが先人を切って営業を再開
初夏の気候のように明るい兆し

 ドイツはこれまで、人口10万人あたりの新型コロナ・ウィルス新規感染者の平均数(7日間)を基準に感染拡大防止策を実施してきた。ベルリン市で最も高い時期はその数値が200人を超えていた。しかし、“緊急ブレーキ”と呼ばれる厳しい行動制限が発動される基準になっている100人を下回ったのが5月初頭、執筆時の6月7日には26.5人となっている。30人を切った先週を境に、実に昨年の11月の部分的ロックダウン開始ぶりに不特定多数の人々が実際に集まれる音楽イベントが段階的に再開されつつある。

 

 ここ1カ月ほどで状況は激変した。その主な理由はワクチン接種と、ドイツでは通称“高速テスト”と呼ばれる15分程度で結果が出る抗原検査の急速な普及によるもの。現在ドイツ人口の約20%が2度目のワクチン接種を完了しており、約50%が1度目を接種している。ベルリンでも街のいたるところに民間の検査場ができ、州の住民登録があれば無料で受けることが可能。現時点、小売店と飲食店の屋外スペースは検査の陰性証明がなくても利用できる。それ以外の屋内施設では陰性証明/ワクチン接種証明/感染回復証明のいずれかを提示することになっている。

 

 音楽シーンで先陣を切って6月5日から営業を再開したのはoxiというクラブの、昨年コロナ対応としてオープンしたガーデン・スペースだ。観光客や日本のミニマル好きの間でも有名なClub der Visionäreも、もともと屋外クラブということもあり、6月4日から営業を開始した。営業形態はビア・ガーデンのような形式を採っており、来場者はいずれかの証明書を持参してテーブルごとに着席。連絡先などの来場者情報を登録の上、自分のテーブルを離れる際は常にFFP2(医療用サージカル)マスクを着用する。ほかの来場者とはソーシャル・ディスタンスを保つことが条件だ。当然ながら、定員も敷地の広さに応じて決められ、制限されている。

 

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フリードリヒスハイン地区のクラブoxiは、昨年の夏に素早くガーデン営業に切り替えたことで、コロナ禍における数少ない遊び場として人気を集めた。今年の夏も繁盛しそうだ

 

 屋内の文化施設も、例えばフィルハーモニー・ホールなど着席の会場では、定員を半分にして今月から公演を再開していくようだ。それでもドイツやその近隣諸国では、7月までの大規模な夏フェスはそのほとんどが既に延期を発表しているのが現実で、8月以降の野外のものは開催の準備を進めているところもある。ドイツでは9月いっぱいで人口の大多数のワクチン接種を完了する見通しで、屋内のクラブや(スタンディングの)コンサートの再開は10月かそれ以降と見込まれている。まだ油断はできないが、初夏の気候のように明るい兆しがやっと見え始めた。

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている