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ウィーザー『ヴァン・ウィーザー』、エヴァネッセンス『The Bitter Truth』 〜マスタリング・エンジニア小泉由香's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。小泉由香氏の今月のセレクトは、ウィーザー『ヴァン・ウィーザー』、エヴァネッセンス『The Bitter Truth』です。

1980年代のロックとミュージシャンへのリスペクトあふれる作品
思わずニヤりとしてしまう仕掛けが楽しい演奏

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ウィーザー『ヴァン・ウィーザー』(ワーナーミュージック・ジャパン)

 ウィーザーの15thアルバムは“リック・オケイセックとエドワード・ヴァン・ヘイレンに捧げる”とブックレットにあるように、彼らが影響を受けた1980年代のロックとミュージシャンへのリスペクトがあふれる作品です。プロデューサーにはスージー・シン、ミックス・エンジニアはマティ・グリーンを起用。トータル・レベルの入れ具合は少しマッシブですが、1980年代ロック・バランスを再現しているため、そこは今どきに寄せているようです。バランスや楽曲と同様にオマージュされた演奏は、エドワード・ヴァン・ヘイレンの代名詞ライト・ハンド奏法や、ヒット曲のキメのニュアンスも取り入れていて、思わずニヤりとしてしまう仕掛けが楽しいですよ。

 

ボーカルにかかったスペーシーなエフェクトと強めのドラム
硬質なギター・リフと冷たさを感じるシンセで世界観を作る

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エヴァネッセンス『The Bitter Truth』(ユニバーサル)

 2000年前半に1st『FALLEN』でグラミー最優秀新人賞を受賞し、ゴシック・ロックを大ヒットさせたエヴァネッセンスの5thアルバム。プロデューサー兼ミックス・エンジニアは3rd『エヴァネッセンス』のニック・ラスクリネクツを迎えて制作されました。ボーカルにかかったスペーシーなエフェクトと強めのドラムが楽曲を淡々と進め、硬質なギター・リフと冷たさを感じるシンセで世界観を作る彼らのスタイルは健在です。エフェクトを多用した浮遊感やスペーシーさを持つ曲だと、レベル感をどこで取り、どう保つかの調整をするのが意外と大変です。本作は曲にメリハリがあるので、アルバム冒頭から流れで聴いていくと、彼らの伝えたかった作品の物語性をより感じられると思います。

 

小泉由香

【Profile】マスタリング・スタジオ、オレンジ主宰。音楽愛に裏付けられた丁寧な仕事で信頼が厚い、日本を代表するマスタリング・エンジニア