ほぼ丸一年閉ざされたままの市内のクラブ://about blank。文化支援策が手厚いドイツにおいても、いつまで維持できるか分からない。以前のにぎわいを取り戻すのはだいぶ先のことになりそうだ
フリーランス音楽家への財政支援が急がれる
ベルリン/ブランデンブルク州の公共放送局RBBが1月21日、衝撃の報道をした。市内のクラブ事業者団体、Clubcommissionの代表パメラ・ショーベス氏の見解では、クラブの“通常営業”の再開が見込めるのは2022年末以降になるという。パンデミック以前はベルリン最大の観光資源であったと言っても過言ではないクラブは、昨年の3月半ば以降、営業が禁止されている。かつてはほぼ毎週末出かけていた筆者も、もうほぼ丸一年クラブに行っていない。昨年の夏には、屋外スペースで感染防止対策を徹底したイベントは少数開催されていた。しかし、ベルリン医科大学シャリテのウィルス学者、クリスティアン・ドロステン博士によれば今年の夏は同じようにはいかないという。ロックダウン解除を急ぎ、昨年の夏のように比較的自由に人々が行動した場合、最悪1日あたり全国で10万人の新規感染者が出る事態になり兼ねないと発言(『ベルリナー・ツァイトゥング』)。感染者数が抑えられていた昨年とは、ドイツも状況が大きく変わった。
11月から部分的ロックダウン、12月中旬から全面ロックダウンが続いており、現在は公共交通や小売店を利用する際は医療用マスクの着用が義務付けられている。12〜1月のピーク時からは感染者数も死者数も大幅に減少し、ワクチン接種も始まっているが、安心して屋内のクラブに遊びに行く日は想像すらまだできないのが現状だ。
ドイツの場合はコロナの影響で営業ができない、あるいは売り上げが大幅に減少した事業者に対する連邦政府や州単位の補助金は比較的充実しており、当面のところ6月まで事業が維持できる見込みのところがほとんどだ。クラブやライブ・ハウスといった文化施設はギリギリ守られているが、個々の関係者の置かれている状況は厳しい。
1月末に発表されたベルリン州音楽評議会(Landesmusikrat Berlin)による485人のフリーランス音楽家を対象にした調査結果では、29%が音楽の道をあきらめほかの仕事を求職中か、既に就いているという。47%は緊急支援に依存しており、22%のみがコロナ禍でも音楽家としての生活を維持できていると答えたそうだ。さらなる緊急財政支援の簡易化とスピードが必要だと結論付けており、評議会として州政府に働きかけていくという。Clubcommissionも、今年7月以降の継続的な文化施設とその関係者に対する財政支援の必要性を強調している。世界的パンデミック下の生活も2年目に突入し、当初想像していたよりもずっと長期的な心構えと対策が必要なフェーズに入ったようだ。
ベルリン州音楽評議会(https://www.landesmusikrat-berlin.de/)が実施し、フリーランスの音楽家485名が参加した調査結果の報告書。29%が音楽家としての生活を維持できず、キャリア・チェンジを強いられていることが明らかになった
浅沼優子/Yuko Asanuma
【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている