Berlin Calling〜第70回 新たな音楽プラットフォーム、Refuge Worldwideが始動

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Refuge Worldwideのロゴ。ベルリンのローカル・コミュニティに根ざし、グローバルな視野で多様な音楽とアーティストを支援し、より公正な社会の実現を目指す。放送プログラムには音楽番組のみならず、ディスカッションや討論、インタビューなども含まれる予定

 

コロナ禍での音楽シーン活性化に取り組む

 ひっそりと息を潜めたようなベルリンの音楽シーンにおいて、前向きな話題が一つ届いた。ラジオや音楽関係の記事コンテンツを提供する新たなオンライン・プラットフォーム、Refuge Worldwide(www.refugeworldwide.com)が立ち上がるという。2015年から市内のホームレスやDV被害者支援などのさまざまな慈善事業への募金を目的としたチャリティー・イベント「Refuge」を不定期に開催してきたクルーだ。ベルリンのノイケルン地区に物理的なスタジオ開設の準備も進めており、新型コロナ拡大防止の制限が緩和され次第、ラジオの放送やスタジオ兼バーを備えたコミュニティ・スペースとして運営が開始される予定。これと並行して、イベントの主催も再開していくという。

 

 Refugeの共同創始者であるジョージ・パトリックいわく、イベントを開催しているうちに常設の物理的なコミュニティ・スペースを持つことで継続的な活動をしたいという思いが募ってきたという。初めは音楽イベント会場を設立することを考えていたが、2020年のさまざまな状況の変化を経て、当面の安全性の確保を考慮しラジオ局へと考えがシフトしていった。

 

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プログラム編成を担うメンバーである共同設立者のジョージ・パトリック、Richard Akingbehi、Janneke Hulsho、Ell Westonの4名。それぞれイベントのオーガナイザー、DJ、レーベル・オーナー、音楽ライターなどの背景を持つ。
Photo:Chihiro Lia Ottsu

 

 当面の運営の基盤は、昨年の10月にベルリン市政府主導で企画されたTag der Clubkultur(クラブ・カルチャーの日)の支援金と、2013年に市内のポップ・ミュージックを支援するためにベルリン州によって設立された文化基金=Musicboard Berlinの助成金だ。それに加え、アーティスト支援プラットフォーム=Patreonの有料会員、グッズの販売利益、今後はスタジオ・スペースでのバー売り上げなどで賄っていく。オンライン・ラジオは資金繰りの難しさがある。ベルリンで数年間活発に活動を行っていたBerlin Community Radio(BCR)が2019年に閉局してしまった事例もあるだけに、彼らは継続できるよう応援したいところだ。

 

 オンライン・ラジオの放送開始日は1月20日。レジデントにはフレッドP、CCL、テレフォンズといったベルリン拠点のアーティストが確定している。ほかには、女性アーティスト支援ネットワークのfemale:pressureや、UKの人気音楽ブログTruants、多数のレコード・レーベルがレギュラー枠を担当する。筆者も昨年立ち上げた(ワンマン)エージェンシーsettenとして、マンスリーの番組を2月以降から担当することになった。日本のアーティストやゲストDJによるミックスの紹介もしていくことで、コンテンツの多様性に貢献していければと思うので、ぜひ、日本からもチューン・インしてみてほしい。

 

refugeworldwide.com

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている

 

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