FENDER Twin Reverbをマイクで録る! 〜アンプ・タイプ別 ギター録音マニュアル(3)

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ギタリストならばアンプにこだわりを持つのも自然のこと。しかし、意外に難しいのがこのアンプの録音です。見よう見まねでマイクを立てて録ってみても、演奏しているときのような迫力あるサウンドにならないと悩んでいる人も多いでしょう。この特別企画では、主要なギター・アンプの特徴や使われるシチュエーションを押さえながら、どうやって録れば演奏しているときに感じているような迫力あるギター・サウンドが録れるのかを指南していきます。自宅やリハスタでぜひ挑戦してみてください。

Photo:Hiroki Obara

※本記事はサウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より転載しています

真空管のハリのあるクリーン
FENDER Twin Reverbを録る!

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Amplifier:FENDER Twin Reverb
ブラック・フェイスと呼ばれる1965年製Twin Reverbのリイシュー・モデル。ECC83S管×4本、12AT7管×2本、6L6管×4本を搭載し、出力は85W。スピーカーは12インチを2発搭載している

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Guitar:FENDER CUSTOM SHOP Telecaster
アンプに合わせてギターはTelecasterを選択。ここではリア・ピックアップを使用

太さを出すためにマイクを近付ける

 続いてはFENDER Twin Reverb。最初の想定は、ソウル/ファンク系のカッティングを重視したプレイです。オンマイクのMD421とR-121、オフマイクのC414B ULS×2をMARSHALLのときと同じように設置してみます。オンマイクの2本はMARSHALLのときと同距離、オフマイクはオンマイクと混ぜてもおかしくならない位置を探して70cm程度のところに設置してみました。バランスは、MD421がMARSHALLのときよりジャキジャキとした成分を拾っているので、R-121がそれとほぼ同量。それにオフマイクを少し(各オンマイクに比べて−8dB程度)足すような形です。


 これでも悪くはないのですが、もう少し“近い感じ”が出た方がよいと判断して、オンマイクの2本を5cmほど近付け、15cmに設定してみました(写真①)。

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写真① Twin Reverbのクリーン・カッティングでは太さやアタック感を求めてMARSHALLでの設定よりオンマイクをやや近付けてみた。オフマイクの位置は、部屋の形状などの影響もあるので、オンマイクに対して位相がそろう位置を探していろいろ試してみてほしい

 こうしたカッティング系のプレイでは、ギターがグルーブの中心を担うことになるので、もう少し存在感が欲しいというのがその理由です。マイクを近付けることで、近接効果によって低域の太さが出てきます。また、スピーカー・ユニットの信号をより“点”のようにとらえる傾向が出てきますから、アタックがはっきりして、グルーブが前に出てくることになりました。

リバーブをかける際には芯をよりはっきりと

 Twin Reverbといえば、内蔵のスプリング・リバーブを使ったサウンドも特徴的です。これにトライしてみましょう(写真②)。

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写真② REVERBつまみは“3”まで上げたが、連動音源で分かるようにかなりのリバーブ感が得られる。「エフェクトをかけるときは少しオーバーなくらいの方が、録音時に効果がはっきり分かる」と鈴木氏

 Daichiさんがイメージしたのはディストーションのかかったブリティッシュ・ロックのようなサウンドだそうですが、Twin Reverbは音量を上げてもひずまないので、エフェクターを使います(写真③)。

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写真③ ひずみ系エフェクトのKLON KTR。同社Centaurの後継機

 リバーブをかけた分だけ、音が遠く感じられるので、オンマイクをキャビネットから8cm程度の位置まで近付け、MD421を中心にR-21とオフマイクをわずかに足す感じでミックスしました(写真④)。

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写真④ アンプからの出音にリバーブがかかっているので、より実音をはっきりさせるためにオンマイクを近付けてみた。特に位相の問題がないのでオフマイクの位置はそのまま。リバーブの奥行きがありながら、前に迫る感じがよく出ていると思う。Twin Reverbにはマスター・ボリュームが無いので、今回のテストで最もアンプからの音量が大きかった設定となった

 欲を言えば、もう少し高域が欲しいところですが、マイキングでカバーできる範囲ではこのくらいでOKだと思います。この企画の趣旨から外れるのでやりませんでしたが、もう少し高域の伸びた、例えばビンテージNEVEのようなマイクプリに変えるとなお良いかなと思いました。

 リバーブをかけると音が散ってしまう感じがするというときには、アンプ〜マイク間に毛布をかけて、室内での反射の影響をカットするという方法もあります。ただこのときにはアンプの放熱の邪魔にならないよう注意してください(くれぐれも火事は起こさないように!)。

 ちなみに、Twin Reverbはマスター・ボリュームが無いため、意外にも今回収録したアンプの中で、ブース内での音量が最も大きいものとなりました。

 

デモ・サウンドをまとめて聴く

 

使用スタジオ&収録機材紹介

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今回使用したのは鈴木“Daichi” 秀行氏のスタジオ、Studio Cubic。録音用DAWには AVID Pro Tools|HDXを使用。多数のアウトボードが並ぶさまが圧巻だ

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収録に使用したマイク。左のSHURE SM57は比較検証用。続くSENNHEISER MD421とROYER R-121は永井氏がよく使用するコンビだが、“読者の方は目的に合わせて自分の好きな組み合わせで”とアドバイスをいただいた。右はオフマイクに使用するAKG C414B XLS

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収録に使用したマイクプリは中段にある白いパネルのRUPERT NEVE DESIGNS 5024。EQなどを搭載しない単体のマイクプリで、Studio Cubicのラインナップ中で比較的音質がナチュラルであり、4ch分そろっているというのが選定の理由となった

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演奏
鈴木“Daichi”秀行(左)
サウンド・クリエイター、作編曲家、マルチプレイヤー。アイドルからバンド・プロデュースまで、ヒット作のアレンジを多数担当。録音機器に対する造詣も深く、自身のStudio Cubicにさまざまな機材や楽器をそろえる

録音/解説
永井はじめ(右)
1989年よりレコーディング・エンジニアとしてのキャリアをスタート。石井竜也、K、柏木由紀、ORANGE RANGEほかの諸作でプロデュース、レコーディング、ミックスなどマルチに活躍。電子音楽ユニット“電子海面”のメンバーでもある

 

※本記事はサウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より転載しています

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