ギタリストならばアンプにこだわりを持つのも自然のこと。しかし、意外に難しいのがこのアンプの録音です。見よう見まねでマイクを立てて録ってみても、演奏しているときのような迫力あるサウンドにならないと悩んでいる人も多いでしょう。この特別企画では、主要なギター・アンプの特徴や使われるシチュエーションを押さえながら、どうやって録れば演奏しているときに感じているような迫力あるギター・サウンドが録れるのかを指南していきます。自宅やリハスタでぜひ挑戦してみてください。
Photo:Hiroki Obara
※本記事はサウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より転載しています
真空管のハリのあるクリーン
FENDER Twin Reverbを録る!
太さを出すためにマイクを近付ける
続いてはFENDER Twin Reverb。最初の想定は、ソウル/ファンク系のカッティングを重視したプレイです。オンマイクのMD421とR-121、オフマイクのC414B ULS×2をMARSHALLのときと同じように設置してみます。オンマイクの2本はMARSHALLのときと同距離、オフマイクはオンマイクと混ぜてもおかしくならない位置を探して70cm程度のところに設置してみました。バランスは、MD421がMARSHALLのときよりジャキジャキとした成分を拾っているので、R-121がそれとほぼ同量。それにオフマイクを少し(各オンマイクに比べて−8dB程度)足すような形です。
これでも悪くはないのですが、もう少し“近い感じ”が出た方がよいと判断して、オンマイクの2本を5cmほど近付け、15cmに設定してみました(写真①)。
こうしたカッティング系のプレイでは、ギターがグルーブの中心を担うことになるので、もう少し存在感が欲しいというのがその理由です。マイクを近付けることで、近接効果によって低域の太さが出てきます。また、スピーカー・ユニットの信号をより“点”のようにとらえる傾向が出てきますから、アタックがはっきりして、グルーブが前に出てくることになりました。
リバーブをかける際には芯をよりはっきりと
Twin Reverbといえば、内蔵のスプリング・リバーブを使ったサウンドも特徴的です。これにトライしてみましょう(写真②)。
Daichiさんがイメージしたのはディストーションのかかったブリティッシュ・ロックのようなサウンドだそうですが、Twin Reverbは音量を上げてもひずまないので、エフェクターを使います(写真③)。
リバーブをかけた分だけ、音が遠く感じられるので、オンマイクをキャビネットから8cm程度の位置まで近付け、MD421を中心にR-21とオフマイクをわずかに足す感じでミックスしました(写真④)。
欲を言えば、もう少し高域が欲しいところですが、マイキングでカバーできる範囲ではこのくらいでOKだと思います。この企画の趣旨から外れるのでやりませんでしたが、もう少し高域の伸びた、例えばビンテージNEVEのようなマイクプリに変えるとなお良いかなと思いました。
リバーブをかけると音が散ってしまう感じがするというときには、アンプ〜マイク間に毛布をかけて、室内での反射の影響をカットするという方法もあります。ただこのときにはアンプの放熱の邪魔にならないよう注意してください(くれぐれも火事は起こさないように!)。
ちなみに、Twin Reverbはマスター・ボリュームが無いため、意外にも今回収録したアンプの中で、ブース内での音量が最も大きいものとなりました。
デモ・サウンドをまとめて聴く
使用スタジオ&収録機材紹介
演奏
鈴木“Daichi”秀行(左)
サウンド・クリエイター、作編曲家、マルチプレイヤー。アイドルからバンド・プロデュースまで、ヒット作のアレンジを多数担当。録音機器に対する造詣も深く、自身のStudio Cubicにさまざまな機材や楽器をそろえる
録音/解説
永井はじめ(右)
1989年よりレコーディング・エンジニアとしてのキャリアをスタート。石井竜也、K、柏木由紀、ORANGE RANGEほかの諸作でプロデュース、レコーディング、ミックスなどマルチに活躍。電子音楽ユニット“電子海面”のメンバーでもある
※本記事はサウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より転載しています
アンプタイプ別 ギター録音マニュアル