「CELEMONY Melodyne 5 Studio」製品レビュー:歌とコードの扱いがさらに手軽になったピッチ&タイミング編集ソフト

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 ピッチ&タイミング編集ソフトのCELEMONY Melodyne 5。バージョン1からMelodyneを愛用している筆者は、バージョン・アップのたびにピッチ&タイミング補正ソフトという枠に収まらない進化を見てきました。今回のバージョンではどのような進化を遂げたのか、最上位エディションのMelodyne 5 Studioを使ってチェックしていこうと思います。

 

非楽音成分と楽音成分を認識し
それらの音量比をコントロールできる

 Melodyne 5にはマルチトラックが扱えるStudio、ポリフォニックに対応するEditor(60,000円)、基本機能を網羅したAssistant(36,000円)、入門版のEssential(9,000円)という4つのエディションがラインナップ。いずれもMac/Windowsに対応し、スタンドアローンのほかAAX/AU/VST3プラグインとして、あるいはARA環境で使用できます。

 

 今回のバージョン・アップでは、ボーカルに使用されるメロディック・アルゴリズムの性能が向上。歯擦音などの非楽音成分と楽音成分を区別し、それらの音量比をコントロールする歯擦音ツールが加わりました。ピッチのずれを検出するアルゴリズムも、より人間の聴感に近くなったとのこと。アルゴリズムについては、サブベースやピッチ感のあるタブラなどに最適なパーカッシブ(ピッチ)が加わったほか、既存のアルゴリズムの性能も向上しています。

 

 和音の編集も行いやすくなりました。Melodyne 5のコード・トラックは上部にコード記号が表示され。指定したコードに含まれる音階が白いレーン、それ以外が灰色のレーンで表示されます。Melodyne 5 Studioを使って最初に気付いた変化が、このコード・トラック上部に表示されているコード記号。M/△やaug/+といったなじみある表記に変えられる仕様は親切に感じました。また、オーディオからコードを検出できるようにもなっています。

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コード・トラック上部には、検出したコード記号が表示される。コード名を文字で入力すると、ノートのピッチも連動して動く。コード記号をクリックすると音色を試聴できる

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コード・トラックに表示されるコードの記号を選べる

 さらにノート単位でフェードを挿入できるフェード・ツールや、指定した複数ノートの音量差を平均化するレベル調節マクロも実装。細かな点ですが、キーボード・ショートカット検索とショートカット・セット保存機能も追加されています。

 

 Essentialは歯擦音ツールとフェード・ツールが実装されていないので、これらを使いたい方はAssistant以上のエディションにする必要があります。どちらもMelodyne 5の目玉機能なので、これを期にAssistant以上のエディションにするのがよいかもしれません。

 

音量を平均化するレベル調節マクロ
精度の高いオーディオのコード検出機能

 今まで歯擦音が多いボーカルを修正する際は、気になるノートを切り分けてから編集していました。Melodyne 5では歯擦音には細かい縦線が入り、ピッチを変えても影響が出ません。

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歯擦音には細かい縦線が入り、ピッチを変えても影響が出ない仕様となっている

 例えばエックスの“クス”の部分のように歯擦音に挟まれている音は楽音成分を見分けるのに苦労しますが、Melodyne 5は見事に認識してくれました。今までは歯擦音をコントロールする場合、AVID Pro Toolsのクリップ・ゲインやクリップ・ゲインのオートメーションなどを用いて、ディエッサーへの引っ掛かり具合を調整していましたが、ノートごとに使えるMelodyne 5の歯擦音ツールの方がはるかに便利ですね。歌とラップが入り混じるボーカル・データで試してみましたが、EQやディエッサー、ボリュームのオートメーションでは得難い自然な効果を感じました。

 

 従来“しゃくり”のピッチが高い部分と低い分が同じノートとして解析されている場合、それらを分割してから修正する必要がありました。Melodyne 5は“しゃくり”を認識できるようになっており、ピッチが高い部分と低い分が同じノートで解析されていても、ダブル・クリックでするだけで良いあんばいにピッチ・クオンタイズしてくれるのです。自分でメモ代わりに仮々歌を入れるときは、ダブル・クリックでざっくり直しています。ニュアンスを付けて歌うと直しが面倒だったのですが、これからはそんな心配も無用です。ギターにも試してみると、スライドやチョーキングなどにも機能しました。

 

 ボーカルをミックスする前に、DAWのオーディオ・クリップ(リージョン)上で音量をある程度そろえる方は多いのではないでしょうか? 私は音量差がスムーズになるようオートメーションを描いていますが、コツが要る作業なので不慣れな方には身近なテクニックではなかったかもしれません。それを解消するがごとく実装されたのがレベル調節マクロ。レベル調整マクロを使えばダイナミクス・コントロールに慣れていないボーカルの素材でも、Melodyne 5でピッチ&タイミング補正をしながら音量も容易にコントロールできます。

 

 オーディオのコード検出をピアノやギターのアルペジオで試したところ、想像より検出の精度が高く驚きました。コード名をクリックすると、簡易的に音色を視聴することもできるので、ビギナーの作曲やコード解析の支援ツールとしても役立つのではないでしょうか?

 

 Melodyne 5 Studioは従来不可能だったり手間だったボーカル・トラックの補正が容易になり、より音楽的な編集を実現していると感じました。今回の検証はデモ音源で行ったのですが、早く実戦投入したいです。

 

CELEMONY Melodyne 5 Studio

100,000円

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REQUIREMENTS ▪Mac:macOS 10.12以降(64ビット)、クワッド・コア以上のINTEL製プロセッサー ▪Windows:Windows 10(64ビット)、ASIO互換のオーディオI/O、クワッド・コア以上のINTELまたはAMD製プロセッサー ▪共通:8GB以上のRAM、インターネット接続環境

 

製品情報

hookup.co.jp

 

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www.snrec.jp