スピーカーのどこをマイクで狙うのか? 〜アンプ・タイプ別 ギター録音マニュアル(1)

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ギタリストならばアンプにこだわりを持つのも自然のこと。しかし、意外に難しいのがこのアンプの録音です。見よう見まねでマイクを立てて録ってみても、演奏しているときのような迫力あるサウンドにならないと悩んでいる人も多いでしょう。この特別企画では、主要なギター・アンプの特徴や使われるシチュエーションを押さえながら、どうやって録れば演奏しているときに感じているような迫力あるギター・サウンドが録れるのかを指南していきます。自宅やリハスタでぜひ挑戦してみてください。

Photo:Hiroki Obara

※本記事はサウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より転載しています

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演奏
鈴木“Daichi”秀行(左)
サウンド・クリエイター、作編曲家、マルチプレイヤー。アイドルからバンド・プロデュースまで、ヒット作のアレンジを多数担当。録音機器に対する造詣も深く、自身のStudio Cubicにさまざまな機材や楽器をそろえる

録音/解説
永井はじめ(右)
1989年よりレコーディング・エンジニアとしてのキャリアをスタート。石井竜也、K、柏木由紀、ORANGE RANGEほかの諸作でプロデュース、レコーディング、ミックスなどマルチに活躍。電子音楽ユニット“電子海面”のメンバーでもある

Introduction:
スピーカーのどこをマイクで狙うのか?

 ときどき勘違いしている人がいますが、スピーカーのセンター・キャップからは音は出ていません。スピーカーのドライバー(マグネットとコイル)の動きを空気振動に変換する役割を担うのは、コーン部分です(図①)。ではそのコーンのどこを狙うのか? 一般的にはセンター・キャップ寄り(円の中心寄り)とされていますが、実際には今後見ていくようにもう少し広い範囲を狙うことになります。

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▲図① スピーカー・ユニットを正面から見たところ。センター・キャップの裏側にマグネットとコイルがあり、電磁誘導によって電気信号が振動に変換される。その振動を空気に伝達する役割はコーンが担っているので、コーンにマイクを向けるのがアンプ収音の基本だ

 アンプの種類によっては、フロント・グリルのネットでユニットの位置が確認しづらい場合もありますので、そのときはライトを当ててユニットの位置を確認しましょう(写真①)。

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▲写真① アンプにはスピーカー・ユニットの保護のためにグリル・ネットが取り付けられているが、これによってユニットの位置が見えづらいことが多い。そんな場合は、グリル・ネットを通してアンプ内部にライトで光を当てると、ユニットの位置や形状が把握できるようになる

 また、スピーカーに近い距離(=オンマイク)で複数のマイクを立てる際には、スピーカー・ユニットから同距離に立てるのが基本です。スピーカーからの距離がそろっていないと、位相がずれてしまい、意図しない音やせが起こったり、フェイザーをかけたような音になってしまいます。グリル・ネットからマイクの距離を同じにしても、スピーカー・ユニットのどこを狙うかによって距離が変わりますから、できるだけスピーカー・ユニットの円周上で同じ位置を狙うのがよいと思います(図②)。

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▲図② 2本以上のマイクをスピーカーにオンマイクで立てる場合は、必ずユニットから等距離で。狙う場所がコーンの中心から等距離であれば、グリル・ネット〜マイク間の距離が同じであればよい

 また図②では各マイクを別々のスピーカー・ユニットに対して、同じような位置を狙って立てています。よく“それぞれのユニットを聴き比べて立てる”という話も聞きますが、実際にはスピーカー・ユニット間でそこまでコンディションに差があることは少ないので、マイキングのしやすさを優先しても構いません。マイクを通して録った音を聴いて、明らかにおかしいと感じる場合以外は、どれを狙ってもよいと思います。直接耳をユニットに近付けて判断するのは、もともとアンプの音量が大きい上に、急に爆音が鳴ることもあるので、危険です。

鈴木“Daichi”秀行に聞くアンプ録りで役立つテクニック

ノイズ対策にはアース線が効く!

 同じアンプを使うとしても、ライブのときよりレコーディングではノイズに対して気を遣いたいところ。まず、そのテイクで使わないエフェクターは全部接続から外しておこう。しばしば起こるのは“ブーン”というハム・ノイズだが、これはアースを取ることで解決することが多い。鈴木“Daichi”秀行氏も、写真のアース用のケーブルを自作しているそうだ。

 「洗濯機などのアース用電線の両端にワニ口クリップをつけたもので、材料はすべてホーム・センターでそろいました。これの片方をギターの金属部分(写真ではピックアップ・セレクター)に、もう片方を“どこか”につなげます。ノイズが消えればどこでもよいのですが、アウトボードのラック耳や、スチール・ラックの無塗装部といったいかにも導電性のありそうなところだけでなく、どういうわけか適当なものにつないでも消えることがあるので、いろいろ試してみてください」

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▲ピックアップ・セレクターの金属部分をワニ口クリップで挟む。もう片方は室内にあるいろいろなものにつないでみる。電源オフ状態のAC 電源機材などが効果がありそうだが、意外にも導電性の低そうな家具などにつないだときにノイズが消えたという経験もあるそうだ

DAW録音だからできるリアンプのススメ

 鈴木“Daichi”秀行氏は、しばしばリアンプを使うという。一度ギターをライン録音した後、その出力をアンプにつなぎ、マイクで録音するという手法だ。そのメリットをこう語ってくれた。

 「デモで一回ラインで録音しておいたギターを、ほかのパートが本番のテイクに差し替わってから弾き直そうとしても、全く同じようには弾けない。だったらリアンプすれば、元のテイクを使って完成形へのトライ&エラーが繰り返せるというのが利点ですね。もちろん、最初にライン録音するときにライン・アンプを通っているので、厳密に言えばギターをアンプに直結した音とは違っているとは思いますが、それでもメリットは大きいと思います。アマチュアでも、自宅で完ぺきなテイクを作ってから、リハスタでリアンプして録音するのもいいと思いますよ」

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▲鈴木氏所有のリアンプ・ボックス。オーディオ・インターフェースから出力したギター音は、ここを経由してインピーダンスとレベルのマッチングが取られた後、アンプに入力する。奥がREAMP Reamp V2、手前がRADIAL Reamp JCR

 

※本記事はサウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より転載しています

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