【2022年版】PRESONUS Studio One 5を詳しく解説 〜Yuichiro Kotaniがおすすめポイント&付属プラグインを紹介!

PRESONUS Studio One 5を詳しく解説 〜Yuichiro Kotaniがおすすめポイント&付属プラグインを紹介!

プラグインのスリープや複数フォーマットへの一括書き出しなど、制作からマスタリングまで包括的に提供する唯一無二のDAW

【製品概要】

 2009年のリリース以来、着実にユーザー数を増やし、今や主要DAWの一つと成長したMac/Windows対応のDAW。Studio One 5 Professional(ダウンロード版:42,800円前後)、Studio One 5 Artist(ダウンロード版:10,600円前後)、Studio One 5 Prime(ダウンロード版のみ:無償)の3グレードをそろえています。

 Professional版は64ビットのオーディオ・エンジンを搭載し、64ビット・フロート/384kHzでの録音&再生に対応。スコア(楽譜)機能やミキサーのシーン保存/呼び出し機能、マスタリング専用のプロジェクト・ページを備えるのも特徴です。

 最新のマイナー・アップデートによるバージョン5.4では、全体のCPUパフォーマンスを向上させる“プラグインのスリープ”機能や、オート・セーブ(自動保存)機能、2ミックスを一度に複数フォーマットで書き出せる機能などを搭載しています。

Studio One 5 Professional
Studio One 5 Artist
Studio One 5 Prime
左から、Studio One 5 Professional、Studio One 5 Artist、Studio One 5 Prime

【動作環境】
Mac:macOS 10.13以降(64ビット)、INTEL Core I3プロセッサーまたはAPPLE Silicon(M1チップ)
Windows:Windows 10/11(64ビット)、INTEL Core I3プロセッサーまたはAMD A10プロセッサー以上
共通:4GBのRAM(8GB以上を推奨)、40GBのディスク空き容量、解像度1,366×768以上のディスプレイ(High DPIディスプレイを推奨、タッチ操作にはマルチタッチに対応したディスプレイが必要)、インターネット接続(インストールとアクティベーションに必要)、VSTプラグインに対応

Yuichiro Kotaniが語るStudio One 5のココが好き!

Yuichiro Kotaniが語るStudio One 5のココが好き!

【Profile】米バークリー音楽大学で学び、近年はAll Day I Dreamなど人気レーベルからディープ・ハウスを発表。国内では広告音楽制作や楽曲提供の傍ら、モジュラー・シンセを取り入れたライブを展開。

音楽制作はもちろんスコアリングからマスタリングやライブまで対応。徹底的な“ユーザー第一目線”という姿勢が強みのDAW

 2015年、友人のスタジオに遊びに行った際に彼がStudio Oneを使用していたのですが、音質の今っぽさとスピーディな作業効率の良さに、“これからの自分のプロダクションに絶対必要だ!”と思い導入しました。その当時はバージョン2でしたが現在はバージョン5となっているStudio One、長年変わらず素晴らしいなと思う点は、ユーザーからのフィードバックをアップデート時に貪欲に取り入れていること。“こんなことができたらいいな”と思うような内容は、ほぼ1年以内に実現されているように感じます。

 最新バージョンでは音楽制作だけでなく、スコアリングからマスタリング、ライブ・パフォーマンスまでを包括した現代的プラットフォームへと進化。これもまさにユーザーからのフィードバックを地道に反映し、また時代に沿って変化してきた証と言えるでしょう。

 注目してほしいのは操作性。ユーザーの負担を少しでも減らし、音楽制作に集中してもらおうという意思を至るところから感じます。ほかのDAWだと2~3手間かかるところを、Studio One だと1手順で済むことが多々あったり、すぐにその機能にアクセスできるようになっていたりするのです。先に述べたフィードバックへの対応の速さも含め、この徹底的な“ユーザー第一目線”という姿勢がStudio One最大の強みだと思います。

お気に入りポイント1:アレンジ・トラック

Studio One 5のアレンジ・トラック

 アレンジ・トラックを使うと、複数のトラックをセクション単位で一度に動かしたり、反復コピーしたりできるようになります。例えば、16小節のイントロが少し短いので32小節にしようと思った際、通常だとイントロ後のイベントをすべて16小節後ろへ移動→イントロに属するイベントをすべて選択してコピー、としなければいけないのですが、Studio Oneだとアレンジ・セクションにイントロの長さ分だけアレンジ・イベントを作成しそれを反復コピーするだけでOK。曲の全体像をあらかじめ作ってから、DJがプレイしやすい形に整えていくことが多い僕にとっては、とても役に立つ機能です。

お気に入りポイント2:オートメーション

Studio One 5のオートメーション

 Studio Oneでは、ソング画面の左上(赤枠)に直前に触ったパラメーター名が常に表示されます。そして、パラメーター名の左横にある“手のひらボタン”をタイムライン上にドラッグ&ドロップするだけで、そのパラメーターのオートメーションをすぐに編集しはじめることが可能です。昨今のプロダクションではオートメーションを描く必要性が大幅に増えており、地味であるものの、この機能があるか無いかでは作業スピードが大幅に変わります。そればかりかインスピレーションを逃さない、また思い付いたときにすぐ実行できるという面で、大きなアドバンテージがあると言えるでしょう。

お気に入りポイント3:クリアな音質と優秀なトランスポーズ機能

Studio One 5のクリアな音質と優秀なトランスポーズ機能

 Studio Oneの大きな特徴の一つとして、クリアな音質ということが挙げられると思います。サウンド・ステージが広く、よどみが無い印象です。

 またインスペクターにあるトランスポーズ機能を使えば、オーディオ・クリップのピッチを変えることができ、これがとても優秀。ほかのDAWだと破たんしてしまうような大きなピッチの変化にも、Studio Oneの場合だと音楽的なフィールを保ちつつ変えてくれます。これはオーディオ・サンプルを使う際にも、自分で録音した音源を編集する際にも、大きなメリットとなり得るでしょう。

Studio One 5のおすすめ付属プラグインを紹介!

Arpeggiator[アルペジエイター]

Studio One 5のArpeggiator

 Studio One 5 Professionalエディションに付属のシンプルなMIDIアルペジエイターなのですが、だからこそ分かりやすく、必要なときに役立ってくれます。画面左端にある大きなノブで演奏されるノートの長さ(音価)を設定し、その上にあるOctave Rangeでノートをどの高さまで反復するかをオクターブ単位で指定できます。またパターンの長さを3や5などの奇数にも調節可能なため、ダンス・ミュージックの制作にすごく役立ちます

Expander[エクスパンダー]

Studio One 5のExpander

 コンプレッサーとは逆の動作で、スレッショルド以下の音量を圧縮してくれます。これをリズムのループに使うと音の大きいところのみを取り出すことが可能です。またパーカッションの単音でも、不必要な立ち上がり音や余韻をカットでき、よりパキッとした音像にすることができます。

 リズム・セクションの中で少し埋もれがちだったり、グルーブを目立たせたいパーツに用いると、リズム全体がより引き締まり、大きな音像で鳴ってくれるようになります。Studio One 5 Professional/Artistエディションに付属のプラグインです。

Fat Channel XT[チャンネル・ストリップ]

Studio One 5のFat Channel XT

 ハイパス・フィルター/ゲート、コンプ、EQ、リミッターが搭載されたStudio One 5 Professional/Artistエディション付属のチャンネル・ストリップ・プラグイン。トラックを磨き上げていく際に基本となるものがすべて用意されている複合型のエフェクトです。最上段にある“▼”のプルダウン・メニューをクリックすると、コンプやEQの種類を変更できるようになるのですが、この選択肢としてUREIやNEVEなどをほうふつさせるスタジオ定番アウトボードのモデリング・プラグインがそろっています。サード・パーティ製プラグインを導入せずともこれらが使えるのは、初心者の方にとってStudio Oneの大きな魅力となるでしょう。アドオンでコンプやEQの選択肢をさらに増やすことも可能です!

Gater[ゲート]

Studio One 5のGater

 Studio Oneに付属するソフト・シンセのMai Taiや、ソフトサンプラーPresence XTのFX Bセクションに搭載されている“Gater”。これをオンにするだけで、そのときに鳴っている音を16分音符単位で刻んでいくことができます。

 例えばPresence XTでコーラス系のプリセット“Choir Biend Huh Hhm”を選択し、適当にコードを押さえながらこのGaterを触るだけで、リズミカルでいい感じのアトモスフィア・サウンドを作ることができるでしょう

SampleOne XT[サンプラー]

Studio One 5のSampleOne XT

 Studio One 5 Professional/Artistエディション付属のサンプラー。オーディオ・トラックで編集中のファイルを右クリック→“新規Sample Oneに送信”するだけで、ファイルをSampleOne XTに読み込ませ、MIDI鍵盤で演奏することができます。トラック上にオーディオを貼り付けてリズムを作るより、MIDI鍵盤を実際にたたいた方が直感的なグルーブを作り出せることがあります。地味なようで何気に助けられている機能ですね。

Pipeline XT[ユーティリティ]

Studio One 5のPipeline XT

 オーディオI/O上のインプット・チャンネルに入力した音を、挿入したオーディオ・トラックから出力したり、アウトボードをプラグインのように扱いたいときに使うのがPipeline XT。通常Studio Oneでは、オーディオ・トラックのモニター・ボタンをオンにすることで、選択されたインプット・チャンネルをモニタリングできるようになるのですが、僕のようにシンセなどのハードウェアを多数使う環境では、いちいちモニター・ボタンを押すよりも、シンセを弾けばすぐに音が出るようにしておきたいので重宝しています。

 Pipeline XTはプラグイン内で遅延と算出と補正を自動で行い、インプット/アウトプット両方のボリューム調整までできる優れものツール。Studio One 5 Professionalエディションのみ付属です。

PRESONUS Studio One 5 製品情報

サンレコ・ビギナーズ|音楽制作に役立つ初心者ガイド

関連記事