ZOOM R20 〜Rock oN Monthly Recommend vol.44

ZOOM R20 〜Rock oN Monthly Recommend vol.44

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はZOOMが新たに開発したMTR(マルチトラック・レコーダー)、R20を紹介する。R20はMTRとしての基本的な機能は保ちつつ、タッチ・スクリーンを搭載して直感的な操作性を実現。エフェクトやシンセ音源も内蔵するなど、まさに現代の音楽制作にふさわしいMTRとなっている。ZOOMの川村快磨氏と西尾信吾氏、メディア・インテグレーションの松本章吾氏に話を聞いた。

Photo:Takashi Yashima

ZOOM R20

ZOOM R20|オープン・プライス(市場予想価格50,000円前後)

ZOOM R20|オープン・プライス(市場予想価格50,000円前後)

 8ch同時録音、16ch同時再生が可能なマルチトラック・レコーダー。4.3インチ型のタッチ・スクリーンには録音データがリージョンとして表示され、指で動かせば移動させることが可能。同様に、タッチ操作で分割編集やコピー&ペースト、削除などが行え、DAWソフトのように直感的なオペレートを実現している。パソコンと接続し、8イン/4アウトまたは2イン/2アウトのオーディオI/Oとして使用することも可能だ。

ZOOM R20のリア・パネル。左から電源アダプター端子、電源スイッチ、ヘッドフォン・ボリューム・ノブ、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)、メイン・アウト(フォーンL/R)が並ぶ

リア・パネル。左から電源アダプター端子、電源スイッチ、ヘッドフォン・ボリューム・ノブ、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)、メイン・アウト(フォーンL/R)が並ぶ

ZOOM R20の右側面には別売りのBluetoothアダプターBTA-1を接続する端子のほか、パソコンとの接続用USB Type-C端子、SDカードの挿入口が備わっている

右側面には別売りのBluetoothアダプターBTA-1(オープン・プライス:市場予想価格4,000円前後)を接続する端子のほか、パソコンとの接続用USB Type-C端子、SDカードの挿入口が備わっている

 

●DAWが全盛の時代ですが、なぜ新たなMTRを開発したのですか?

川村 DAWが登場してから長らくたちますが、最近まで多くの人にとっては身近なものではありませんでした。しかし、APPLE iPhoneをみんなが持つようになり、プリインストールされているGarageBandによって音楽制作システムに触る機会が増えたと思います。GarageBandの魅力は分かりやすい操作性で簡単に音楽を作れるところですが、そういったシステムがハードウェアになると使いやすいのではないかというところが最初のアイディアでした。GarageBandなどアプリ単体で音楽制作するのは楽ですが、iPhoneで歌やギターを録るとなると、変換ケーブルやオーディオI/Oなど必要な機材もあり手軽ではなくなってしまいます。スマートフォン・アプリの分かりやすいユーザー・インターフェースとZOOMのRシリーズの機能を合わせ、今の楽器プレイヤーが“使いたい”と思うようなMTRとしてR20を開発しました。

 

●現代においてMTRが使われるのはどういったシーンでしょうか?

川村 登場から10年以上過ぎたモデルのR24も、パソコン要らずでスタジオに持っていける手軽さもあり今でも使われているんです。例えばドラム録りのとき、パソコンだとオーディオI/Oやマイクをセットして……と手間もかかります。そういうときに、単体で録音できるMTRが便利なんです。また、最近ではパソコンを持っていないという方も多くなり、そういった人たちにとってはDAWはかなりハードルが高いものになるので、気軽に音が録れるMTRが便利なのだと思います。

松本 パソコンで音楽制作を始める場合、DAWやオーディオI/Oなどのツールを何にするかなど迷いが出てきますよね。MTRは音楽を作るための専用機なので迷いも無く、“録音して音楽を仕上げていく”という作業において理に適った設計になっていて、安定性が高いというのも挙げられます

 

●R20はタッチ・スクリーンによってユーザー・フレンドリーな操作性を実現していると思います。タッチ・スクリーンの搭載は開発で重要視していたのでしょうか?

川村 画面をタッチできることによる操作の分かりやすさというのは代えがたいものですし、コストはかかってしまうのですが採用しました。DAWらしく音をリージョンとして扱えるようにして、タッチで移動できるようにしたかったんです。

松本 リージョンという考え方は現代的ですね。しかも指で移動させたり、ループを伸ばしたりと、そういう操作性に慣れている層には非常に取っ付きやすいです。タッチ・スクリーンによって操作子が省かれてすっきりとしていますが、機能も十分で硬派なMTRに仕上がっていると思います。

川村 私がZOOMに入った18年ほど前はMTR全盛で、CDを焼けるMTRが各社から出ていました。でも筐体は大きいし操作も難しく、パソコンの価格が下がってくると同時にDAWへ移る人も多かったんです。そう考えるとカセットMTRは手軽だったなと思い、R20ではカセットMTRの感覚で使えることを目標にしました。やはりフィジカルなコントロールができるのが魅力ですね。マウスでDAWの録音ボタンを押して録るという流れが楽器を弾く体の動きとマッチしなくて、演奏者にとっては作業が面倒になってしまいます。例えばバンドのデモ作りなどでMTRを使う人も多いですが、録音スタートや停止を物理ボタンでバシバシと押せたり、トラックの音量調整をフェーダーで行えるというダイレクトさがあることで、楽器を弾くというマインドのまま録音に臨める感じがするんです。どこをタッチ・スクリーンにして、どこを物理ボタンとして残すかは考えて開発しました。

松本 フィジカルさにこだわるお客様は多くいらっしゃいます。DAW用のフィジカル・コントローラーが各社から出ているのもダイレクトな操作性が求められているからでしょう。

 

●タッチ・スクリーン上ではどのような操作が行えるのでしょうか?

西尾 録音したものはトラック・ビューという画面にリージョンとして表示されます。そのまま指でドラッグすれば、ループとして長さを変更可能です。コピー&ペーストも削除もタッチですぐに行えますし、トラックを拡大表示して細かいトリミングができる波形編集画面も用意しました。タイム・ストレッチも可能です。

 

●エフェクトも各トラックに備わっているようですね。

川村 コンプレッサー/リミッター/ノイズ・ゲートと3バンドEQがあり、そのほかにもインサート・エフェクトとセンド・エフェクトが使えます。

西尾 リバーブやディレイをセンドでかけたり、インサートとしてディストーションなどをかけ録りすることができます。エフェクトはZOOMのギター/ベースのマルチエフェクターで使っているものが入っていて、ギタリストやベーシストにもフレンドリーな仕様ですね。パソコンとつないでGuitar Labというソフトウェアを使えば、エフェクトの入れ替えも可能です。

川村 Guitar Labのエフェクトは同時に3種類まで使用できます。DAWと勝負しようと、より多くのエフェクト数を扱えたり、サンプリング・リバーブなどの超リッチなエフェクトまで使えるようにするとコストが高くなってしまうだけなので“そこまでやりたい人はDAWへインポートして作業してもらおう”と割り切っています。とは言えR20にはまだまだ機能があって、なんとFMシンセ音源まで乗せているんです。

松本 それにはびっくりしました。なぜ搭載することになったのですか?

川村 まず最初に話に挙がったのが、SMFを読み込みたいということでした。MIDIトラックで曲の全体像を確かめながら、演奏を録音して差し替えるようなことがやりたいという要望があったんです。そこで4オペレーターのFMシンセを搭載しました。

ZOOMのギター/ベース用マルチエフェクターで使われているエフェクトをインサートまたはセンドで使用可能

ZOOMのギター/ベース用マルチエフェクターで使われているエフェクトをインサートまたはセンドで使用可能。ギター/ベース・アンプのモデリング、ひずみ系、空間系など多彩なエフェクトを用意している。Mac/Windows用ソフトGuitar Labと接続することで、エフェクトの追加やパッチ編集が可能だ

各トラックの設定画面には3バンドEQやコンプレッサー/リミッター/ノイズ・ゲートの機能が備わっており、入力信号に合わせてサウンド・メイクができるのも魅力だ

各トラックの設定画面には3バンドEQやコンプレッサー/リミッター/ノイズ・ゲートの機能が備わっており、入力信号に合わせてサウンド・メイクができるのも魅力だ

 

●打ち込みはどのように行いますか?

川村 R20にUSB接続でMIDIキーボードをつなぐことができます。また、タッチ・スクリーン上にピアノロール画面を表示できるので、そこで打ち込むことも可能です。ピアノロールでベース・ラインを打ち込み、指でドラッグしてループを伸ばせばすぐにベースのトラックが完成します。

西尾 シンセ・トラックの音色は19種類あり、FMシンセ音源が18種類、PCM音源のDrum Kitという音色が1種類入っています。

川村 MIDIトラックはプロジェクト内で1trだけになってしまうのですが、オーディオへ書き出すことができるので、オーディオ・トラックに移して別の音源で違うフレーズを打ち込んでいくことも行えます。

西尾 R20で打ち込んだものをSMFで書き出しもできるので、それをDAWに取り込んでいただくこともできますね。

松本 オーディオ素材も入っているんですよね?

川村 リズムのループが150種類入っています。それらはトラック画面に張り付けて使うことが可能です。また、SDカードからオーディオをインポートして使うこともできます。

シンセ音源も内蔵しており、USB接続したMIDIキーボードまたはタッチ・スクリーン上のピアノロールを使ってフレーズを打ち込むことが可能だ

シンセ音源も内蔵しており、USB接続したMIDIキーボードまたはタッチ・スクリーン上のピアノロールを使ってフレーズを打ち込むことが可能だ。音色はエレピやオルガン、ベース、ブラス、ドラム・キットなど19種類を用意。また、リズム系に関してはループのオーディオ素材を150種類収録しており、オーディオ・トラックに張り付けて使用できる

 

●MTRとしてはコアな機能まで網羅しているんですね。

川村 局所的にマニアックなことをやるのがZOOMのポリシーでもあるんです。今後のアップデートでは、BluetoothアダプターのBTA-1をR20に挿すことにより、iPhoneやiPadのアプリ“R20 Control"からリモート・コントロールできるようになります。ボーカルや演奏者が防音室などに入り、遠隔から録音をスタートするようなことが可能です。また、そのR20 Controlは画面の表示内容を読み上げるVoiceOver機能にも対応します。物理的な操作子があるR24などのモデルは視覚障がいを持つ方にも使っていただいていたのですが、R20のようにタッチ・スクリーンになるとそういった方々にとっては操作が難しくなってしまうんです。そこでVoiceOver機能に対応させることにしました。あと、DAWのコントロール・サーフェスとして利用できるようになるアップデートも近日リリース予定です。

BTA-1を接続すれば、iOS/iPad OSアプリのR20 Controlを使用したリモート操作も行える

BTA-1を接続すれば、iOS/iPad OSアプリのR20 Controlを使用したリモート操作も行える(R20 Controlは2022年春リリース予定)。視覚障がい者のユーザーをサポートするVoiceOver機能にも対応する

 

●これだけの機能がありつつも価格が抑えられているのはユーザーにとってうれしいポイントです。

西尾 コストと性能のバランスを取っていくため、製品のシステムのチューニングを突き詰めるんです。オーディオが動いていないタイミングで表示を奇麗に出したりと、CPUでの処理は試行錯誤しました。

松本 現代的な機能と扱いやすい操作性を両立し、手に入れやすい価格に落とし込んでいるのには驚きました。シンプルな録音のシステムを手に入れたいというお客様にはぜひ使っていただきたいMTRです。

 

ズームの川村快磨氏と西尾信吾氏
メディア・インテグレーションの松本章吾氏
ズームの川村快磨氏と西尾信吾氏(左の写真、左から)、メディア・インテグレーションの松本章吾氏(右の写真)

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