性能やバージョン5以降の新機能などStudio Oneの魅力をレビュー!|解説:笹川真生

性能やバージョン5以降の新機能などStudio Oneの魅力をレビュー!|解説:笹川真生

 はじめまして。新しくこのコーナーを担当します作編曲家/シンガー・ソングライターの笹川真生といいます。私にとってPRESONUS Studio One(以下S1)は人生で初めてのDAWであり、使い始めてから今年でちょうど10年(!)になります。当時は2だったバージョンも今では5.5になり、時の重さを実感しています。まだまだ未熟者の私ですが、自らの音楽人生にずっと寄り添ってくれているS1の魅力や、普段どのように使用し制作しているかなど、自分なりに紹介していければと思います。あまり難しいことはしていないので、“これから本格的に音楽を始めたい!”という方にも、この連載が届いたらうれしいです。

動作が軽快で細かいストレスが無くDAWビギナーにもお薦めできる

 S1の魅力について、最初に紹介したいのは“動作が軽い”という部分です。インストーラーからして数百MBで、初めてその容量を見たときは、“間違えて関係の無いファイルをダウンロードしたのか……?”とさえ思ってしまいました。実際に使用している際の挙動も軽快です。

 

 10年前、当時高校生だった私はかなりボロボロのノート・パソコンを使っていまして(メモリーも4GB)、“何かクリエイティブなことをしたい!”と奮起したはいいものの、動画編集や画像編集、その他諸々の制作系アプリケーションには高負荷なものが多く、当然満足に動かすこともできず、悶々とした日々を送っていました。そんな中、S1だけがきびきびと動いてくれたのです。大げさかもしれませんが、初めて触ったDAWがS1でなかったら、今こうして音楽で生活できている自分は居なかったのかな、とさえ感じます。

f:id:rittor_snrec:20220308140655j:plain

最新曲「食虫植物」のソング画面(楽曲全体を見渡すための画面)。筆者がS1を使用し始めたのはバージョン2のころだったが、現在のバージョン5.5でも動作の軽さは変わらず、制作中にストレスを感じることが極めて少ない

 今はコンピューターのスペックも当時とは段違いに良くなっているので、先述のようなことはあまり見られないかもしれませんが、例えば当時の私のように、“音楽制作を始めたいけれど最初からあまりお金はかけられないな……”という人にも、自信を持って薦めることができます。これは、その人が音楽制作を始める機会を損失させないということで、ソフトウェアの性能うんぬん以上に、何か尊いものまで感じてしまいます。

 

 また、S1では複数台のコンピューターにオーソライズ(ユーザー認証。同じライセンスでの同時使用は不可)を行うことができるのですが、サブのコンピューターに制作環境を構築する際にも、ソフト自体の軽さのおかげでセットアップにあまり時間がかかりません。アップデートもすんなり行えますし、こういった点で細かいストレスが無いのは単純にうれしいです。

 

 次に、GUI(操作画面)についてです。さまざまな製品の紹介文を読んでいると、たびたび“直感的な操作”という言葉を目にします。それは素晴らしいことですし、美しいのですが、私個人としては、あまりに直感的過ぎるデザインだと逆に使いづらさを覚えてしまいます(この感覚は本当に人それぞれだと思うので、あくまで一個人の感想です)。

 

 その点、S1はあくまでソフトウェア然としつつも、使い手側が直感的に使おうとしたならばしっかりと応えてくれる、ちょうど良い手触りであると常日ごろから感じています。

作業環境の引き算=整理が容易で制作のゴールが見えやすい

 私が特に恩恵を得ているのは、画面右に表示されるブラウザーです。ブラウザーはPRESONUS製または追加したサード・パーティ製のプラグイン(エフェクトやインストゥルメント)、ループ素材、各種ファイルなどなどが表示される個所で、使いたいものを任意の場所へドラッグ&ドロップするだけで即座に起動させることができます。

f:id:rittor_snrec:20220308140908j:plain

ソング画面右下の“ブラウズ”タブを押すと現れるブラウザー。画面はS1が読み込んでいるプラグイン・エフェクトを表示しているところだ。上部の“並び替え”機能(赤枠)では、各プラグインのフォルダー/ベンダー(メーカー)/タイプ(AUやVSTといったフォーマット)によってソートして表示することができる。“フォルダー”を選ぶと、PRESONUS製のものはエフェクトの種類(ディレイやEQなど)でカテゴライズされたフォルダーとして表示される

 制作の中で、音色を吟味するためにインストゥルメントを変更したり、またはプラグインで音を加工したりということを頻繁に行うのですが、その際にプラグイン一覧を表示させながら作業できるので“そういえばあのプラグインも試してみようかな”という発想から着手までを迅速に行え、余計なひと手間をかけることなく音楽制作に集中できます。

 

 表示方法についても、プラグインの種類ごとにソートするのか、ベンダーごとに分けるのか、お気に入りのものだけを出すのかといった設定が見やすく整理されています。セールや無償配布などでついつい増えがちなプラグイン。あまり使っていないものは非表示にしておこうかな……というときも右クリック・メニューから“隠す”を選択するだけ。作業環境の引き算がやりやすいと、制作のゴールが見えやすくなります。

 

 ブラウザーだけでなくMIDIエディット画面、ミキサー画面もワンクリックで表示/非表示を切り替えられるため、小さいディスプレイで作業しなければならない状況であってもスムーズな作業を期待できるはずです。S1には、状況に応じて好きなやり方で操作できる、というユーザー・フレンドリーな意匠が随所に見られ、そこもお気に入りの点です。

f:id:rittor_snrec:20220308140957j:plain

ミックス・タブではミキサー、編集タブではピアノロールや波形編集画面の表示/非表示がワンクリックで行える

楽譜のPDF化やTAB譜にも対応のスコアエディターが便利

 次に、バージョン5になってから追加されたスコアエディターについてです。なんと、S1の中でスコアの表示/書き込みができてしまうというもので、早速お世話になっています。自分以外のミュージシャンの方へ演奏の依頼をする際、今までは打ち込んだMIDIデータを一度エクスポートし、外部の楽譜作成ソフトに読み込んで、手直しして出力という手順だったのですが、スコアエディターからPDFを書き出せるので、非常に手間が減りました。さらに最近はTAB譜にまで対応したので、より一層便利に。バンド演奏のメモとしてTAB譜を作りたい、といった用途にもお勧めできると思います。

f:id:rittor_snrec:20220308141030j:plain

ピアノロール左側の音符マークを押すと(赤枠)、打ち込んだ内容をスコアエディターで表示できる。パターンの作成/編集はスコアエディターでも行え、音符マーク左の鍵盤マークを押すとピアノロール表示になるため、両者はシームレスだ

 また“五線譜は読めるけれど、ピアノロールって見方が分からないし、なんか怖い”という方も、五線譜のまま直接打ち込めてしまえるので、スムーズに制作できるかもしれません。私自身はあまり五線譜を読めないのですが、たまにはスコアエディターを使用して打ち込み、五線譜と少しでも仲良くなろうかな、という気持ちにもさせてくれるので、こんな機会を与えてくれたことにも感謝しています。

 

 ふわっとした紹介になったり、自分語りが多くなってしまい恐縮ですが、次回以降は実際に制作でどのように使用しているかなどなど紹介できればと思います。次号もよろしくお願いいたします!

 

笹川真生

【Profile】シンガー・ソングライター。ボカロPとして音楽キャリアをスタートさせた後、2019年ごろより現在の活動スタイルへシフトし、作品を多数発表。叙情的なロック・サウンドが持ち味で、理芽や夏川椎菜などへの楽曲提供も行う。目下最新曲は、2021年に理芽へ提供した「食虫植物」のセルフ・カバー。3月11日(金)には渋谷のSpotify O-nestで自主企画『脈拍』を開催する予定。ウ山あまね、碧海祐人を招いての3マンとなる。

【Recent work】

『食虫植物』
笹川真生
(笹川真生)

 

PRESONUS Studio One

f:id:rittor_snrec:20211109211057j:plain

LINE UP
Studio One 5 Professional日本語版:42,800円前後|Studio One 5 Professionalクロスグレード日本語版:32,000円前後|Studio One 5 Artist日本語版:10,600円前後|Studio One Prime:無償
※いずれもダウンロード版
※オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以降(64ビット版)、INTEL Core I3プロセッサーまたはAPPLE Silicon(M1チップ)
▪Windows:Windows 10(64ビット版)、INTEL Core I3プロセッサーまたはAMD A10プロセッサー以上
▪共通:4GB RAM(8GB以上推奨)、40GBハード・ドライブ・スペース、インターネット接続(インストールとアクティベーションに必要)、1,366×768pix以上の解像度のディスプレイ(高DPI推奨)

製品情報