ある程度のクオリティなら誰でも簡単に音楽が作れる時代がゆえ
ビート・メイカーの個性がますます大切になってくる
トラップ・ミュージックを中心に制作する国内ビート・メイカーたちに、音楽制作を始めたきっかけやこだわりを聞いていく「TRAP BEAT MAKERS」。asciiは2018年から東京都を拠点に活動する高校生のビート・メイカー。自身も所属するクルーTokyo Invadersでの活動を皮切りに、Normcore BoyzやTade Dust & Bonbero、nomaらに楽曲提供している。トラップにエレクトロ要素を組み込んだプロダクションが特徴的だ。
RECENT WORK
『Flatts』
Gucci Prince, Spada
(BUZZ RECORDS)
ビート・メイキングを始めたきっかけ
小学生のとき、電気グルーヴやYMO、クラフトワーク、ダフト・パンクなどの電子音楽が好きで、APPLE GarageBandやiOSアプリのKORG iKaossilatorを触るようになりました。そこから作曲の基礎を覚えましたね。中学生になるとラップ・バトルのテレビ番組『フリースタイルダンジョン』がきっかけでヒップホップに興味を持ち、それ以降KOHHやゆるふわギャングにハマってトラップを作るようになりました。DAWはtofubeatsさんが使っていたので、ABLETON Liveを使用しています。
尊敬するビート・メイカー/プロデューサー
自分が敬愛する電気グルーヴのメンバーであり、DJ兼音楽プロデューサーでもある石野卓球さんです。ソロとしての活動ではかなりコアな曲を出していますが、一方では篠原ともえさんのプロデュースを務めるなど、多数のメジャー・アーティストに楽曲提供しています。純粋に音楽プロデューサーとしてもすごいなと思いますね。
制作環境について
APPLE MacBook Proをメイン・マシンとして使っていて、自宅か友人の家で制作することが多いです。オーディオI/OはBEHRINGER UMC404HD。アナログ4イン/4アウトと入出力の数も多く、コスト・パフォーマンスに優れていると思って購入しました。モニターはMARANTZ PROFESSIONAL Studio Scope 3で、これは父親に薦められたから。高域は少し控えめで、低域はしっかり聴こえます。SONY MDR-CD900STは標準的なモニタリング・ヘッドフォンだと思うので選びました。高域が少し強調されてるように聴こえますが、どんな音量でも曲の各周波数帯域が分かりやすいため気に入っています。
TR-808系キック・ベースのこだわり
サンプルも使いますが、ソフト・シンセであればFUTURE AUDIO WORKSHOP SubLabを多用しています。サンプルを鳴らす際は、Liveに付属するソフト・サンプラーのSimplerを使っていますね。より良いキック・ベースにするために意識しているのは“抑揚”です。シンプルかつ、ひねりのあるフレーズ作りを心掛けています。音に厚みを出す目的で、サチュレーション・プラグインのCAMEL AUDIO CamelCrusherやLive付属のSaturatorをかけることもあります。
上モノのこだわり
音源ではTONE2 Electra2、REVEAL SOUND Spire、U-HE Hiveなどのソフト・シンセが好きです。LFOやフィルターの調整は必ずします。ROLAND TB-303のシミュレーション・ソフト、AUDIOREALISM Bass Line 3もお気に入りです。ランダムにシーケンス生成ができる機能があるのですが、スケールの指定もできるので重宝しています。
ビート・メイカーとして大切なこと
ラップを乗せるトラックであれば、やはりドラムのグルーブ感は重要ですが、まずは自分がどういう音が好きなのか、またどういう音を出したいかをはっきりさせるのが一番だと思います。ある程度のクオリティなら誰でも簡単に音楽が作れる時代がゆえ、ビート・メイカー自身の個性がますます大切になってくるのではないでしょうか。