メンバー4人がDIYで作り上げた録音/ミックスのための自然派アトリエ
荒谷翔大(vo、k)、田中慧(b)、斉藤雄哉(g)、野元喬文(ds)から成る、福岡の4人組バンドyonawo。2021年1月に造ったばかりのプライベート・スタジオHaruyoshiは、コンクリート造の雑居ビルの一角にある。4人の溜まり場になっており、鍵盤、ボーカル、ギター、ベースの録音ができる環境。ラフミックス作りを行う場でもあり、有機的で脱力感のある彼らのサウンド・メイクの拠点にもなっている。
Text:Mizuki Sikano Photo:Sakura Takeuchi
必要に応じて吸音板を設置して、全体は開放的な空間作りにした
「メジャー契約したときからスタジオを作りたいと思っていた」と斉藤は言う。物件を探し始めたのは2020年夏で、天神南駅から徒歩5分のところに位置する部屋に決めたのが、11月ごろだったと荒谷は続けた。
「それまで(斉藤)雄哉の家で作っていて、1stの『明日は当然来ないでしょ』を作りながら“次に出すアルバム(『遙かいま』)は自分たちのスタジオで作りたい”って話していました。全員が自由に録音とかエンジニアリングできる場所があった方がバンドとして良いかなと思って。2020年の12月に録音機材やライブ用の楽器の引っ越しを始めて、2021年の1月からスタジオでの制作が本格始動したんです。基本的に僕らは外のスタジオで録っていますが、デモのための録音、部分的にギター、ベースの本チャン録りのために使っています」
部屋の改装は、メンバーがDIYで行ったと斉藤は語る。
「12月はツアーが終わった後で時間があったので、皆でHaruyoshiの改装をしていました。キッチンを取っ払ってスペースを確保したり、お風呂場のシャワーを取って倉庫にしたり。あとは皆で壁を塗って、めちゃ楽しかったですね」
スタジオの壁はコンクリートで、特に吸音材などは張られていない。「開放的な方がよくて、デッド過ぎるのはきゅうくつに感じられるので好みじゃないんです」と荒谷。
斉藤は「基本的に防音や遮音のために何も施してない状態で、そのままだと壁からの反射音が普通にあります。だからCLEAR SONICの自立式2面吸音板Sorberをサイズ違いで買っていて、録音時には適所に配置しているんです。僕がミックスをするときには、スピーカーの後ろと自分が座る椅子の後ろに高さ168cmのS5-2Dを2つ置いたり、ボーカル録りではマイクの背後を囲ったり。高さ112cmのS4-2Dはアコギを録るときによく使います。スタジオの防音対策は課題で、当初は窓を無くして木で埋める案もありましたが、閉じ込められているような感覚に陥るのが嫌なんですよね。実際に使い始めたら、しょっちゅう窓を開けているので、これでよかったと思っています」と話す。
ドラムを鳴らす機会は少ないとのことで、それについて野元は「僕は家からHaruyoshiまで一番遠いので、基本的に練習は家で電子ドラムを使って行っているんです。あと、キックの振動はコンクリートを伝ってほかの階にも響いてしまうので、ここでたたくときはホームセンターで買った防振ゴムの上に、ROLANDの防振シートNE-10を重ねて、その上にキック・ペダルを置いています」と話してくれた。
また、録音機器の安定的動作のために、デスク周辺のコンセントに200Vの電源を引いたと斉藤は言う。
「もともと部屋のコンセントは100Vだったので、電気工事のできる知り合いに頼んで、楽器に使用するためのコンセントには200Vを引いて、トランスで変圧しています。そうすることで、必要電力が117Vの機材にも対応できるようになりました」
スタジオ・セッションを行いやすくなり楽曲制作の方法も変化した
Haruyoshiが作られたことで、よりコミュニケーションを取りながら制作できるようになったと話すのは荒谷だ。
「雄哉の家にお邪魔していたころよりも、気兼ねなく集まったり、音を出して作業できるようになったんです。基本的には僕が家でデモを作るけれど、Haruyoshiに集まるようになって、セッションから膨らます制作もできました」
さらに田中も「自分の思い付いたタイミングで来られるスタジオって良いです。約束して全員集合するときもあるけれど、ノリで来たら皆んなも居るときがあったりします」と続く。
斉藤は「今、俺の家には何も機材が無いんですよ。だからHaruyoshiに来たら“やらなきゃ”ってスイッチが入るので、ミックスだけでなく、ギター練習にも身が入る空間です」とスタジオのメリットを強く感じているようだ。
それに対して野元は「Haruyoshiは音楽活動以外で、ラジオの収録、Instagramでのライブ配信など、あらゆる活動の拠点になっています。コロナによる自粛の時期も、皆で制作のためのミーティングをして、メンバー以外の人との接触を極力避けながら音楽活動をすることができたのはよかったです」と多岐にわたる利点を実感しているという。
斉藤がこれからHaruyoshiでやってみたいことは、システムを整えて、ライブ配信を行うことだと話す。
「最近はSNSアカウントでライブ配信をする機会も増えましたが、現状はAPPLE iPhoneの内蔵マイクで音声入力しているんです。これからは今あるスタジオ機材を使って、簡単な配信システムなども組んでみたいと考えています」
Equipment
DAW System
Computer:APPLE Mac Mini
DAW:AVID Pro Tools、APPLE Logic Pro
Audio I/O:UNIVERSAL AUDIO Apollo X8P
Outboard & Effects
Mic Preamp:AMS NEVE 1073LB、88RLB
Channel Strip:UNIVERSAL AUDIO LA-610
Others:EARTHQUAKER DEVICES Plumes、VERTEX Steel String Clean Drive(Overdrive)、PROCO RAT、HAYASHI CRAFT TG-10(Distortion)、BOSS DD-7(Delay)、ELECTRO-HARMONIX Nano Pog(Octave effect)、etc.
Recording & Monitoring
Mixer:SSL Six
Monitor Speaker:FOCAL Shape 50
Microphone:SHURE SM57、SM58、NEUMANN TLM 103、MXL V67G、RODE NT1、ELECTRO-VOICE RE20
Headphone:SENNHEISER HD 25
Instruments
Keyboard & Synthesizer:YAMAHA DX7、KORG SV-1、MOOG Sub 37、WURLITZER 200A
Guitar:GIBSON ES-125、B-25、Les Paul Junior、ES-175、FENDER Telecaster、etc.
yonawo
2019年11月にメジャーデビューした福岡在住の4人組バンド。メンバーは荒谷翔大(vo、k/写真前列右)、田中慧(b/前列左)、斉藤雄哉(g/後列左)、野元喬文(ds/後列右)。
Recent Work
『遙かいま』
yonawo
(ワーナーミュージック・ジャパン)