yonawo『遙かいま』インタビュー【前編】GarageBandを使ったDTMでのデモ作りとプライベート・スタジオ

yonawo『遙かいま』インタビュー【前編】GarageBandを使ったDTMでのデモ作りとプラベート・スタジオ

荒谷翔大(vo、k/写真右から2人目)、田中慧(b/同右)、斉藤雄哉(g/同左手前)、野元喬文(ds/同左後方)による福岡の4人組バンド=yonawo。有機的なエレクトロ・ビートや実験的なサンプリングを取り入れたバラード、肉体感のあるベースがリードするソウル・チューンなど幅広く収録する2ndアルバム『遙かいま』。今回はメンバー全員に、制作のフローを主軸として音作りのこだわりを語ってもらう。

Text:Mizuki Sikano

APPLE GarageBandを使って、時に完成形までデモを打ち込みます

yonawoの楽曲には打ち込みの音が散りばめられた曲がありますね。

荒谷 僕が最初に打ち込みでデモを作っていて、APPLE iPadに入っているAPPLE GarageBandで打ち込んでいます。曲作りを始めたときからずっと使っていて、デモ集の『desk』にはGarageBandで完結させた曲もあるくらいです。

野元 僕も(田中)慧もGarageBandを使っています。

荒谷 (斉藤)雄哉は専門学校で2年間レコーディングを勉強しているから、僕らはDAWの使い方や音作りの方法を教えてもらったりもしているんですよ。

斉藤 バンドの活動に生かしたくて通っていたんです。僕はHaruyoshiというプライベート・スタジオに置いているAPPLE Logic ProとAVID Pro Toolsを使います。

 

それはバンドにとってかなり心強いですね。Haruyoshiに全員で集まって作るのですか?

荒谷 前作『明日は当然来ないでしょ』のときよりかは、Haruyoshiに集まって、セッションぽいこともしながらデモを作ったりする機会はありました。

田中 前作は途中コロナ禍の規制があってなかなか集まれなくて……だから荒ちゃん(荒谷)のデモを聴いて、各自でパートを考える時間が長かったよね。

斉藤 『遙かいま』は一緒に作れる時間が長かったですね。例えば「はっぴいめりいくりすます - at the haruyoshi/Take 5」はスタジオ・セッションで作っていて、「The Buzz Cafe」も僕がギターを弾きながら、それに合わせて荒ちゃんがKORG SV-1のエレピやシンセなどを重ねて作りました。それら以外は、全部荒ちゃんのデモから始まっています。

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yonawoのプライベート・スタジオHaruyoshiでKORG SV-1を弾く荒谷翔大

荒谷さんのデモはアレンジが作り込まれている?

斉藤 リズムと歌とコードだけのときもあるし、ほぼ完成形になっていてそのまま採用!みたいなときもあります。

荒谷 「sofu」「夢幻」とかはほぼそのままだったかな。

 

ソフト音源はGarageBand内蔵ものを?

荒谷 そうですね、シンセ・コードとか上モノ系はデモから生音に差し替えずに最後まで残していることも多いです。最近GarageBandはドラムもピアノもすごく音色が増えていて、めちゃくちゃ気合入ってるなって思います(笑)。

野元 ハイハットだけが並ぶパッチがあって、すごく便利だなって思う。

斉藤 まぁ、生音に差し替えないというときは、ソフト音源のチープな音をあえて生かしたい感じですね。

 

GarageBandのファイルが送られてきたら、そこに皆で手を入れていく?

斉藤 それよりもまずはアレンジの相談会をしますね。音作りについては、荒ちゃんもラフ・ミックスはしていますけど、生音に差し替えたものは皆で話し合いながら音色を決めて、エフェクトを考えたりします。

田中 例えばリズム・パターンとかをいじるのはスタジオのコンピューターを囲んで話し合いながらします。僕がベースを弾きながら“ここちょっとドラムのタイミング動かしてもいいですか?”みたいな交渉をしたり。

野元 僕も個人的に入れてほしい要素は相談したりしますが、基本的にはデモのビートに対して忠実にたたこうとしますね。荒ちゃんが持ってくるビートのフレーズはドラマー視点ではないからこそ、衝撃的なんです。例えば「恋文」の後半の各パートが変わってるところがあって、普通はスネアが表拍で来るのを一回ためて裏拍から来たり、さらに皆に合わせるためにその後ハットが打たれたり、意外なグルーブを考えてきたりする。実際にたたくのは結構難しいんですけど、聴くのは好きなんですよね。

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HaruyoshiデスクにはモニターのFOCAL Shape 65をセット。その下にはUNIVERSAL AUDIOのオーディオI/O、Apollo X8P、チャンネル・ストリップのUNIVERSAL AUDIO LA-610、マイクプリのAMS NEVE 1073LB、88RLBが見える

本チャン録りの前に、Haruyoshiでプリプロを作るような感じなのですね。

斉藤 いや、ギター、ベース、コーラスはHaruyoshiでほぼ本チャンをライン録りでしているんですよね。Haruyoshiはアパートなので、ノイズとか爆音のギターとかは録れないから、そういうのはスタジオで録っています。最近の音楽ではアンプからギターが鳴っている必要性をそこまで感じないんですよね。ビンテージのアンプなどで録った音は良いですけど、音もデカイし疲れるじゃないですか。ラインでも欲しい音は作れるし、機材も少なくて済みます。

 

ギターとベースにはアンプ・シミュレーターなどを使うのですか?

斉藤 そうですね。まずダブルで録るのですが、一方にはマイクプリのAMS NEVE 1073LBを通して、太くてウォームかつ有機的なサウンドにします。1073LBは音が柔らかくて中域がふくよかに持ち上がるから好みなんですよね。あとはDIもいろいろと試して、オーディオI/OのUNIVERSAL AUDIO Apollo X8PからPro Toolsに入れます。その後アンプ・シミュレーターのIK MULTIMEDIA Amplitube 4を通したりしますね。

 

ベースの録音でも同じですか?

斉藤 ベースはリアンプしたり……アンプ・シミュレーターは使いません。DIのACME AUDIO Motown D.I. WB-3や1073LBを経由してライン録りすることが多いです。

田中 リアンプは外部スタジオのAMPEG B-15を使いました。ジェームス・ジェマーソンみたいなモータウン・サウンドが作れるんですよ。Bassは10~11時、Midは12時、Trebleは1時くらいに設定します。曲によってはその後ロータリー・スピーカー・シミュレーターなどプラグイン・エフェクトをかけます。アレンジが固まっていく中で、ほかのパートに合わせてエフェクトを追加したりもしました。

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ボーカル録音時に使用するアナログ・ミキサーのSSL Sixと、メンバー全員所有しているというヘッドフォンAKG K240 Studioが見える

 

 

インタビュー後編(会員限定)では、 4人全員がDAWを使えるようになったというバンドでの楽曲制作の進め方や、ミックスで使用したプラグインを紹介していきます。

 

Release

『遙かいま』
yonawo
(ワーナーミュージック・ジャパン)

Musician:荒谷翔大(vo、k)、田中慧(b)、斉藤雄哉(g)、野元喬文(ds)
Producer:亀田誠治、冨田恵一
Engineer:岩谷啓士郎、牧野英司、冨田恵一
Studio:KVA Recording、サウンドクルー、アトリエ第Q藝術、ST-ROBO、Haruyoshi

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