UNIVERSAL AUDIO 6176 〜往年の610コンソール+リミッター1176LNの“良いとこ取り”

UNIVERSAL AUDIO 6176 〜往年の610コンソール+リミッター1176LNの“良いとこ取り”

宅録の機会が増えている昨今、高品位なオーディオ・インターフェースやマイクに次いで需要が高まっているのが、マイクプリにEQやコンプを兼ね備えるチャンネル・ストリップだ。この企画では、現在注目の4機種をピックアップし、プロデューサー/DJのWatusiとエンジニアの大西慶明氏が徹底レビュー。ボーカル・テストではシンガーの内田もあが協力してくれた。ここでは、UNIVERSAL AUDIO 6176のレビューを見ていこう。

Photo:Takashi Yashima (except*)

Overview|UNIVERSAL AUDIO 6176

 UNIVERSAL AUDIOの610コンソールを土台とするプリアンプと、1176LNを元にしたコンプ/リミッターを2Uにまとめた、モノラル仕様のチャンネル・ストリップ。マイクプリ部/コンプ部それぞれに入出力を備えているため、個別に使用することも可能だ。インピーダンス切り替えが可能なDIや、ポイント可変式2バンドEQも装備されているので、一台であらゆる録音に対応できる。

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(*)リア・パネル。左から、コンプ部のライン・イン、ライン・アウト(いずれもXLR)、入力インピーダンス切り替えスイッチ(15kΩ/600Ω)、1176LNとステレオ・リンクするための1176 SA端子、マイクプリ部のライン・アウト、ライン・イン、マイク・イン(いずれもXLR)

 SPECIFICATIONS 
■プリアンプ部のマイク入力インピーダンス:500Ω、2kΩ ■プリアンプ部の最大入力レベル:+18dBu(15dBパッド使用) ■プリアンプ部の最大出力レベル:+20dBm ■コンプ部の入力インピーダンス:15kΩ、600Ω ■コンプ部の出力インピーダンス:600Ω(フローティング) ■外形寸法:483(W)×89(H)×312(D)mm ■重量:5.5kg ■価格:オープン・プライス(市場予想価格:327,800円前後)

Watusi|レシオ“全部押し”モードも同じ質感

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 6176を用いると、ビンテージ的なすごく格好良い質感で収音できます。良い意味でくもった音になり、その“くもり方”が非常に音楽的。610らしさがマイクプリ部によく再現されています。また、ゲインは最大で65dB稼げるのでリボン・マイクも使えますね。ボーカルに試して面白いと思ったのは、声にかかったリバーブの質感まで“ビンテージ風”になったところ。マイクプリ部だけでこんなに味付けできるのは、6176ならではです。誰が歌っても、フランク・シナトラのような雰囲気のボーカル・サウンドが得られることでしょう。

 

 コンプ部は1176LNがモデルになっていますが、その中でも古いものを再現しているように感じました。リリース・タイムがとても速かったので、恐らくブルー・ストライプの初期型をイメージしているのではないでしょうか。だからなのか、リズム・マシンを通したときのキックが、本当に良いアナログ・サウンドで鳴るんです。シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノのキックをすぐに再現できます。レシオの“全部押しモード”も全く同じ質感でした。6176は、元となった両モデルの“良いとこ取り”をしたチャンネル・ストリップですね!

大西慶明|手軽にビンテージ感の演出が可能

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 6176はとても上質なビンテージ感あふれる音がします。同社の610コンソールを元にしたプリアンプ部はもちろん、コンプ部でも、レンジが濃縮された密度感のある音。“古き良き音”を再現したいときには、特に重宝するでしょう。

 

 用途としては、ボーカルやリード・ギターなどオケ中で前面に出したいパートに使うとよいです。また、歌に自信の無い人でも、6176へ通せばまとまりのある音になるため、ボーカルを上手に聴かせることができます。プリアンプ/コンプ部は意外とひずみにくい仕様になっているので、それこそあらゆる楽器の録音に向いていると思いますね。

 

 フロント・パネル左下にあるノブでは、マイク入力で500/2kΩ、DI入力で47k/2.2MΩと、インピーダンスを切り替え可能なので音作りにも使えます。コンプ部では本当に1176LNを使っているような感覚でした。またフロント・パネル中央にあるJOIN/SPLITスイッチで、プリアンプ/コンプ部を直列でつなぐか、分けるかを簡単に設定できるため、ここも高評価。近年は古き良きサウンドがまた注目されているので、手軽にビンテージ感を演出したい方にも、この6176はピッタリでしょう。

製品情報

 

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大西慶明
(写真中央)エンジニア。SONATA CLUB、equalize、TinyVoiceを経て2013年にprime sound studio formへ移籍。近年はAwesome City Club、中島美嘉、Uruなどを手掛ける

Watusi
(同右)COLDFEETのプログラマー/ベーシスト/DJとして、国内のみならず欧米やアジア各国でも多くの作品を発表。中島美嘉、hiro、安室奈美恵、BoAなどの楽曲をプロデュースしている

 

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内田もあ
北海道出身のシンガー・ソングライター。ライブ配信アプリの17LIVE(イチナナ)を中心にファンを増やし続け、2021年8月時点でのフォロワー数は約10万人に昇る

 

【特集】一点豪華主義でいくチャンネル・ストリップ

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