RUPERT NEVE DESIGNS Shelford Channel 〜名機に備わる独自技術を現代向けにアップデートした一台

RUPERT NEVE DESIGNS Shelford Channel 〜名機に備わる独自技術を現代向けにアップデートした一台

宅録の機会が増えている昨今、高品位なオーディオ・インターフェースやマイクに次いで需要が高まっているのが、マイクプリにEQやコンプを兼ね備えるチャンネル・ストリップだ。この企画では、現在注目の4機種をピックアップし、プロデューサー/DJのWatusiとエンジニアの大西慶明氏が徹底レビュー。ボーカル・テストではシンガーの内田もあが協力してくれた。ここでは、RUPERT NEVE DESIGNS Shelford Channelのレビューを見ていこう。

Photo:Takashi Yashima (except*)

Overview|RUPERT NEVE DESIGNS Shelford Channel

 マイクプリにはカスタム・トランスRN4012を使用し、最大で72dBのゲインを獲得。ハイパス・フィルターのほか、NEVEの1064や1073を手本とした3バンドEQを備える。また2254の設計に基づくコンプ部には、6種類の設定を選べるTIMINGノブや、コンプを通過した信号と原音をミックスできるBLENDノブを搭載。最終段には倍音を付加するSILKスイッチや、その効果を調整するテクスチャー・ノブ、VUメーターの表示を出力レベル/コンプのゲイン・リダクションから選べるスイッチを備えている。

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(*)リア・パネル。左から、グラウンド/リフト・スイッチ、ライン・アウト、−6dBのライン・アウト(共にXLR)、サイド・チェイン・イン×2、リンク端子×2(共にフォーン)、ライン・イン、マイク・イン(共にXLR)がレイアウトされている

 SPECIFICATIONS 
■入力インピーダンス:2.2kΩ ■最大入力レベル:+21.5dBu@150Hz〜22kHz、+8dBu@20Hz〜22kHz ■周波数特性:17Hz〜45kHz(±0.25dB) ■ハイパス・フィルター部のカットオフ周波数:20〜250Hz ■EQ:低域35/60/100/220Hz(±15dB)、中域220/400/900Hz/1.8/3.5/7.5kHz(±15dB)、高域:8/16kHz、±15dB ■外形寸法:480(W)×44(H)×260(D)mm ■重量:4.3kg(実測値) ■価格:オープン・プライス(市場予想価格:396,000円前後)

 

Watusi|入力するだけで“プロの音”に変化する

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 信号を入力するだけで、一瞬で音楽的なサウンドに変化します。もうこれだけで“プロの音”になるんです。EQ一つとっても抜けが良い。例えばキックにおいて、低域を上げるとウーファーがヒリヒリするような押し出し感のあるサウンドになるのですが、高域はマスキングされずにクリアなままで、本当に心地良い帯域だけをピンポイントにブーストしてくれる印象。ボーカルでは声の輪郭がはっきりして、オケ中に埋もれない音で録ることができます。

 

 コンプ部で面白いと思ったのはTIMINGノブ。コンプの設定が難しいと感じるクリエイターでも、これさえあれば曲に合う設定を選ぶだけなのでとても簡単です。そしてサチュレーションを備えたSILKボタンも最高。LEDが赤色に点灯する方が、中高域から高域にかけて音が抜けるので好みです。低域と中低域にかかる青色モード、オフ・モードと併せて3段階から選べる点も素晴らしい。Shelford Channelなら、一般的なマイクを使っていても最高級マイクで録ったようなサウンドに変身させることが可能です。ぜひ一度試してみてください!

大西慶明|イメージをすぐ音に反映できる操作性

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 これまでにも何度か使ったことがあるShelford Channelですが、まさにハイエンド・クラスの音。扱いやすいので、誰でもすぐに慣れることができるでしょう。最大+66dBブーストできるマイク・ゲインを備えていますし、20〜250Hzの範囲で動くハイパス・フィルターやEQはよく効きます。

 

 リズム・マシンのキックにおいて35Hzをブーストしたところ、ブーミーになり過ぎず、おいしい周波数帯域だけ持ち上げてくれます。これは中域/高域のEQでも同じことが言えました。“こうしたいな”と思ってShelford Channelを触ると、そのイメージをすぐ音に反映することができる印象です。

 

 コンプ部についても、非常にコントローラブル。たたきたい音だけたたくということもできれば、全体的に滑らかにたたいて音圧を稼ぐことも可能です。あと、原音とコンプがかかった音のバランスを調整可能なBLENDノブも最高。プラグイン・コンプにはよくある機能ですが、実機に付いているというのがなかなか便利です。SILKボタンの効果も抜群で、“音作りの速さ”はピカイチ。音に癖も無いため、まさに万能チャンネル・ストリップと言えます。

製品情報

 

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大西慶明
(写真中央)エンジニア。SONATA CLUB、equalize、TinyVoiceを経て2013年にprime sound studio formへ移籍。近年はAwesome City Club、中島美嘉、Uruなどを手掛ける

Watusi
(同右)COLDFEETのプログラマー/ベーシスト/DJとして、国内のみならず欧米やアジア各国でも多くの作品を発表。中島美嘉、hiro、安室奈美恵、BoAなどの楽曲をプロデュースしている

 

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内田もあ
北海道出身のシンガー・ソングライター。ライブ配信アプリの17LIVE(イチナナ)を中心にファンを増やし続け、2021年8月時点でのフォロワー数は約10万人に昇る

 

【特集】一点豪華主義でいくチャンネル・ストリップ

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