
モデリングではなくオリジナルの設計
コンプのブレンド・ノブや“SILK”を搭載
Shelford Channelは、クラシック・コンソール・モジュールやビンテージ・アウトボードのモデリングではなく、完全なオリジナル設計となっています。フロント・パネルを見ていきましょう。左から、まずはインプット・セクション。6dBステップ/12段階で、最大+66dBブーストできるプリアンプ・ゲインと±6dBのトリムを備えています。またスイッチで入力レベルを切り替えられ、マイク/DIやラインの入力に対応します。トリム・ノブの右隣には、ハイパス・フィルターのノブを配置。このハイパス・フィルターは、カットオフ周波数を20〜250Hzの範囲で任意に変えられます。
インプット・セクションの右側には、3バンドのEQセクションがスタンバイ。ローはシェルビング/ピーキング切り替え式で、4つのポイント(35/60/100/220Hz)から目的のものを選んで±15dBのゲイン調整が行えます。ミッドはピーキングで、6つのポイント(220/400/900/1.8k/3.5k/7.5kHz)を選択可能。ゲイン・レンジは±15dBで、Q幅を狭められるMID HI Qスイッチが備えられています。ハイはローと同様にシェルビングとピーキングを切り替えられ、2つのポイント(8/16kHz)をスイッチで選ぶ仕様。ゲイン・レンジはやはり±15dBです。
EQセクションの隣はコンプレッサー・セクション。スレッショルド(−25dB〜+20dB)、レシオ(1.5/2/3/4/6/8:1)、アウトプット・ゲイン(−6〜+20dB)などのほか、タイミングというノブを装備。これはアタックとリリースのタイムの設定で、ファストからスローまでの5段階にオートを加えた6種類が用意されています。これの右側には、先のEQの前段でコンプを動作させるためのPRE EQスイッチ、選んだタイミングのアタック/リリース・タイムを速めるFASTスイッチをレイアウト。
そのほかハイパス・フィルターのアウトをキー・インできるHPF to S/C、リアのサイド・チェイン・インに入った信号をコンプにキー・インするためのS/C INSERT、ほかのShelford ChannelとリンクさせるためのLINKといったスイッチが装備されています。そして特徴的なのはブレンド・ノブ。原音とコンプのかかった音のバランスを調整でき、右に振り切るとコンプのサウンドだけになります。
コンプ・セクションの右隣には、これもまた本機の特徴であるSILKスイッチ(オフ/RED/BLUE)と、その効果をコントロールできるテクスチャー・ノブ、VUメーターに表示するものを出力音量とコンプのゲイン・リダクションから選べるスイッチを配置。SILKスイッチではサチュレーションによる倍音を付加でき、REDにすると中高域から高域に、BLUEにすると低域と中低域にかかります。
本機は、標準状態でパネル左から右に向かって信号が流れるように設計されていて、マニュアル要らずと言っていいデザインです。またハイパス・フィルター/EQ/コンプにはイン/アウトのスイッチが配置されて、必要に応じてオン/オフが行えます。入出力については、フロントにハイインピーダンス・ソース用のDIインプットとその入力をパッシブで出力するスルー・アウトを装備。リアにはXLRのマイク・イン、ライン・イン、ライン・アウトと−6dBのライン・アウト、リンクやサイド・チェイン用の入出力も備えられています。そしてリアの電源部に電源スイッチがあるのも面白い設計ですね。
スピード感があり周波数レンジがワイド
現代に合わせたEQポイントの設定
ではNEVEのビンテージ・モジュール、1073および33115と比べたときのインプレッションを書きます。本機は予想以上にスピード感のある音で、中低域が野太い印象。カラーは1073より33115に近く、少しだけタイトな感じです。周波数レンジは若干広めに感じますが、これは現代のワイド・レンジな音場を考えての設計でしょうか。S/Nはビンテージとは比較にならないほど良いです。
各セクションを見ていきます。まずはフィルターとEQ。EQの周波数ポイントは、1073を下敷きにして、現代風にデザインし直したものでしょう。マイクでのボーカル/楽器収音時にアシストが必要なポイントを押さえていますね。またビギナーが音作りする際には、お手本になる周波数だと思います。フィルターは大変効きが良く、録音環境の悪い場所や自宅などでは大いに使えそう。調べてみるとスロープが−12dB/octなので、効きが良いはずです(一般的には−6dB/octであることが多いと思います)。
次にコンプ。さまざまな設定を選べますが、個人的には少し遅め&浅めのかかり具合が、自然な印象でお気に入り。また極端にコンプレッションした音と原音をブレンド・ノブで調整すれば、音全体のダイナミクスを損なうことなくディープなコンプ・サウンドを演出できます。
最後にSILKスイッチ。オールドNEVEのマイクプリで得られるような心地良いサチュレーションが付加されるので、まさにシルキーなサウンドに。テクスチャー・ノブは上げ過ぎに注意です。絞り気味の設定が自然でお勧め。
Shelford Channelは、新旧の技術が1Uの中に封じ込められた機材で、実にワクワクします。“これでドラムやピアノ、ストリングスを録ってみたい。一体何ch分必要になるだろう?”と妄想がわきますね。その意味でもコンソール・モジュールのようなのです。チャンネル・ストリップとして十分にお薦めできる一台!

