「SLATE MEDIA TECHNOLOGY Raven MTI2」製品レビュー:低価格化と機能向上を実現したマルチタッチ液晶コントローラー

SLATE MEDIA TECHNOLOGYRaven MTI2
マルチタッチ操作が可能な液晶ディスプレイ・コントローラーRaven MTIの登場は、その独創的なアイディアで我々音楽クリエーターを驚かせました、今回はその進化版とも言えるRaven MTI2をレビューします。

初代の半額以下となり軽量化も達成
タッチの反応や検出精度も向上した印象

初代MTIは発売当時の実売で31万円前後でしたが、MTI2では半額以下と大幅にプライス・ダウン。APPLEの27インチ・ディスプレイと同程度の価格帯に収めたのは驚異的です。初代の重量のある金属筐体に対してMTI2はより軽量な樹脂筐体を採用し、初代と同じ27インチながら設置性や可搬性が向上しました。

また付属ソフトウェアが3.0とバージョン・アップしました。初代のコントロールをつかさどっていたのはNEYRINCK Neyfiという名称のソフトでしたが、これが同社V Control Proと名前が変わり、マルチタッチ・ドライバーもUPDDにアップデートされ機能が向上しています。そのほか、新機能としてボタン操作一つで複雑な操作を自動化できるBatch Commandsを装備。画面下部に表示されるRaven Tools BarsでのToolbar Flipや、カスタマイズ可能な2つのFloating Toolbarsが装備されるなど、さまざまな機能が向上しています。

やはり気になるポイントはコスト・ダウンの影響が性能に影響しているかどうかですが、画面のタッチ感などはむしろ向上しているようです。以前テストした初代に比べ表面のコーティングが改良され、指先の潤滑性が向上し、操作がしやすく感じました。指先の動きの検出精度も上がっている印象です。初代に比べて全体的に性能が向上した進化版であると言えるでしょう。

記録した設定をボタン一つで実行
マルチタッチ対応DAWではさらに便利に

AVID Pro Toolsでは、MTI2をHUIプロトコルのフィジカル・コントローラー×3台分として認識させます。マルチタッチの情報をHUIプロトコルに変換しDAWを操作する仕組みは、初代と変わらないようです。

新機能のBatch Commandsはトラックの名称変更や、クリップを分割してクオンタイズなど複数の操作をまとめて効率よく実行できます(画面①)。これはカーソルやキーボードの操作を記録する仕組みです。例えばボーカル録りの準備をするとして、トラック作成→名前を付ける→トラック・カラーを黄色に→キュー送りとリバーブのセンドを立ち上げる……といった操作をあらかじめ記録し、Raven Toolsbarsのボタン一つで完了することが可能。このような操作を記憶したBatch CommandsプリセットがDAWごとに100種類付属していて、作業の効率化に非常に役立つと感じました。

▲画面① よく使う一連の操作を、1つのボタンで実行可能。ズーム・イン/アウトなどの1ボタン操作であっても使用頻度の高いものはバッチとしてまとめられている ▲画面① よく使う一連の操作を、1つのボタンで実行可能。ズーム・イン/アウトなどの1ボタン操作であっても使用頻度の高いものはバッチとしてまとめられている

ユニークなのはRaven Set Up Buttonsで、これはRaven MTI2を使用するにあたって必要な初期設定……例えばBatch Commandsを使用するにあたり、Pro Tools初期設定の中の“プラグインメニュー整列”で“種類と製造元”を選択する必要がありますが、そのような設定が自動的に行えるというもので、セットアップの確実性が向上します。

続いてAPPLE Logic Pro Xでの操作もテストしみました。DAWのミキサー画面の上にRavenミキサーをかぶせて表示するInternalMixerモードではなく、Floating Mixerをテストしてみたところ、机上のスペースをフィジカル・コントローラーに占められることなくフェーダー操作可能な点が非常に快適でした。またMIDIデータ入力の際、ピアノロール画面を直接指で触って音符を入力できることで、マウス入力などとはまた違ったパターンが発想されることを実感しました。

Pro ToolsとLogicは初代でも対応していましたが、MTI2ではABLETON Live 9、STEINBERG Cubase 8、Nuendo 7、PRESONUS Studio One 3、Digital Performer 8/9と多くのDAWに対応しました(日本国内代理店のサポートはPro Toolsのみ)。中でもStudio One 3はDAW自体がマルチタッチに対応なので、純正のプラグインも複数のパラメーターをマルチタッチで同時に操作可能です。これはなかなか面白いのでぜひ試してみてください。

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Raven MTI2は導入しやすい価格と、ソフトのバージョン・アップ、特にBatch Commandsによる操作の自動化が装備された点が大きく、以前にも増して快適な操作性を実現したコントローラーと言えるでしょう。

▲背面下部にある接続端子。左からUSB、HDMI、VGA、オーディオ入力(ステレオ・ミニ:内蔵ステレオ・スピーカー用)、ヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)、DC入力 ▲背面下部にある接続端子。左からUSB、HDMI、VGA、オーディオ入力(ステレオ・ミニ:内蔵ステレオ・スピーカー用)、ヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)、DC入力

サウンド&レコーディング・マガジン 2017年1月号より)

SLATE MEDIA TECHNOLOGY
Raven MTI2
オープン・プライス(市場予想価格:125,000円前後)
▪モニター:LED27インチ・グレア ▪画面解像度1,920×1,080(フルHD) ▪映像入力方式:HDMI、VGA ▪視野角:178°(10~55°チルト) ▪マルチタッチ:最大10点 ▪外形寸法:654(W)×411(H)×52〜430(D)mm ▪重量:6.5kg REQUIREMENTS ▪Mac:OS X10.7〜10.11、INTEL Core I5 2.5 GHz以上のプロセッサーを推奨、・8GB以上のRA Mを推奨、INTEL HD 4000グラフィック・カード(512MB VRAM)、iLok2