注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞く本連載。今回はKORG NautilusとOpsixを紹介する。Nautilusは同社が誇る高品位なサウンド・エンジンを多数搭載したミュージック・ワークステーション。Opsixは6オペレーターを本体のノブやスライダーで直感的にコントロールできるFMシンセだ。NautilusとOpsixの実力について、KORGの今泉泰樹氏とRock oNの伊部友博氏に語っていただく。
Photo:Takashi Yashima(メイン)
Nautilus
242,000円(61鍵)、286,000円(73鍵)、330,000円(88鍵)
●まずはNautilusについてお聞きします。パソコンでの制作が一般的になっていますが、その中で新たなミュージック・ワークステーションをリリースした理由は?
今泉 まずは、ライブにおいてキーボーディストのパフォーマンスを格好良く見せてあげたいという思いがあり、デザイン性にこだわって開発したということが挙げられます。また、KORGとしてこれまで培ってきた音源やエフェクトの資産がかなりありますので、それらを見直してアップグレードし、トップ・クラスのエンジンを搭載しながらコンシューマーの方にも扱いやすい制作システムになることを考えました。
伊部 一台の中で制作を完結する楽しさというのはありますからね。Nautilusというと潜水艦が思い浮かびますが、そこから来ているのですか?
今泉 はい。例えば、パラメーターをコントロールするときに使う6つのRTノブがパネルにありますが、使わないノブは押すことで本体に収納することが可能です。また、本体下のパネルは側面からのカーブが特徴的なデザインになっており、そういった部分に潜水艦のイメージが投影されています。
●多機能なため操作が複雑になりそうですが、Nautilusはタッチ・ディスプレイやノブによってシンプルさをキープしている印象です。
伊部 操作性については、NanoPadなどをつなぐことで拡張ができるという考え方が面白いと感じました。
今泉 パネルをごちゃごちゃとさせるよりもシンプルさを保っておき、より深く使っていきたい人は拡張できるように可能性を残した設計になっています。
伊部 ベロシティに対する反応具合を変えるダイナミックス・ノブも便利ですね。鍵盤のタッチは重い方が良いと言われたりしますが、制作で一日中弾いているときなどは指への負担も大きい。軽く弾いても鳴ってくれるのはうれしいです。
今泉 ベロシティ・カーブは、ダイナミックス・ノブによって単に上下するのではなく、強いタッチのときと弱いタッチのときで違いがあり、現実的な反応になるよう調整されています。音源によってもタッチの感覚は変わってくるので、その部分を合わせる際にも活用できると思いますね。
●アコースティック・ピアノ音源のSGX-2や、アナログ・モデリング音源のPolysixEXとMS-20EXなど、9種類もの音源を搭載しているのもトピックです。さらにユーザーによるサンプリングにも対応し、大容量SSDを使って膨大なライブラリーを構築することもできますね。
伊部 AIFFやWAV、SoundFont2.0以外にAKAI S1000/3000フォーマットのサンプルも読み込めるんです。制作歴の長い方であればAKAIのサンプル・データをたくさん持っているだろうし、それを読み込めるのはニッチだけれど良心的な部分だと思います。
●制作だけでなくライブ・ステージで使うなど、持ち運ぶ方も居ると思いますが、重量はどのくらいなのでしょうか?
今泉 88鍵モデルで23.1kgです。ピアノ・タッチのものは物理的に重りが必要となるため、ある程度限界は生まれるのですが、全体のパーツの見直しによって軽量化ができました。
伊部 軽いですよね。僕が持っていたKORGのミュージック・ワークステーション、01/W ProXは35.2kgだったので、比べると12kgほど軽い。ステージ・キーボードとして使うことを考えるとうれしい重量です。また価格面においても、88鍵モデルでも33万円と抑えられているのも良い。DAWを使ったパソコンでの制作では、ソフトを立ち上げて各種設定をしてから作る……という面倒さはあると思いますし、その間にアイディアが飛んでしまうこともあるでしょう。Nautilusを立ち上げて演奏しながらすぐにスケッチできるというのは強みですよね。USBオーディオ/MIDI I/O機能も備えていますし、DAWに録音していくことも可能です。プロからコンシューマーまで、幅広い層がハイクオリティな音楽制作を行える製品だと思います。
Opsix
95,700円
●続いてはOpsixについてです。シンプルなFMシンセシスだけでなく、多彩な音作りが行えるシンセになっています。サウンドの印象はいかがですか?
伊部 一言で表すなら、“FMの美しいひずみ”です。FMのデジタルなひずみは冷たいと言われたりしますが、Opsixはアナログのような音の太さがあり、アナログ・モデリングのフィルターを通ることで濃密な響きになります。キラキラしたFMらしい音だけでなく、有機的なサウンドも作り出せるんです。美しさと激しさを兼ね備えた、音楽的なサウンドをもたらしてくれるシンセですね。
今泉 Opsixは5つのオペレーター・モードを備えており、6オペレーターを駆使しなくとも、1オペレーターで十分なサウンドを得ることが可能です。6つ分を使うことにより、さらに高みを目指せるようになっています。FMの音作りは難しいものですが、Opsixでは1オペレーターで美しい波形を出すこともでき、皆さんが親しみのあるアナログ・シンセのようにフィルターを各オペレーター+マスターで使うことができます。知っている知識とFMの複雑さを行き来して楽しめるのがOpsixの良いところです。
●ノブとスライダーによる直感的なコントロールと、LEDカラーでの視認性の高さが音作りのしやすさに寄与していますね。
伊部 キャリアとモジュレーターの関係性がすぐに分かります。いろいろなアルゴリズムが用意されていますが、この色のオペレーターがどういうふうに影響しているのかが視覚的にとらえやすいです。ディスプレイにはスペクトラム・アナライザーやオシロスコープも表示されるので、波形として確認できるのも良いですね。変調の影響がリアルタイムに確認できるのは面白いです。
●FMシンセシスでの変調だけでなく、エンベロープやLFOでモジュレーションを行えるのも、幅広い音作りができるポイントです。
伊部 12系統ものルーティングができるバーチャル・パッチが素晴らしいです。モジュラー・シンセのような音作りが行えます。二度と同じ音が出せないのではないかというサウンドが作れる。音楽的な美しさとは対極にある、一期一会で破壊的なサウンドも生み出せるシンセです。
●ランダマイズ機能も音作りに新たな楽しさを加えていると感じました。
今泉 これこそ一期一会な新たなサウンドを生み出せる機能です。ボタンを押すたびに違った音が出てきて、誰でも楽しめると思います。
伊部 ランダマイズによって周波数が低くなり過ぎて、一瞬音が出なくなったりもするのですが、それも正直で良いですね。本当にランダムになっているのが伝わってきます。
今泉 パラメーターに及ぶ範囲を狭めて、ランダマイズの程度を変えることも可能です。
●KORGからはMinilogue XDをはじめ、Modwave、Wavestateと、コンパクトかつ多機能なシンセが続々と登場しています。今後、KORGのシンセに期待したいことはありますか?
伊部 Minilogue XDの時点で、“こういうシンセって良いな”と感じていました。今回のOpsixでは、僕としては攻めた音が作れる、一歩先を行ったシンセだと感動しましたし、Nautilusも音楽を作りたくなるミュージック・ワークステーションになっていると思います。これからも、制作意欲を刺激してくれるプロダクトがどんどん出てきてほしいですね。
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