Kuniyuki Takahashiが語る 最新ライブ・セットのすべて 〜NATIVE INSTRUMENTSのハード&ソフトウェアは ライブにおいても間違いなく即戦力となるツールです

 

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札幌を拠点とし、世界を舞台に活躍する音楽プロデューサーのKuniyuki Takahashi。国内外のレーベルよりオーガニックなハウスからアンビエント作品まで多彩なリリースを誇る彼が、このたびNATIVE INSTRUMENTS(以下NI)の製品を中心に自身のライブ・セットを一新したという。導入したのは、オーディオI/OのKomplete Audio 6 MK2とキーボード/コントローラーのKomplete Kontrol M32、そしてソフト音源のMassive XとKontakt 6だ。どれも多くのクリエイターから支持されているNI製品だが、なぜKuniyuki Takahashiはこれらを選んだのだろうか。彼の最新ライブ・セットの内容と共に、その理由をひも解いていこう。

 

Kuniyuki Takahashiが見せる
最新ライブ・セットを駆使した演奏動画はこちら!

 

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スーツケース1つにまとめられる
コンパクトなサイズ感がポイント

 そもそもKuniyuki Takahashiが、現在のようなリズム・マシンやコンピューターを使ったライブ・パフォーマンスを始めたのは2007年ごろだと言う。そのきっかけについてKuniyukiへ話を聞いた。

 

 「自分の楽曲を、DJというスタイルではなく“ライブ・セットで再現できたらいいな”というところからスタートしました。最初は楽曲の各パートをオーディオに書き出して再生していたのですが、ライブを続けていくとあまり面白みが無いと感じることも多かったのです。そこで、さらに楽曲を展開させたり、オーディエンスの反応にもその場で対応できる“即興性”を重視し始めました。いかに即興でうまく演奏を変えられるのか、またはゼロの状態からどこまで即興で楽曲を構築することができるのか。これらについて追求し続け、必要があればライブ・セットも更新してきたんです。最新のライブ・セットではこれらがよりスムーズに行えます」

 

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Kuniyuki Takahashiの最新ライブ・セット。写真左下にはキーボード/コントローラーのNATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol M32が、APPLE MacBook Proの左側にはオーディオI/OのKomplete Audio 6 MK2が配置されている。またMacBook Proの画面には、ソフト・シンセのMassive Xがスタンバイ。写真左上に見えるリズム・マシン以外は、すべてMacBook ProのUSBバス・パワーで駆動している

 

 即興でパフォーマンスすることの魅力について、Kuniyukiはこう語る。

 

 「会場に居た人たちとしか体験することができない特別な瞬間が生まれるんです。そこには演奏者にとってもオーディエンスにとっても、同じ空間をシェアしている人たちにしか分からない感動があり、それを実感できたとき、即興パフォーマンスをやる一番の醍醐味を感じます

 

 近年もほぼ毎週のように国内外のイベント会場でパフォーマンスを行ってきたKuniyukiだが、2020年の初頭からはスタジオで過ごす時間が増えたため、これを機に今までのライブ・セットを一新したという。

 

 「今回NIのオーディオI/O、Komplete Audio 6 MK2やキーボード/コントローラーのKomplete Kontrol M32などを新しく導入し、セットを組み直しました。ここでのポイントですが、1つ目はスーツケース1つにまとめられること。私の拠点は札幌なので、移動には主に飛行機を使います。国内線だと手荷物許容量は20kgまで無償なので、やはりコンパクトな方が便利です。また海外への渡航時には、スーツケースの紛失や移動中に機材が故障する場合は少なくありません。そのため、現地でも“代わりの機材が調達可能かどうか”というところもポイントなのです」

 

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Komplete Kontrol M32。8つのタッチ・センサー式コントロール・ノブは、NIのソフト音源やプラグインのほか、Native Kontrol Standard(NKS)対応のサード・パーティ製プラグインも操作が可能だ

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Komplete Audio 6 MK2は、24ビット/192kHzの録音/再生に対応し、最大6イン/6アウトの入出力を装備。またヘッドフォン出力を2系統搭載し、それぞれボリュームのコントロールが行える。2系統のマイクプリでは48Vファンタム電源供給も可能

 

 続けて“電源周りもコンパクトにまとめられるか”というのも大切だと、Kuniyukiは話す。

 

 「国によって電圧が違うのはもちろん、会場の電源環境やコンセント形状も異なるので、電源の数が少ない方が変換プラグの用意も少なくて済みます。新しいライブ・セットでは、APPLE MacBook Proとリズム・マシンの2つしか電源を使いません。そのほかの機材は、すべてUSBバス・パワーで駆動させています。これならパフォーマンス中に何かがケーブルに引っかかって電源が落ちたとしても、MacBook Proが生きているので問題ありません。また、もしリズム・マシンが鳴らなくなってもDAW内に立ち上げたソフト音源でリズムを鳴らせるので安心です。約13年間、さまざまな場所でパフォーマンスしてきた経験に基づく知恵がこのライブ・セットに凝縮されています」

 

Komplete Kontrol M32の8つのノブで
主要パラメーターを自動マッピング 

 Kuniyukiのライブ・セットを見てみると、先述したMacBook Pro、Komplete Audio 6 MK2、Komplete Kontrol M32のほかに、リズム・マシンが1台とMIDIコントローラーが2つある。それぞれどのようなシステムになっているのか、Kuniyukiが解説してくれた。

 

 「ライブでの流れを簡単に説明すると、まずDAWではABLETON Liveのセッションビューのみを使います。ディレイとルーパーがインサートされた録音専用のチャンネルで、Live上のソフト音源や、マイクで収音した外部の音をレコーディングします。そして、そこでできたオーディオ素材を8つのオーディオ・トラックにあるクリップ・スロットに追加していき、音楽を構築していくのです。ビートはリズム・マシンで鳴らしています。Komplete Audio 6 MK2のch1にはマイク、ch3〜4にはリズム・マシンを入力。マイクでは身の回りにある音や民族楽器などを録音することが多く、マイクのヘッドをたたいてキックの音を作ったりすることもあります。ch2は予備で空けてあり、急きょセッションすることになったボーカルをはじめ、パーカッションなどの楽器入力用となっているのです

 

 ライブ・セットにはKomplete Kontrol M32を含むMIDIコントローラーが3台備えられているが、これらはどのように使い分けているのだろうか。

 

 「主にKomplete Kontrol M32では、ソフト・シンセのMassive XやFM8、ソフト・サンプラーのKontakt 6などを演奏しています。8つのタッチ・センサー式コントロール・ノブが、読み込んだソフト音源の主要なパラメーターを自動でマッピングしてくれるので、音色を容易に変更できて便利です。Komplete Kontrol M32の右隣にあるAKAI PROFESSIONAL MIDI Mixでは、Live内蔵のアルペジエイター、各チャンネルのフェーダー、FM8のパラメーターなどを制御。またMacBook Proの手前にあるKORG NanoKontrolでは、録音ボタンやAUXに立ち上げたリバーブのパラメーター、各チャンネルのミュート/ソロなどをアサインしています」

 

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ソフト・シンセNI Massiveの後継となるMassive X。170種類以上のウェーブテーブルを備えた2基のウェーブテーブル・オシレーターによって、独創的なサウンドやテクスチャーを生み出すことができる。また一新されたルーティング・セクションでは、複雑なシグナル・パスを直感的に構築することが可能となった

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Kuniyukiがピアノや民族楽器などのパートで使用するというソフト・サンプラー、Kontakt 6。画面には、KontaktライブラリーのWest Africaが映し出されている

 

最大6イン/6アウトの入出力を備える
Komplete Audio 6 MK2 

 Kuniyukiは、今回新しく導入したKomplete Audio 6 MK 2とKomplete Kontrol M32についてこう語る。

 

 「もちろん両者ともUSBバス・パワーで駆動することと、コンパクトなサイズ感がポイントです。また、以前使っていたオーディオI/Oは2イン/2アウトでしたがKomplete Audio 6 MK2は最大6イン/6アウト。今回のようなセッティングでも余裕ができてうれしいです。24ビット/192kHzの高音質でオーディオ録音ができますし、遅延も気になりません。モニタリング用のヘッドフォン出力は2系統を備えているため、ミュージシャンとセッションする際にも役立ちます。またKomplete Kontrol M32に搭載された8つのノブには任意のパラメーターをアサインすることもでき、最大4ページまで記録が可能なので、実際かなり応用が効きますね。鍵盤のタッチ感は心地良いですし、フット・スイッチを接続できるのも高評価です。私はこれでLiveの録音開始/停止を制御しています」

 

 では、ソフト音源はどのように使用しているのだろうか?

 

 「Massive Xではモジュレーションを駆使した細かいシンセの音作りができるので、オリジナル・プリセットを考えるのがとても楽しいです。FM8では80種類近くの音色を作ったのですが、Massive Xではこれを超えそうな勢いですね。Kontakt 6では主にピアノや民族楽器などを鳴らしていて、曲にオーガニックな雰囲気を取り入れたいときに重宝していますし、何より音が良いです。この2つのソフト音源があれば、ライブ時に曲がどの方向に転んでも対応できるでしょう。これまでのソフト音源の中には、音色を変えたときに音が途切れたりするものもあったのですが、Massive XとKontakt 6においてはそれが起きていないので、ライブでも非常に安心して使えます

 

 最後にKuniyukiは、コンピューターを交えたライブ・セットを構築している、またはこれから構築したいと考える読者に向けてこういったメッセージを送ってくれた。

 

 「今回導入したNIのハードウェア/ソフトウェアはとてもお薦めです。なぜなら、私はこれらを約1カ月間かけてあらゆる角度からじっくり検証しました。これらは長時間の連続使用でも十分に耐え、クラッシュすることもありません。間違いなくタフで、ライブにおいても即戦力となる優秀なツールと言えるでしょう」

 

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NATIVE INSTRUMENTS製品に加えて、マスタリング向けプラグイン・エフェクトであるIZOTOPE Ozone 9のDynamic EQもライブで使用。Kuniyukiは、パフォーマンス前にクラブやイベント会場のフロアで音を確認し、マスター・バスにインサートしたDynamic EQで各周波数帯域を調整しているという。短いリハーサル時間でも、フレキシブルに対応できる操作感が魅力だとのこと

 

Release

open.spotify.com

 

NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol M32

15,800円(税込)

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製品情報

www.native-instruments.com

www.native-instruments.com

 

www.native-instruments.com

www.native-instruments.com

www.izotope.jp

 

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