
iOS機器との接続時も
バス・パワーで駆動
MIDIキーボードはもちろん、オーディオ・インターフェースやマイクなど豊富なラインアップをそろえるIRigシリーズですが、意外にもパッド型MIDIコントローラーは、このIRig Padsが初の製品となります。その主な特徴を以下にリスト・アップしてみました。
①4×4(16個)の自照式パッド
②アサイナブルなノブ/ボタン×2、スライダー、プッシュ機能付きロータリー・エンコーダー、エクスプレッション/サステイン・ペダル接続端子
③iOSおよびMac/Windowsに対応
④MIDIイベントのマッピングを16の“シーン”として保存可能
⑤iOSデバイスやコンピューターからのバス・パワーで駆動
⑥150種類のMIDIパターンと400音色/6.5GBのライブラリーを持つSampleTank 3 SEと、本機を念頭にデザインされた300MB以上のライブラリー『The Grid』を無償で使用可能
ユーザーとしてはまず、③のiOSとコンピューターに両対応しているのがうれしいところです。早速iPhoneで同社がフリーウェアとして提供しているSampleTank Freeを鳴らしてみましたが、付属のケーブルで接続するだけで何の設定もせず、すぐ演奏できました。ほかにもiPhone/Macの両方の環境でAPPLE GarageBandなどを使ってチェックしてみましたが、本機はデフォルトでGM並びのシーンが立ち上がるので、接続するだけでほとんどのドラム音源を鳴らせました。2番目にプリセットされているクロマチック(半音並び)にすれば音階も演奏できます。
先述した即戦力のライブラリーが用意されているので、購入してすぐに制作に取りかかれるのもビギナーにはうれしいポイントです。ちなみに同社は多くのiOS用音楽アプリを無償でリリースしているので、それらを試しながら自分に合った制作環境を模索するのも楽しいと思います。
“思わずたたきたくなる”
絶妙なサイズと安定感
このように機能/スペックをカタログ的に眺めてみると、iOSへの対応など現代的なニーズを的確にとらえてバランス良くまとまっているものの、少々意地の悪い見方をすれば、パッド付きMIDIコントローラーとして後発機種の割には分かりやすい特徴が少ないようにも見えます。が、実はIRig Padsの一番の特徴は、カタログ・スペックに現れにくいところにあるのです。
それは本機の“絶妙なサイズと重さ”です。モバイルを重視した製品なので持ち運びが容易なのは当然ですが、ドラム・パッドはたたいて演奏するわけで、鍵盤以上に“安定感”が必要となります。この矛盾した条件を絶妙なバランスで両立させているのが本機の特徴であり、一番の魅力なのです。手で持つと従来の製品よりも一回り小さく軽いのですが、デスクの上に置いてたたくと重量以上の安定感があります。膝の上に乗せてたたくのも快適で、“場所を選ばず”という言葉がぴったりのフットワークの軽さがあります。
モバイル性を高めるため、搭載されている操作子はほかの製品より数が少ない分、パーツが厳選されている印象。直接音には関係ありませんが、デザインが細部にわたってイタリアらしくしゃれているのも、本機の魅力でしょう。
ノブなどの配置を含め総合的な重量バランスに優れたボディに、丁重に表面処理された触り心地が良いパッドが搭載されたIRig Padsは、たたき心地にシビアなトラック・メイカーも満足できる製品だと思います。“たたきたくなる”というのはパッド付きMIDIコントローラーにとって一番重要なポイント。本機をぜひ一度手に取って、たたいてみることをお勧めします。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年4月号より)