「YAMAHA Vocaloid4 Editor」製品レビュー:新機能が加わったWindows向け歌声合成ソフトの最新バージョン

YAMAHAVocaloid4 Editor
世界中から注目を集めている歌声合成ソフトウェアYAMAHA Vocaloidの約3年ぶりの新バージョン、Vocaloid4 Editorが発表されました。本製品はWindowsで動作するスタンドアローン・アプリケーションです。Vocaloid4専用ライブラリVY1V4(オープン・プライス/市場予想価格:10,000円前後)を使用して新機能を中心にレビューしたいと思います。

ピッチの動きを実線で確認
歌声を混ぜてオリジナルの声を生成

早速、新機能をチェックしていきましょう。まず筆者が注目したのは“ピッチ・レンダリング”。これは、トラック上に入力された歌声のピッチのつながり具合やビブラートのかかり具合を視覚的に確認できる機能です。前バージョンでそうした部分のピッチを確認するには、耳での聴き取りやピッチ検出ソフトなどを使うしかありませんでした。しかし、今回追加されたピッチ・レンダリング・アイコンをクリックすると、ノート上に歌声同士をつなぐラインが表示されるので、それを見ながらピッチの変化やしゃくり上げの深さ/タイミングなどを調整できます。ノート間のポルタメントだけでなく、これまで分かりにくかったピッチに関するコントロール・パラメーターの効き方や、ビブラートの振幅/周期も見えるので、より詳細な調整が可能です。

次は“ピッチ・スナップ・モード”。これはピッチ変化を完全にフラットにして、いわゆる“ケロケロ・ボイス”を簡単に作り出す機能です。Vocaloidの歌声はケロケロ加工した声との相性が非常に良いのですが、これまでVocaloid Editorだけでケロケロ・ボイスを作るには外部のプラグインを使う必要がありました。しかしこの機能によって、今後は誰でも気軽にケロケロ・ボイスに挑戦できそうですね。

そして“グロウル”は、これまで再現が難しかった“うなり声”を表現できる機能です。コントロール・パラメーターとして使用でき、値を上げていくと、のどがゴロゴロと鳴っているかのような歌声に変化します。歌い出しの部分にアクセントを付けたり、奇麗すぎる発音を“汚す”ように使うなど、さまざまな場面で役立ちそうです(ただし、この機能はVocaloid3以前の歌声ライブラリーでは使用できません)。

次は“クロス・シンセシス”。これは、複数の歌い方が収録されているライブラリー同士を滑らかに切り替えられる機能で、Vocaloid3のライブラリーを使うことも可能です。シンガー・エディター画面で“プライマリシンガー”と“セカンダリシンガー”を選び、コントロール・パラメーターで調整します。歌っている途中でも別の歌声に切り替えることが可能になったので、徐々に力強い声にしたり、ささやき声に変化させたり、声の組み合わせや調整具合によっても表現の幅はぐんと広がります。また、ライブラリーの切り替えだけでなく、2つのライブラリーをブレンドすることで新たな声を生み出せるようになったのもうれしいです。

VY1V4で4種類の歌声が手に入る
個性表現の可能性が大幅に拡大

別売の歌声ライブラリー、VY1V4にも触れておきましょう。VY1V4にはNormal/Natural/Soft/Powerという4つのライブラリが収録されているので、インストールしてすぐにクロス・シンセシス機能を使うことができます。

Normalは従来のVY1をVocaloid4用にブラッシュ・アップ。名前の通り標準的な声質で、どの音域でも安定しており、ジャンルも選ばない万能選手です。NaturalはややNormalに似ていますが、こちらの方が声が若干明るく、得意な音域もやや高めに設定されています。多少の鋭さや明るさが欲しい場面で活躍するでしょう。Softはウィスパー系のあいまいなニュアンスの声質で、静かな曲に効果的です。クロス・シンセシスでSoftを“セカンダリシンガー”に設定し、徐々に値を上げていくと、息っぽいニュアンスを増やしながら落ち着いた声に変化させていくことができます。Powerは声が力強く伸びる、激しい楽曲向きのライブラリーです。A3以上の高い音域で特に歌声が安定するので、高い音域に入る場面で使うと非常に効果的でしょう。

Vocaloid4 Editorは、ユーザーの要望に応えた新機能が追加されており、歌声表現の幅がとても広くなりました。特にクロス・シンセシスで声質のバリエーションを容易に増やせるようになったので、歌わせ方の個性も出しやすくなっています。また、“標準的な女性ライブラリー”というイメージを一新したVY1V4も見逃せません。両者を組み合わせて、新しい歌声表現をぜひ体験してみてください。

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年2月号より)

YAMAHA
Vocaloid4 Editor
オープン・プライス (市場予想価格: 10,000円前後)
【REQUIREMENTS】 ▪Windows:Windows 7/8/8.1(32/64ビット)、INTELデュアル・コア・プロセッサー、2GB以上のRAM、4GB以上のハード・ディスク空き容量(Vocaloid4 Edutor+VY1V4の場合)