
アナログ32イン/14アウトを装備
オーディオI/Oとしても使える
インプットは、24ch分のXLR、8ch分のXLR/TRSフォーン・コンボ端子を装備し、計32chのアナログ入力が使用可能。アウトプットは14ch分のXLRとステレオ1系統のAES/EBU端子を用意し、14系統のAUX、6系統のマトリクス、6系統のサブグループをアサインして出力できます。そのほかヘッドフォン端子とステレオ・モニター・アウト(いずれもTRSフォーン)を1系統装備。内蔵DSPでは、6VCA/6ミュート・グループやビュー・グループをコントロールできる。エフェクトは、2系統のステレオ・リバーブと、1系統のステレオ・ディレイを用意。また、本機は32イン/32アウトのUSBオーディオI/Oとしても使えます。ただし出力は端子の数に限定。
筐体は450(W)×132(H)×394(D)mmという非常にコンパクトなサイズで、本当に32chのミキサーなのか疑ってしまうほどです。重さは8.2kgで、片手で持ち上げられます。入出力端子のみが並ぶフロント・パネルを擁した“黒い箱”といった感じの見た目は、ミキサーとしてインパクト大。リア・パネルには電源、通気ファン、イーサーネット/USB端子などを用意します。
DL32Rが以前のDLシリーズ(DL1608、DL806)と決定的に違うのは、プリアンプがデジタル・ゲインになり、アプリ内でのコントロールが可能になったことでしょう。この思い切った仕様変更によって本体での操作が一切不要になったため、ツマミやLEDは排除され、設置場所の自由度が高まりました。
セットアップは非常に簡単です。iPadをWi-Fiルーターに接続し、Master Faderを起動して、メイン画面のOFFLINEアイコンからDL32Rを選択するだけ。すぐに使い始められます。また、このアプリはVer. 3.0ですべてのイン/アウト・チャンネルを同時に表示できる“Overview”画面やデジタル・トリムが追加され、チャンネルごとに位相やファンタム電源のオン/オフを切り替えることもできます。
同社のOnyx+サウンドを継承
24chのマルチトラック録音にも対応
実際にドラム、ベース、ギター、トランペット、ギター/ボーカルという編成のミックスに使ってみました。マイク・プリアンプには同社のシリーズ製品に使われている“Onyx+”を採用し、そのサウンドがしっかり継承されている感触です。リバーブは、ホール/ルームなどスタンダードなものが搭載され、ボーカルやスネアなどにかけてみると質感がしっかりしていて好印象。ディレイにはTAP機能が付いており、パラメーターがシンプルに配置されていて、操作性の良さを感じました。
さらに、USBハード・ディスクを本体につないで24chのマルチトラック・レコーディング&再生にも対応。ライブ・ツアー時、前日に録った音をそのまま翌日の会場で再生して、ある程度のバランス取りや事前のサウンド・チェックなどに活用できそうです。また、iPadやiPhoneを10台まで接続できるので、ミュージシャンがそれぞれの手元でモニター・バランスを調整できます。
すべてをiPadで操作するため、慣れは必要ですが、デジタル・ミキサーに多いブラック・ボックス(使いたい機能がどこにあるか分からない)状態に陥ることは無く、機能的に文句の付けようが無い本機。まさに次世代のための、非常に可能性のあるミキサーだと感じました。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年2月号より)