「MACKIE. Thump12」製品レビュー:3バンドEQを搭載したバイアンプ方式のPA用パワード・スピーカー

MACKIE.Thump12
低音に定評あるMACKIE.のPA用スピーカー。今回はThumpシリーズより、超軽量でコンパクトながらもパワフルなThump12が登場です。早速レビューしていきましょう。

13.2kgという驚異的な軽さ
1,000Wの最大出力


実機を見ると想像よりもコンパクトで、パワー・アンプ内蔵とは思えない13.2kgという軽さです。スピーカーの構成は低域に12インチ径ユニットが、高域にチタニウム・ドーム素材を使用した1.4インチ径のコンプレッション・ドライバーが採用されています。アンプはクラスD構成で最大出力は1,000W、最大音圧レベルは125dB。高精度2ウェイ・クロスオーバー・ネットワークを経由することで、入力信号が低域用/高域用それぞれ別のアンプへ送られる、バイアンプ方式が採られています。タイム・アライメントが施されているため、低域/高域の時差による位相ずれの問題も解消。また、リア・パネルには3バンド構成のCONTOUR EQを搭載しており、MIDが周波数可変(100Hz〜8kHz)で、多様な現場での対応が可能です。入力はXLR/TRSフォーン・コンボ端子を装備。出力用のXLR端子は、同じ信号ソースで複数のスピーカーをデイジー・チェーン接続するときに使います。本機の構造はとてもシンプルで、リア・パネルには4つのケース(PA/DJ/MON/SPEECH)を想定したEQ設定図を設けるなど、機材に詳しくなくても簡単に使える仕様です。 

アコギも声も高域の抜けと遠達性が良く
ハウリング・リスクが少ない


実際の使用レポートに移りましょう。まずは野外で、アコースティック・ギターの弾き語りライブにメイン・スピーカーとして使用。アコギはSHURE SM57、ボーカルはSHURE BETA 58Aでピックアップしました。住宅地に密接した会場だったので、小音量で再生。サウンド・チェックの時点で低域が出過ぎていたため、スピーカーのEQで調整しました。LOWは80Hzまでのシェルビングで±6dBのゲイン調整が可能ですが、まずは−3dBに設定。それでもまだロー/ミッド辺りが“もわっ”としたので、MIDの中心周波数を300Hzぐらいに設定して−2dBに調整。とてもスッキリしてハウリングも無く本番に臨めました。小音量で出力したので輪郭や解像度が心配でしたが、アコギの音も声も高域が抜け良く再生され、遠達性能も非常に良かったです。スピーカーの近くよりも少し離れた位置でピントが合う印象で、音量感も心地良く感じました。ただ、少々高域は水平方向の指向性が狭いようで、軸から外れると低域が勝ってしまいます。モニター用途の場合ならハウリングの軽減に有効ですが、小音量/野外といった条件で広いエリアをカバーするには注意が必要でしょう。次に50〜70人程度の小規模クラブ・イベントで、ステージの後ろへ本機を設置し、モニターを兼ねるメイン・スピーカーという、ちょっと過酷な状況で試しました。最初の出演者はDJなので、EQ設定図に従い、LOWを+2dB、HIを+1dBにセッティングしてスタンバイ。最初はヒップホップ系の音源でしたが、予想以上に低域の再生能力が高く、12インチ・ウーファーとは到底思えない印象でした。タイトな音でハウスやテクノなどの4つ打ち音源とも相性が良さそうです。全体的な音質のバランスが良く、パンチもあってサブウーファー無しでも十分でした。次はロック系の音源。これは少し低音が出過ぎて、ベース帯域の輪郭がぼやけましたが、LOWを±0dBの位置に戻すとスッキリしました。次の出演者は4人編成のアコースティック・バンドです。ウッド・ベースにSHURE SM57、鍵盤ハーモニカはSHURE SM58、ギターはライン、ボーカルはSENNHEISER E945をマイキング。スピーカーの前にこの編成でセッティングし、リハ無しの本番でしたがハウリングすることなく無事終了できました。事前にグラフィックEQで補正をある程度かけていたとはいえ、明らかにハウリング・リスクが少ない印象。高域の指向性が狭い分、モニター使用としての効力を発揮してくれました。 基本的にはクラブ・イベントやモニター使用を前提として作られたのだと思いますが、このサイズ感と3バンドEQのおかげで、用途が広がりそうです。値段も手ごろで、非常に使い勝手の良いスピーカーと言えるでしょう。 
▲リア・パネルの端子類。3バンド構成のCONTOUR EQセクションとLEVELツマミ、出力×1(XLR)、入力×1(XLR/TRSフォーン・コンボ)、EQ設定図を用意 ▲リア・パネルの端子類。3バンド構成のCONTOUR EQセクションとLEVELツマミ、出力×1(XLR)、入力×1(XLR/TRSフォーン・コンボ)、EQ設定図を用意
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年9月号より)
MACKIE.
Thump12
49,000円(1本)
▪ドライバー構成:12インチ・ウーファー(低域)、1.4インチ・チタニウム・ドーム・コンプレッション・ドライバー(高域) ▪クロスオーバー周波数:3kHz ▪周波数特性:50Hz〜23kHz(−10dB) ▪指向性:90°(水平)×60°(垂直) ▪最大音圧レベル:125dB ▪パワー・アンプ最大出力:1,000W ▪外形寸法:367(W)×596(H)×314(D)mm ▪重量:13.2kg