「PRESONUS StudioLive 328AI」製品レビュー:Wi-Fiで設定可能な補正機能を備えるPA用アクティブ・スピーカー

PRESONUSStudioLive 328AI
PRESONUSからは、コンパクトで使い勝手の良い製品がどんどん世に送り出されている。そこへ来て同社開発のPA用パワード・スピーカー、StudioLive 328AIの発売とくれば、必ず何か特筆すべき工夫が凝らされているのだろうと期待は膨らむばかりだ。早速レビューしていこう。

中域と高域に採用した同軸ドライバーで
安定した位相感を得られる


スピーカーの構成は3ウェイで、低域にはフェライト・マグネットを使用した8インチ径のユニットが2つ備えられている。中域と高域には独自設計の同軸ドライバー“Coactual”を用意。中域用の8インチ径ユニットと高域用の1.75インチ径コンプレッション・ドライバーが同軸上に並ぶ。アンプはクラスDで最大出力は2,000W。317(W)×748(H)×398(D)mmという大きさのため、一人でもラクに持ち運べる。マイク用にXLR、ライン用にXLR/フォーン・コンボの入力端子を各1つずつ備え、マイク入力は15Vまでのファンタム電源供給も可能。トータル・レベルはSPEAKERというツマミで調整する。まずは予備知識無しに、マイクを使って自分の声を入れてみた。指向性は垂直方向が60°、水平方向が90°に設定されているため、スタンドでもコロガシでも使いやすく、それぞれに適切なエリアをカバーしてくれる。中域&高域の同軸設計により位相感も安定していた。次に本体のみで可能な設定を見ていこう。リア・パネルのDSP PRESETSというエリアにNORMAL/LBR SOURCE/FLOOR-MONという3つのボタンがある。NORMALに設定すると、クリアでフラットなサウンドが得られ、LBR SOURCEに設定するとローとハイをデフォルメした迫力のあるサウンド。FLOOR-MONに設定すると少しミッド帯域を強調した聴こえやすいサウンドになる印象だった。 

専用ソフトSL Room Controlで
iPadからもチューニング可能


本機は、パソコン/APPLE iPadによるスピーカーのマネージメントによって真価を発揮すると思われるので、専用ソフト“SL Room Control”を試してみた。このソフトはMac/Windows/iOSで使用可能で、スピーカーに直接ルーターを接続してWi-Fi環境を作り、それをパソコンやiPadで受信する。操作できるのは音量のほかに、1/3octグラフィックEQ、8ポイントのパラメトリックEQ、さらに8個のノッチ・フィルターだ。結果16ポイント+グラフィックEQを制御できる構成は、サウンド・プロセッサー同様のスペックだろう。大抵の場合、最初に設定してしまうので問題ないとは思うが、モードの切り替えやハイパス・フィルターの設定を行うと音が途切れてしまうので注意が必要。ソフトで作った設定は、リア・パネルにあるUSERボタンの長押しで、ユーザー・レイヤーのオン/オフを切り替えて保存や呼び出しができる。このように、セッティングや配線を待たずともリファレンスCDやマイクを直接入力して、iPadでチューニングを終わらせてしまうことが可能になるのである。そしてコンソールに依存することなく自分の設定を保存できるのは、時間の無い現場で重宝する機能であり、音が出るまでは落ち着かないという現場の不安を解消してくれるアイディアと言えるだろう。また、周辺機器を使わずにノッチ・フィルターなどの装備によってピークやハウリングを抑えられるのも利点である。バンドのリハーサルにて、リア・サイド・スピーカーとして使用してみた。キーボード、打ち込みのサウンド、ボーカルをコンソール・アウトから入力すると、声だけを入れたときと同様にミッドとハイの同軸設計による位相ずれの無さは変わらず、クリアなサウンドを提供してくれる。ローに関しては、生の演奏音を出力するにはサブウーファーが欲しい場面もあったが、クリアな印象に大きな変化はなかった。 中域&高域の同軸設計により得られるサウンドは、近/中距離に対するパフォーマンスに優れているようだ。最近のラインアレイ・スピーカーが作る死角の補助や、多目的ホールでのエリア・カバー用としても効力を発揮するだろう。 
▲リア・パネルの端子類。左上からマイク、ライン、スピーカーの各レベル・ツマミと、マイク入力(XLR)、ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)、スピーカー出力(XLR)、DSP PRESETSスイッチ、NETWORKスイッチ、アンプ信号LEDエリア、同梱されているUSB Wi-Fiモジュール用のUSB端子。一番下は有線通信用のイーサーネット形式のLANポート ▲リア・パネルの端子類。左上からマイク、ライン、スピーカーの各レベル・ツマミと、マイク入力(XLR)、ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)、スピーカー出力(XLR)、DSP PRESETSスイッチ、NETWORKスイッチ、アンプ信号LEDエリア、同梱されているUSB Wi-Fiモジュール用のUSB端子。一番下は有線通信用のイーサーネット形式のLANポート
▲専用ソフトSL Room ControlをiPad画面上で見たところ。8ポイントのパラメトリックEQの設定画面が立ち上がっている ▲専用ソフトSL Room ControlをiPad画面上で見たところ。8ポイントのパラメトリックEQの設定画面が立ち上がっている
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年9月号より)
PRESONUS
StudioLive 328AI
299,000円(1本)
▪構成:8インチ×1(低域)、8インチ×1(中域)、1.75インチ・ドライバー(高域) ▪クロスオーバー周波数:1.7kHz ▪周波数特性:54Hz〜23kHz ▪指向性:90°(水平)×60°(垂直) ▪最大音圧レベル:133dB ▪パワー・アンプ最大出力:2,000W ▪外形寸法:317(W)×748(H)×398(D)mm ▪重量:23kg 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS X 10.8または10.9 ▪Windows:Windows 7以降 ▪iPad:iOS 7.1以降