「SOFTUBE Console 1」製品レビュー:DAWソフトのチャンネル・ストリップを直感的に操作できるシステム

SOFTUBEConsole 1
日ごろDAW環境で作業をしていると、昔アナログ卓でやっていた感覚と比べ、特にEQやコンプレッサーをマウスで調整するのが味気無かったりします。また、パラメーターの値を“3.2dB”“2.9dB”ではなくキリのいい“3dB”にしたくなる方も多いと思います(笑)。こうした感覚は音より見た目にとらわれているとも言えるでしょう。画面に頼らず操作するためにはコントローラーが欲しくなってくるわけですが、汎用製品ではいろいろなソフトやプラグインに対応しなければならないので、一つのノブにさまざまな機能が割り振られるため、意外と使いづらかったりします。今回、プラグイン・メーカーのSOFTUBEからハードウェア・コントローラーと専用プラグインがセットになった製品が発売されたとのことで、使い勝手も含め早速チェックしてみましょう。

コントローラーとプラグインを専用設計
SSL公認のSL4000Eモデリング


Console 1は、簡単に言えば、ハードウェアのコントローラーと、DAWソフト内で使うプラグイン・エフェクトがセットになった製品。これらはそれぞれ専用で設計されているので、他社のプラグインをConsole 1コントローラーから操作することはできません。コントローラーの接続はUSBで、バス・パワー動作専用。作りもしっかりしており、大きさ、ノブを回した感触を含め、なかなかよくできています。ノブの値は、コントローラー上ではLEDポイントで表示。同時にコンピューター側では数値&グラフとして示されます。コントローラーにはインプット&アウトプット・レベルと、ダイナミクス系のリダクション・メーターも装備。全体的に安っぽい感じはなく、好印象です。機能やノブの配置も左=インプット側から右=アウトプット側へ順に流れるように配置されており、ソフトウェア側の画面も同じ配列で分かりやすくなっています。トラック選択ボタンも20chごとに切り替える形になっているので、作業が楽でした。プラグインは、VST/VST 3.0、Audio Units、AAX(32/64ビット)に対応しており、さまざまなDAWソフトで使えるようになっています(現在はMacのみ対応。Windowsにも近日対応予定)。プラグインのライセンス管理は、iLokでの認証です。プラグインをインストールして、あとは付属のUSBケーブルでコントローラーを接続すれば何の問題も無く使用できました。このプラグインはDynamic Shape、Equalizer、Compressorなどが並ぶチャンネル・ストリップ的なもので、正式にSSLのライセンスを受けてSL4000Eシリーズをモデリング。後段のDriveでアナログのひずみ感を付加することもできます。音作りの基本はこれ一つで完結できるというわけです。また、コントローラーが無くてもプラグインのみで動作しますし、マウスでパラメーターを調整することも可能です。ちなみに、CPUの占有度はINTEL Xeon 2.26GHz/8Coreで40trにインサートして、30%前後にとどまりました。 

EQとダイナミクスの入れ替えも可能
マウスに触らずミックスが行える


今回はAVID Pro Tools HD11のAAX環境でチェックしてみました。まず、全オーディオ・トラックの最初段(インサートA)にConsole 1プラグインをインサートします。パンを左右に振るトラックには、Mono→Stereoのプラグインとしてインサート。Pro Tools側ではミキサーのフェーダーとパンをユニティ(フェーダーは0dB、パンは左右振り切り)にします。それぞれのパンやレベルはConsole 1で操作する形です。各トラックにインサートしたプラグインは、左から順に番号が付きます(画面①)。
▲画面① プラグイン・スロットをクリックすると表示される画面。自動的に左のトラックから右へ順に番号が割り振られ、この番号がコントローラー上部にあるトラック・キー番号と対応する。任意の番号を入力できるので、例えばボーカルを1に固定することも可能だ。番号の下にはConsole 1でのトラック名を入力するエリアもある ▲画面① プラグイン・スロットをクリックすると表示される画面。自動的に左のトラックから右へ順に番号が割り振られ、この番号がコントローラー上部にあるトラック・キー番号と対応する。任意の番号を入力できるので、例えばボーカルを1に固定することも可能だ。番号の下にはConsole 1でのトラック名を入力するエリアもある
 これはコントローラー上のトラック・キー番号。例えば、キックがPro Tools上では3番目だとしたら、コントローラーの“3”を押すとキックのチャンネル・ストリップが操作できます。この番号は任意に変更が可能。つまり、コントローラー上ではDAWソフトのトラック順とは違った配列にすることも可能です。では、任意のトラック・キーを押して音作りを始めましょう。このトラック選択をすると、ディスプレイいっぱいにメイン画面が表示されます(画面②)。
▲画面② Display Onを押すと表示されるメイン画面。Display Auto時に操作子に触れても現れる。ゲート&エキスパンダーとトランジェント・シェイパーを組み合わせたDynamic Shape、4バンドEQ、コンプが並ぶ。下のメーターでハイライトされたチャンネルが現在操作しているところとなる ▲画面② Display Onを押すと表示されるメイン画面。Display Auto時に操作子に触れても現れる。ゲート&エキスパンダーとトランジェント・シェイパーを組み合わせたDynamic Shape、4バンドEQ、コンプが並ぶ。下のメーターでハイライトされたチャンネルが現在操作しているところとなる
 下のレベル・メーターでハイライトされているのが、現在コントローラーで扱っているトラックです。感心したのは、この画面はコントローラー上でDisplay Autoにしておけば、何も操作しないと数秒で消えること。ノブやスイッチを触るとまた自動的に出てきて、ほかの作業に邪魔にならないのは非常に便利! もちろん常に表示することも可能です。あとはコントローラーで音作りをしていきます。エフェクトのパラメーターだけでなく、パンやレベルも調整可能です。今回のテストでは、Pro Tools HD11のトラック名をConsole 1は引き継いでくれず、新たにConsole 1上に自分でトラック名を書き込む必要がありました。DAWソフトによってはトラック・ネームを自動的にConsole 1へ継承できるものもあるようです。また、基本画面は数値とグラフですが、数値とノブの位置での表示もできます。プラグインの機能的にも、名前が“Console”と言うだけあって、基本的な部分はしっかり押さえています。SSLコンソールと同じように、フィルターをコンプのサイド・チェイン入力に使用したり、コンプレッサーとEQの接続順変更も可能。ソロやミュートも付いているので、DAWのミキサー画面は一切触らずにミックスが行えます。ドラムのパーツをバス経由でAUXトラックにまとめたりしていても、対象AUXトラックのConsole 1プラグイン上でSolo Safeをオンにしておくと、例えばスネアだけソロをオンにしても音が無くなるといったことはありません。トラックのグルーピングも簡単で、トラック・キーで複数を選択すればいいので、複数トラックに同じ設定のEQをかけるのも簡単に行えます。今回のチェックでは、基本のバランス、パンなどはConsole 1のみでミックスを行い、細かいレベルのオートメーションやリバーブなどのセンドはPro Tools HD11のミキサーで行ってみました。実際に作業している間、全体の基本バランスが取れるまで、スタート/ストップなどロケート操作以外にキーボードを使うことはなく、マウスに関しては一度も触っていません! Console 1だけで感覚的に何の違和感も無くさくさく音作りに使えたのにはびっくりでした。 

SSLらしいオールラウンドな音
同社プラグインの読み込みも可能


肝心な音は中域の張り出しがしっかりしていて、SSLの感覚があります。音の傾向的に、変にアナログを誇張している感じも無く、デジタルくさくもなく、非常にオールラウンドに扱いやすい音だと思います。コンソールでミックスしているときの感覚に近いのかもしれません。また、SSLを単にコピーしているのではなく、例えばゲート/エキスパンダーにトランジェント・シェイパーを組み合わせたDynamic Shapeなど独自の機能があるのも良い点。このセクションのPunchでゲートのアタックでの緩さを改善できたり、最終段のサチュレーションのDriveやCharacterも丸いひずみや抜けたひずみなど音色の幅も広く、使える機能だと思います。コンプに関しては流行のパラレル・コンプも可能で、SSLとはまたひと味違った音作りができるのもうれしいところでしょう。今回のやり方だと、すべてのトラックの音作りがConsole 1プラグインで済んでしまうので、音のまとまり感があって良かったですね。トラックごとにいろいろなプラグインを使ってミックスするのとはちょっと違った感覚が味わえて新鮮でした。このConsole 1プラグインのEQやダイナミクスには、同社のプラグインのユーザーであればこれらをアサインして使うこともできます。コントローラーのShift+1〜4で、呼び出しダイアログが登場。新たにDAWソフト上でプラグインをアサインしなくてもよく、パラメーターも選んだものによって変わります。この機能は、同社のプラグイン・ユーザーにはうれしいところでしょう。また、ファクトリー・プリセットも多数あり、チャンネル・ストリップ全体、あるいはEQのみ、ダイナミクスのみと個別で呼び出すことも可能です。 今回、昔のアナログ卓のみでミックスしていたときのような感覚で扱ってみましたが、すんなり使えたのには驚きました。コントローラーがあっても途中で使わなくなったりしてしまうこともありますが、このConsole 1は音作りの基本のみをしっかり押さえた点や、ページ切り替えや階層が少ない使用感が良かったです。ソフトとハードが一体化した専用機ならではといったところでしょう。さまざまなプラグインを使ってしまうのが常になっていますが、あえて一種類のみで音作りをすると、まとまり感が味わえると思います。画面表示も音作りの基本が一つにまとまっているので、プラグインごとに画面を切り替えるストレスや操作体系が切り替わるストレスから解放されます。やっぱり音作りは目ではなく感覚でやりたいという方、ぜひ試してみてください。 
▲リア・パネル。電源供給とコントロール情報のやり取りに使うUSB端子を備えている ▲リア・パネル。電源供給とコントロール情報のやり取りに使うUSB端子を備えている
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年5月号より)
SOFTUBE
Console 1
98,000円
▪▪接続:USB(バス・パワー) ▪外形寸法:427(W)×52(H)×186(D)mm ▪重量/2kg 【REQIUREMENTS】 ▪Mac:VST/VST3/Audio Units/AAX(32&64ビット)対応のホスト・アプリケーション、USB端子、iLok 2
※Windowsは近日対応