コントローラーとプラグインを専用設計
SSL公認のSL4000Eモデリング
Console 1は、簡単に言えば、ハードウェアのコントローラーと、DAWソフト内で使うプラグイン・エフェクトがセットになった製品。これらはそれぞれ専用で設計されているので、他社のプラグインをConsole 1コントローラーから操作することはできません。コントローラーの接続はUSBで、バス・パワー動作専用。作りもしっかりしており、大きさ、ノブを回した感触を含め、なかなかよくできています。ノブの値は、コントローラー上ではLEDポイントで表示。同時にコンピューター側では数値&グラフとして示されます。コントローラーにはインプット&アウトプット・レベルと、ダイナミクス系のリダクション・メーターも装備。全体的に安っぽい感じはなく、好印象です。機能やノブの配置も左=インプット側から右=アウトプット側へ順に流れるように配置されており、ソフトウェア側の画面も同じ配列で分かりやすくなっています。トラック選択ボタンも20chごとに切り替える形になっているので、作業が楽でした。プラグインは、VST/VST 3.0、Audio Units、AAX(32/64ビット)に対応しており、さまざまなDAWソフトで使えるようになっています(現在はMacのみ対応。Windowsにも近日対応予定)。プラグインのライセンス管理は、iLokでの認証です。プラグインをインストールして、あとは付属のUSBケーブルでコントローラーを接続すれば何の問題も無く使用できました。このプラグインはDynamic Shape、Equalizer、Compressorなどが並ぶチャンネル・ストリップ的なもので、正式にSSLのライセンスを受けてSL4000Eシリーズをモデリング。後段のDriveでアナログのひずみ感を付加することもできます。音作りの基本はこれ一つで完結できるというわけです。また、コントローラーが無くてもプラグインのみで動作しますし、マウスでパラメーターを調整することも可能です。ちなみに、CPUの占有度はINTEL Xeon 2.26GHz/8Coreで40trにインサートして、30%前後にとどまりました。
EQとダイナミクスの入れ替えも可能
マウスに触らずミックスが行える
今回はAVID Pro Tools HD11のAAX環境でチェックしてみました。まず、全オーディオ・トラックの最初段(インサートA)にConsole 1プラグインをインサートします。パンを左右に振るトラックには、Mono→Stereoのプラグインとしてインサート。Pro Tools側ではミキサーのフェーダーとパンをユニティ(フェーダーは0dB、パンは左右振り切り)にします。それぞれのパンやレベルはConsole 1で操作する形です。各トラックにインサートしたプラグインは、左から順に番号が付きます(画面①)。
SSLらしいオールラウンドな音
同社プラグインの読み込みも可能
肝心な音は中域の張り出しがしっかりしていて、SSLの感覚があります。音の傾向的に、変にアナログを誇張している感じも無く、デジタルくさくもなく、非常にオールラウンドに扱いやすい音だと思います。コンソールでミックスしているときの感覚に近いのかもしれません。また、SSLを単にコピーしているのではなく、例えばゲート/エキスパンダーにトランジェント・シェイパーを組み合わせたDynamic Shapeなど独自の機能があるのも良い点。このセクションのPunchでゲートのアタックでの緩さを改善できたり、最終段のサチュレーションのDriveやCharacterも丸いひずみや抜けたひずみなど音色の幅も広く、使える機能だと思います。コンプに関しては流行のパラレル・コンプも可能で、SSLとはまたひと味違った音作りができるのもうれしいところでしょう。今回のやり方だと、すべてのトラックの音作りがConsole 1プラグインで済んでしまうので、音のまとまり感があって良かったですね。トラックごとにいろいろなプラグインを使ってミックスするのとはちょっと違った感覚が味わえて新鮮でした。このConsole 1プラグインのEQやダイナミクスには、同社のプラグインのユーザーであればこれらをアサインして使うこともできます。コントローラーのShift+1〜4で、呼び出しダイアログが登場。新たにDAWソフト上でプラグインをアサインしなくてもよく、パラメーターも選んだものによって変わります。この機能は、同社のプラグイン・ユーザーにはうれしいところでしょう。また、ファクトリー・プリセットも多数あり、チャンネル・ストリップ全体、あるいはEQのみ、ダイナミクスのみと個別で呼び出すことも可能です。 今回、昔のアナログ卓のみでミックスしていたときのような感覚で扱ってみましたが、すんなり使えたのには驚きました。コントローラーがあっても途中で使わなくなったりしてしまうこともありますが、このConsole 1は音作りの基本のみをしっかり押さえた点や、ページ切り替えや階層が少ない使用感が良かったです。ソフトとハードが一体化した専用機ならではといったところでしょう。さまざまなプラグインを使ってしまうのが常になっていますが、あえて一種類のみで音作りをすると、まとまり感が味わえると思います。画面表示も音作りの基本が一つにまとまっているので、プラグインごとに画面を切り替えるストレスや操作体系が切り替わるストレスから解放されます。やっぱり音作りは目ではなく感覚でやりたいという方、ぜひ試してみてください。
※Windowsは近日対応