
新設計のツィーター&ウーファーで
ひずみ率を大幅に改善
M2のツィーターとウーファーは新設計のもので、ツィーターは従来の金属ドームの代わりに、軽量ポリマーを使用した環状ダイアフラムをデュアル構造にし、2基のコンプレッション・ドライバーをコンパクトな単一筐体にまとめています。このことにより、高域のひずみ率が大幅に改善され、極めて高い出力が可能に。パワー・ハンドリングの劇的な増加に成功しています。ウーファーには出力を高めたときのパワー・コンプレッションを減らすために、独自の特別な熱抵抗の低いワイアーを使用。ネオジム磁石とボイス・コイルを各2つずつ搭載しています。コーンのエッジはレスポンスの良さそうなギャザード仕様。センター・キャップは従来より膨らみがある構造となっています。これらによって広帯域で量感のある低域性能を可能にし、高出力時でのひずみ率が改善されているそうです。ウェーブ・ガイドは、本機の指定クロスオーバー周波数である800Hzのつながりを繊細かつ自然なバランスにするための設計であるとのこと。このウェーブ・ガイドは垂直方向と水平方向どちらにも広く自然に聴こえ、軸上のみならず軸外をもカバーできるようになっています。また、エンクロージャーは硬質1インチ厚のMDFで構成され、内部に独自のフレアを持つ構造になっており、低域の出力効率を上げながら安定した音質になるように設計されています。試聴の印象を先取りしますが、バスレフ構造でありながら聴感上の音色はバスレフっぽい低音ではなく、あくまでも最小限の低域の補正となっているように感じました。なお本機はクロスオーバー・ネットワークを搭載しておらず、バイアンプ使用が前提。BSS AUDIO製プロセッサー用プリセットが提供されており、試聴にはこのプロセッサーを搭載したAMCRONのパワー・アンプを使いました。
現代の音楽ジャンルにも対応できる
力強い低音とレスポンス
今回は日東紡音響エンジニアリングの音響研究所にて、日ごろ私が聴き慣れているCDを大きめの音量(約100dB)で試聴しました。室内の音響は実際に聴きながら、筆者の好みに合わせて調整していきました。試聴ポイントに座り、低音から高音の音色や定位感、スピード感を細かく聴くようにします。第一印象から自分の好みに近いなという感触があったので、プロセッサーでの微調整に入るときにはさらに好みに近付けられる実感がありました。私の好みは低音と中高音でビートのタイミングがずれないレスポンス、強めの低音とひずみ感の無い中高音なのですが、このM2は見事にそれを表現してくれます。この音は私が抱いていたJBLスピーカーのイメージとは良い意味で異なり、ロックっぽいアメリカンな音ではなく、ヨーロッパ系のクラシカルな音でもなく、EDMなど新しいジャンルにも対応する新しいJBLのサウンドを提供してくれています。クラブで聴けるようなパワー感のある低音、ひずみ感が無く耳に痛くない素直な音色の中高音、そして定位感の良いステレオ・イメージを大音量で実現してくれました。ちなみに今回使用したAMCRON製パワー・アンプに内蔵されているBSS AUDIOのプロセッサーは、設置する環境に合わせてかなり細かくEQ調整ができるようになっています。M2と併せて、新しい音を求めるプロジェクト・スタジオやマスタリング・スタジオに向いているシステムだと感じました。長年の実績のあるJBL PROFESSIONALが生んだ新しい音を、体験してみてください。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年4月号より)