
DSPを内蔵し
4種類の動作モードを切り替え可能
まず構成から見ていきましょう。高域は1.4インチのチタニウム・ドライバー、低域は12インチ・ウーファーという2ウェイ仕様。これを平均400W/ピーク800WのクラスDアンプでドライブします。最大の特徴はFEEDBACK DESTROYER。これはリア・パネルにあるボタン1つで不快なフィードバックを切ることができる機能で、内蔵DSPが自動的に4ポイントでフィルターを設定します。また本機は、このDSPでスピーカーの動作モードを切り替えることもでき、こちらもリア・パネルにあるボタンでPA/DJ/MON/SOLOの各モードを選択します。“Wide-Z”と銘打たれた2系統の入力端子(Hi-Z対応)は、XLR/フォーンのコンボ仕様。共にゲイン・ノブを装備しており、ライン・レベルからマイクまで幅広く対応します。2chミキサー機能も備え、本機だけでも簡易的なPAが可能。入力2はRCAピンL/Rにも対応しており、DJミキサーなどをつなげられるほか、THRU端子には入力1/ミックスの切り替えスイッチが付いています。また冒頭にも書きましたが、エンクロージャーは15mmのポプラ材を採用し、高品質なパウダー・コートで仕上げられています。早速SRM550を仕事場に設置してみましたが、本体重量は16.8kgと軽く、両サイドにはハンドルが付いているのでスタンドへの取り付けも1人で安心してできました。早速APPLE iPodを接続し聴き慣れた曲をPAモードで再生してみたところ、“おっ”というほど音の鮮度が高く、良い感じです。試しにDJモードにすると、ローエンドにしっかりとした厚みが加わり、個人的にはこちらの方が好みの音でした。次にMONモードにしてSHURE SM58をBELDEN 8412とSWITCHCRAFTの端子で作ったケーブルで接続。マイク・チェックしてみると、こちらも嫌なピークが無く好印象。次にFEEDBACK DESTROYERをテストするために、ゲインを上げマイクを近づけて故意にハウリングを発生させてみました。するとすぐさまLEDが点灯し内蔵DSPがフィルタリングのポイントを設定、フィードバックを簡単に消すことができました。
本機のみでのPAオペレーションが可能
実戦で効くFEEDBACK DESTROYER
テストの印象が良かったので、20人規模の2つのシークレット・イベントの本番で本機を使用してみました。カフェでの弾き語りライブでは1台にギター/マイクを入力し、ミュージシャンの真後ろに地声に足すイメージで設置。もう1台はピアノ横に設置し、ボーカル・マイクを入力しました。ミキサーなどは別途用意せず、SRM550×2のみでのオペレーションです。出演者に4種類のモードの出音を聴き比べてもらった結果、オープニング・アクトはPAモード、ヘッドライナーはDJモードに設定しました。演奏中はスピーカーの正面にマイクがあるにもかかわらず、FEEDBACK DESTROYERが見事に効き、ハウリングは皆無。オーディエンスもウットリと演奏に聴き入っている様子でした。次は、ギャラリーで行われたDJイベントのメイン・モニターとしてDJモードで使用してみました。電源ケーブルを高品質なものに替え、LAKEのプロセッサーを使いMesa EQとハイパス・フィルターでチューニングしてみましたが、1,600Wの合計出力が幸いし、ローエンドも十分に出ていたように思います。 PA現場でのDSP処理は、場合によっては高域が強調され耳が痛く感じることもありますが、SRM550はそうしたことも無く、本番で使えるクオリティだと感じました。特にモード切り替えは便利で、手軽にライブをやってみたいというカフェ・オーナーなど、音響初心者にもお薦めできます。また電源ケーブルを替えると効果があったので、上級者もいろいろと楽しめるでしょう。PA用エントリー・モデルのレベル・アップは、良質な音楽に触れる機会が増えることにもつながり、素晴らしいと思います。同時発売された15インチ仕様のSRM650や18インチ・サブウーファーSRM1850にもがぜん興味がわいてきました。
