「STEINBERG UR44」製品レビュー:最高192kHzに対応/iPadとの接続も可能なUSBオーディオI/O

STEINBERGUR44
このUR44は、同社UR22の上位機種として登場したUSBオーディオI/Oです。僕は既にUR22を所有していて、2イン&2アウトながらそのコスト・パフォーマンスの高さに魅力を感じています。そんなこともあって、本機は一見“入出力が増えただけ?”かと思ったのですが、フタを開けてビックリ。さらに高いコスト・パフォーマンスを実現しています。

D-PREマイクプリを4基搭載
DSPミキサー・ソフト&エフェクトも用意


UR44はMac/Windowsに対応した6イン&4アウト・モデルで、サンプリング・レートは最高24ビット/192kHzとなります。ボディはUR22と同様に金属製で、上品で美しくかつ頑丈です。 フロントには4つのマイク入力端子がXLR/フォーン・コンボで用意され(うち2つはHi-Z&2つはラインにも対応)、それぞれにクラスA回路のD-PREマイクプリを搭載。また独立したボリューム・ノブを持つ2系統のヘッドフォン出力も備えています。リアにはライン入出力(フォーン)のほかMIDI IN/OUTも用意されています。UR22と比べると本機の価格は約2倍で、入出力がその分増えたことを考えると最初は“まあお得かな”という程度の印象でしたが、よく見ると何とDSPも内蔵しています。本機にはDSPミキサー・ソフト=dspMixFxが付いており、上位機種のUR28M/UR824にも付いているダイナミクス+EQのChannel StripやリバーブのREV-X、そしてひずみ系のGuitar Amp ClassicsといったDSPエフェクトが使えます。しかもそれらはBasic FX SuiteというVSTプラグイン・バージョンとしても付属し、VST対応DAW上で使用することも可能です。さらにリア・パネルを見ると“CC MODE”というスイッチが。調べてみると、このスイッチを入れることによりAPPLE iPadのオーディオ・インターフェースとして機能するとのこと。あまりにも多彩な仕様に心がグラグラに揺れまくります。 

立体感やヌケの良さが秀逸な録り音
iPadとの連携も可能性を感じさせる


では音質チェックに移りましょう。比較として用意したのはUR22とAVID HD I/Oの2機種。同じWAVファイルの再生、NEUMANN U87AIでのボーカル/アコギ録音、Hi-Zインにエレキをつないでの録音を48kHzで試してみました。UR44の再生音はやっぱり良いですね。非常に自然で、誇張の無い音です。位相特性も秀逸で申し分ありません。アタックの鋭さやボトムの深さなどはHD I/Oに分がありましたが、価格差を考えるとめちゃくちゃ良いです。UR22とは基本的な構造は同じだと思いますが、UR44の音の方が若干良い気がします。UR22はバス・パワー駆動、UR44は12Vの外部電源駆動となっており、そのせいかUR44の方が低域の感じが安定しているような印象でした。録音チェックではD-PREの威力がさく裂です。このクラスのオーディオI/Oに付いているプリアンプは音がベチャッとつぶれてしまうものもあるのですが、UR44はしっかりとした歌の膨らみや、ギターのアタック感を立体的にとらえています。高域の抜けも良く、とても好きな音です。dspMixFxも見ていきましょう。これを使用することにより、先述のDSPエフェクトを含むゼロ・レイテンシーのヘッドフォン・モニタリングが可能になります。Channel StripはワンノブでコンプとEQが連動する独自の操作性が素晴らしく、G
uitar Amp ClassicsはClean/Crunch/Drive/Leadといった多様なひずみを用意。この2つはモニターだけでなく、入力音にインサートしてかけ録りも行えます。またスムーズな響きのモニター・リバーブREV-Xは、入力音に加えてDAWからのサウンドを送ることも可能。DAW側からUR44への出力バスは6つ用意されており、バス5-6がREV-Xへの送りになります。DAWの任意のトラックをUR44のDSPでリバーブ処理できるのはうれしいですね。最後にCC MODEです。私のiPad2にiPad Camera Connection Kit(別売)経由でUR44を接続。音楽再生アプリを立ち上げると音が出ました! 当たり前なのですが良い音です。GarageBandアプリを立ち上げて聴くと、こちらも迫力ある良い音。録音トラックのマイク入力を見ると、ちゃんと6入力用意されています。これってアプリが対応すれば6trのマルチ録音もできるってことですよね。ものすごく期待してしまいます。あえて1点だけ欲を言わせてもらうなら、USB端子をフロントにもう1つ付けてくれたら、iPadとパソコンの両方につなぎっぱなしにできて便利そうだなと思いました。 
DAWソフトのCubase AIもバンドルされ、UR22よりもさらに高いコスト・パフォーマンスを実現したUR44。もうこの価格帯でUR44に勝てる製品があるのかと思うほど、超超お薦めです。 
▲リアは左から電源、USB2.0、CC MODE切り替えスイッチ、MIDI OUT/IN。さらにメイン・アウトL/R、ライン・アウト×4、ライン・イン×2(以上フォーン) ▲リアは左から電源、USB2.0、CC MODE切り替えスイッチ、MIDI OUT/IN。さらにメイン・アウトL/R、ライン・アウト×4、ライン・イン×2(以上フォーン)
   (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年2月号より)
STEINBERG
UR44
オープン・プライス (市場予想価格:30,000円前後)
▪接続タイプ:USB2.0 ▪オーディオ入出力:6イン&4アウト ▪最高ビット&レート:24ビット、192kHz ▪マイクプリ数:4(D-PRE) ▪周波数特性:20Hz~22kHz ▪外形寸法:252(W)×47(H)×158(D)mm ▪重量:1.6kg 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS 10.7/10.8/10.9、INTELデュアル・コアCPU、2GBのRAM、Core Audio対応DAW ▪Windows:Windows 7/8/8.1、INTEL/AMDデュアル・コアCPU、2GBのRAM、ASIO/WDM対応DAW ▪iPad:iPad 2以降、iPad Camera Connection Kit(接続用)