「NEUMANN　TLM107」製品レビュー：現代的な音にデザインされたNEUMANNのコンデンサー・マイク

NEUMANNTLM107

鎌田岳彦

世界中のスタジオ／放送局でのスタンダード・マイクを作ってきたNEUMANNから、コンデンサー・マイクのニュー・モデルTLM107が登場しました。同社のデジタル・マイクD-01以降の最新技術を投入した新時代のポリシー・コンセプトの元で作られた本機を早速レビューしていきましょう。

新設計のダイアフラム・カプセルを搭載
指向性は５パターンから選択可能

まずは基本スペックから。大きさは、同社のTLM102/103より若干大きめですが、メッシュのヘッド・グリル部分はスリムで全体的にはコンパクトでシャープ。レトロとは対照的なモダンな風ぼうです。カラーリングは、マット・ニッケルとブラックの２種類。新設計の２枚のラージ・ダイアフラム・カプセルを組み合わせることによって、無指向性／ワイド・カーディオイド／カーディオイド／ハイパー・カーディオイド／双指向性と、何と5つのパターン、マルチな指向性に対応しています。最大音圧レベルは141dB SPL。PADを使用することによって最大153dB SPLまで対応可能です。−6dB/−12dBの２種類のPADが選べ、40Hz/100Hzの切り替え可能な２段階のローカットも実装しています。マイクの設定を変える各スイッチ類は、リアにある１個のナビゲーション・スイッチで操作します。ファンタム電源を入れると、上下で指向性を、左右でPADとローカットを設定することができます。オーディオ回路はトランスレス設計で、ワイドレンジ／ローノイズ／リニアな特性を実現した設計となっています。マイク本体以外には、木製ケースとマイク・ホルダーが付属します。

S/Nが良くスムーズで自然な音
オールマイティで万能型のマイク

それでは実際に使ってみましょう。まずは、ファンタム電源を入れて、リアにあるスイッチで、指向性、PAD、ローカットを設定。スイッチは本体から若干出ているだけですが、操作はとても簡単です。このスイッチングをマイク本体で行うのは新鮮な感覚ですね。各設定はLEDの点灯で確認できますが、15秒ほどで自動的にオフになります。奏者や歌い手、撮影時などに配慮した設計なのでしょう。では同社の定番機U87AIと比較してみます。マイク自体のS/NはTLM107の方が明らかに良いです。最初にAPIのマイクプリで、声とギターをチェックしてみると、声のシビランス（歯擦音）、いわゆる“サシスセソ”が少し違っています。U87AIは若干強調されますが、TLM107はとてもスムーズで自然。小さな声でもS/Nの違いがあり、TLM107はより明確に感じられました。また、ギターのストロークやアルペジオでは、音色の違いが出ました。U87AIは少しザラついて押しの強い印象ですが、TLM107はより抜けが良く自然な音で、レンジがさらに広く感じられました。次にドラムのオーバートップにセッティング。レンジの広さはもとより、楽器の全体の音像が感じられます。特にシンバル類の高域の伸びが自然で、レンジの差が出ました。かなりオンでのセッティングもPADを入れずに使えました。爆音系のアンプや打楽器類では、PADを使うことでオンマイクのセッティングで十分使えるスペックです。今回は１本だけでしたので、ピアノやストリングスなどのアンサンブルでは使えなかったのですが、２本以上のマルチでの使い方は、良い結果が期待できそう。また、さまざまな楽器や歌に使えそうな、オールマイティで万能型のマイクであることは言うまでもありません。全体的に感じたことは、U87AIは定番のNEUMANNサウンドの流れを組んでいますが、TLM107は自然で色付けの少ないサウンドで、よりレンジの広い仕上がり。現代のスペックに合わせたコンセプトでデザインされた印象です。 TLM107は新たな選択肢として、スペック的にもぜひ複数本で使いたいですね。後部のスイッチ一つ取ってもいかにも未来っぽく、今後の開発アプローチは大いに期待できます。なお価格は17万円程度を予定しているそうです。