
オーディオI/Oやプラグイン・サーバーとも
イーサーネットだけで接続可能
まず、DIGIGRID製品の考え方として、すべてのシグナルはイーサーネット、すなわちLANケーブルでつながる。製品にはオーディオ・インターフェース、プラグイン・エフェクトがコンピューター無しで使えるSoundGridサーバーなどがあり、これらのオーディオと各種コントロールがイーサーネット接続だけで行えるようになるわけだ。従って、MGOもパソコンのイーサーネット端子に接続して使用する。イーサーネット接続なので、スイッチング・ハブを利用すれば、データをミラーリング、すなわち2系統に分けての入出力も可能(DIGIGRIDでは専用のスイッチング・ハブSWIを推奨)。DAWを搭載したパソコンが2台あれば、録音のバックアップ体制も簡単に整えられる。パソコンのエラーなどが許されないレコーディング現場では、この機能は重宝することだろう。また、一般的に多チャンネルのバックアップを取ろうと思うと、かなり大掛かりなシステムを必要とすることが多い。イーサーネット・ケーブル一本でバックアップ体制が簡単に整い、現場でのオペレーションも非常に楽になる。このMGO、今年リリース予定のSoundGridサーバーとも接続が可能だ。このサーバーはINTEL製CPUを使用しているため、専用プラグインは既存のDAW用のものから移植がしやすく、既にWAVES以外のメーカーも名乗りを上げているとのこと。MGOに立ち上がるオーディオ信号にプラグイン処理できるようになり、低レイテンシーかつ高品位なサウンドが得られる。しかもイーサーネット接続のみのシンプルなシステムが構築可能。レコーディング・スタジオなどでシステムの核になることはもちろんのこと、PAや設備などのシーンでも活躍しそうだ。
新旧のMADI規格に対応
低レイテンシーなマルチチャンネル環境
また、小さいことではあるが、MADIには新旧2種類のフォーマットが存在する。当初はAES/EBU信号をシリアルに28個並列させて合計56chをサポートしていたが、その後MADI-X(現在のスタンダード)となり、1本の光ケーブルで64ch(44.1/48kHz時)までサポートするようになった。MGO&MGBはこのどちらにも対応しており、古いタイプのMADIを採用したSSLやNEVEのデジタル・コンソールでも、接続の問題はない。多チャンネル・シグナル・プロトコルとしては歴史のあるMADIだけに、DIGIGRIDが最初にMGO、MGBをリリースしたのもうなずける。さて、気になるCPUネイティブDAW環境下でのレイテンシーだが、筆者のスタジオでSTEINBERG Nuendo 6と使用した場合、サンプル・レート96kHz、バッファー値256サンプルで約5msとほぼレイテンシーを気にすることのないレベル。テストしたマシンはHP EliteBook 8440W(Core i7)、Windows 7(64ビット)、メモリー8GBというスペックだ。プラグイン未使用、50trのオーディオ再生でCPUの負荷は10%程度だが、将来的にSoundGridサーバーが接続できることを考えると、CPU負荷を気にすることなく、プラグインがどんどん使える環境がCPUネイティブDAWシステムでも整うことになる。 取り回しが大変な太いマルチケーブルをはわせたり、USBやFireWire(IEEE 1394)、PCIe、Thunderboltなど規格に振り回されることなく、イーサーネットだけですべてのシステムが構築できるメリットは非常に大きい。MGO、MGBのリリースで、ネットワーク・オーディオのターンキー・ソリューションがいよいよ制作現場レベルで展開される時期に来たと感じさせられた。これからのDIGIGRIDシステムの展開が楽しみだ。

