「PELUSO MICROPHONE LAB 22 47」製品レビュー:U47を忠実に踏襲し現代風アレンジを加えたコンデンサー・マイク

PELUSO MICROPHONE LAB22 47
レコーディング・エンジニアだったジョン・ペルーソは、ひょんなことからマイク作りに目覚め、2002年アメリカのバージニア州にPELUSO MICROPHONE LABを設立。NEUMANN、AKG、TELEFUNKENなどのビンテージ・マイクの良さを忠実に踏襲した製品を丹念に製造し、世に送り出している。今回はビンテージ・マイクの中でもその代表格であり、名機として名高いNEUMANN U47を基に作られた22 47を紹介しよう。

ガラス三極管を換装したU47を基に製作
指向性は9段階に調整可能


PELUSOは使用真空管の違う3種類のU47フォロワーを製造しており、この22 47は“1970年代にドイツの放送局がガラス三極管にモディファイしたもの”を基に作られている。U47の真空管はかの有名なTELEFUNKEN VF-14。1970年代当時のラジオ局は、1957年に製造が中止され入手困難になったこのVF-14に見切りを付けつつS/N向上、ゲイン・アップなどの目的でガラス三極管を換装したのだろうが、このような“派生種”までを追っかけ現代版を生み出そうとする姿勢にPELUSOの本気っぷりが伺える。外観はショート・ボディのU47と同等かやや短いサイズ。クローム・トップ、マット・シルバーのボディにはうっすらとメーカー・ロゴ、モデル名、シリアル・ナンバーが刻印されているのみでシンプルそのものだ。オリジナルに存在する単一指向と無指向の切り替えスイッチは無く、電源部にあるつまみで無指向から双指向まで9段階に調整可能。オリジナルのクローン製作に徹するだけでなく、必要とあらば使い勝手向上のための現代風アレンジを施していこうという開発姿勢がよく現れている。使用されている真空管はCE6072A。ごく初期ロットのモノにはCE-701が使われていたようだ。付属品は、木製マイク・ケース、パワー・サプライ、8ピン専用ケーブル、ショックマウントで、すべてフライト・ケースに収納できる。 

扱いやすい素直な音色傾向で
中域の明るく芯の強いキャラクターが特徴


サウンド・チェックに移ろう。マイクプリにAPI 512Cを使用し、まずはいつも通りアコースティック・ギターに立ててみる。ゲインはやや低めだがS/Nは悪くない。パッと聴きはNEUMANN系らしい中域のしっかりした音。ストローク、アルペジオなどを織り交ぜ細かくチェックしていくと扱いやすい素直な音色傾向であることが分かる。低域はローエンドの伸びが十分感じられつつ、もたつきが少なく上手に整理されている印象。切りたくなるようなだぶついた部分が無く、むしろ120Hz辺りをほんの少しだけ持ち上げるとふくよかさと艶やかさが出て落ち着きが出る。いずれにしても非常にコントロールしやすい低域の振舞いだと感じた。中域は2.5kHz辺りの明瞭度の高さが、明るく芯の強いキャラクターを作っている。とはいえピーキーなのではなく、中域の基音となる部分のフォーカスがしっかり合っているという印象である。高域は10kHz辺りにほんのりと張り出しが感じられ、きらびやかさに貢献している。引き続き男性ボーカルでチェック。やはり中域の芯の部分をしっかりとらえつつ高域の伸びも自然なので聴いていて安心できる。音源の強弱に対する反応も良く、声を張り上げたときにも詰まってしまうような挙動を見せずにチューブ・マイク特有の耳あたりの良い飽和感が得られる。皆さんが気になるのは“本物と比べてどうなのだ?”ということだと思うのだが、この“本物の音”というのが非常に曲者だったりする。国内外で十数本のNEUMANN U47を使用してきたが、やはり製造から50〜60年たっているマイクであるため個体差が大きく、音色もバラバラ。加えて、残念ながらそれぞれの細かい仕様のすべてを把握しているわけでは無く、明確にこれが“ガラス管使用のU47”であると認識して使用したことは無い。そのような状況ではあるが、経験上得た私なりのU47の音色の解釈である“ふくよかな低域、張り出し過ぎず収まり納まりの良い中域、伸びやかで抜けの良い高域が全体として独特の艶やかかさを表現してくれる”というものと比較すると“艶やかさ”よりも“明るく芯の強さ”というキャラクターが勝っており、同じくビンテージ・マイクとして有名なNEUMANN U67の音色傾向である“中域の押し出しの強さ”に近い感じがした。これがガラス真空管の効果なのかもしれない。 “〇〇を基にとしてこの製品を開発した”と堂々と宣言するのは、よほどの自信が無ければできないことだ。ベンチマークしたものにどれだけ近いか……ということはもとより、その本気っぷりの産物として基本性能の高さと使いやすさ、独自のキャタクター、コスト・パフォーマンスの高さなどが得られているのであれば、それだけで十分に評価されてしかるべきであろう。そういった意味でこの22 47は“使えるマイク”だと言えよう。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年11月号より)
PELUSO MICROPHONE LAB
22 47
199,500円
▪形式:コンデンサー ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪指向性:9パターン(無指向から双指向まで切り替え可能) ▪感度:12mV/pa ▪最大SPL:140dB ▪外形寸法:59.5(φ)×196(H)mm ▪重量:775g