「TASCAM DP-008EX」製品レビュー:ステレオ・マイクやマスタリング機能を備えるコンパクトな8tr MTR

単三電池×4もしくはAC電源で駆動する8tr MTR、DP-008EX。外形寸法221(W)×44.3(H)×126.5(D)mmというコンパクト設計ながら、無指向性のステレオ・コンデンサー・マイクやマスタリング機能まで搭載しています。一見しただけではツマミがたくさんあって、往年のカセットMTRのようですが、その真価とは……?

TASCAMDP-008EX
単三電池×4もしくはAC電源で駆動する8tr MTR、DP-008EX。外形寸法221(W)×44.3(H)×126.5(D)mmというコンパクト設計ながら、無指向性のステレオ・コンデンサー・マイクやマスタリング機能まで搭載しています。一見しただけではツマミがたくさんあって、往年のカセットMTRのようですが、その真価とは……?

入力段に4種類のエフェクトを搭載 2バンドEQは周波数可変


電池を含まない重量が610gという本機。持った印象は、ギター用コンパクト・エフェクター1.5個分ほどの重さという感じです。これならギター・ケースのポケットに入れて持ち運べます。入力端子として、XLRのマイク/ライン・イン×2とフォーンのマイク/ライン・イン×2を装備。XLRのマイク/ライン・インは48Vのファンタム電源が供給可能で、フォーンのマイク/ライン・インはINPUT Aのみスイッチでギター・インに切り替えられます。入力段には2バンドEQやコンプ、エキサイター、ディエッサーといったインプット・エフェクトを搭載。かけ録りが簡単に行えます。記録メディアとしてSD/SDHCカードを採用し、16ビット/44.1kHzで最大2trの同時録音が可能です。 各トラックにはレベル/パン/内蔵リバーブへの送り量を調整できるツマミが装備され、直感的な操作性を実現。“EQ”ボタンを押すと全トラックに搭載の2バンドEQへアクセスでき、液晶パネルを見ながら周波数やゲインを調整可能です。 そしてマスタリング・エフェクトも内蔵されており、市販CDのような音圧を持ったマスター・ファイルが作れます。出来上がったマスター・ファイルはUSB2.0を介し、WAV形式でMac/Windowsマシンにエクスポート可能。外部からWAV形式のオーディオ・ファイルを取り込むこともできます。本機をコンピューターにつなぐと外部ストレージとして認識されるため、ドラッグ&ドロップでオーディオ・ファイルの受け渡しが行えます。

内蔵マイクの音質は明るめでタイト コピペやインサートなど編集機能も魅力


それではデモ録音してみます。外部マイクを接続するという手もありますが、今回は専ら内蔵マイクを使います。本機をテーブルに置いて電源をON。まずはアコースティック・ギターを収音し、音色を決めていきます。内蔵マイクのゲインは“High/Low”という2種類から選ぶ仕様で、ここではゲインが高めの“High”に設定。モニターの音質は高域が明るめで、低域の嫌な膨らみは無く、内蔵マイクの基本的な音質は思った以上に良いようです。続いてはアコギを弾きながら入力レベルやインプット・エフェクトを調整。プリセット・コンプの“A_GUITAR”をONにすると、これがまた粒立ちの良いキラキラとしたサウンドで、アコギのジャキジャキ感を完ぺきに持ち上げることができたため、あえてEQは使わないことにしました。 音のイメージが絞り込めてきたところで、いよいよ録音開始。アコギのバッキングを“TRACK 1”に録音します。ブライトな響きが心地良いです。次に“TRACK 2”にボーカルを録音。プリセット・コンプを“VOCAL1”に変更しましたが、先述の通り内蔵マイクは無指向性なので、座ってアコギを弾いたときのセッティングそのままでも問題ありませんでした。マイクの高さや角度を変えるのは、割と手間なので助かります。録り音はやや明るめですが、クセが少なくバランスは良好。 続いてフォーンのマイク/ライン・インにエレキギターをつなぎ、“TRACK 3”に録音。ライン入力もクセが少なく、好印象です。またコピー&ペーストやカット(部分消去)、インサートなどの編集機能も魅力。操作は“IN”というパラメーターで編集開始のポイントを、“OUT”で終了ポイントを設定する要領です。DAWソフトほどスムーズではありませんが、慣れれば問題ないでしょう。 曲の仕上げに掛かりましょう。多重録音からミックスのモードに切り替えます。気に入った点は、各チャンネルの操作子の大きさや感触です。良い意味でカセットMTRの雰囲気が残っています。センド&リターンで使用する内蔵リバーブは、6種類のアルゴリズムを搭載。自然な広がりが得られ、アコギや歌に合うものばかりです。 最後にマスタリングを行います。“AUTO”“MANUAL”モードのいずれかを選ぶ形で、2バンドEQやコンプ、ノーマライザーなどでトータルの音圧や音質を調整することが可能です。今回は“AUTO”に設定し、その中の“NATURAL SOUND”というタイプを選択。その名の通り自然なかかり具合なのですが、音圧は十分に稼げました!   本機は、1台で曲を仕上げまで持っていけます。しかし、それ以上にレコーダー部のシンプルな操作性と音質が、最大の強みではないでしょうか。内蔵マイクも実に良いので、シンガー・ソングライターの方はもちろん、普段DAWを使っている人のスケッチ用レコーダーとしてもお薦めです。
 
▲背面には、左からフット・スイッチ・イン(フォーン)やマイク/ライン・イン×4(フォーン×2、XLR×2)、ステレオ・ライン・アウト(RCAピン)、そしてヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)とその音量ツマミを装備 ▲背面には、左からフット・スイッチ・イン(フォーン)やマイク/ライン・イン×4(フォーン×2、XLR×2)、ステレオ・ライン・アウト(RCAピン)、そしてヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)とその音量ツマミを装備
サウンド&レコーディング・マガジン 2013年7月号より)
TASCAM
DP-008EX
オープン・プライス (市場予想価格/30,000円前後)
▪同時録音トラック数/2 ▪同時再生トラック数/8 ▪録音ビット&レート/16ビット/44.1kHz ▪記録メディア/SD、SDHCカード ▪電池駆動時間/アルカリ乾電池:約5.5時間、ニッケル水素電池:約6.5時間(いずれもライン・イン使用、録音時) ▪周波数特性/20Hz〜20kHz(+1/−3dB、信号経路はマイク/ライン・インからライン・アウト) ▪外形寸法/221(W)×44.3(H)×126.5(D)mm▪重量/610g(電池を含まず)