IZOTOPENectar Elements

アメリカのIZOTOPEからNectar Elementsというボーカル用プラグインが新発売されました。同社Nectarのライト版という立ち位置ですが、ボーカル処理で必要性の高いEQやディエッサーはもとより、通常は別途立ち上げる空間系やピッチ補正も付いています。簡単に言うと“ボーカル・エフェクトの全部入り”といったところでしょうか。早速、使用感などをチェックしましょう。
ボーカルにパンチ感を与えるLoudness オケに歌がなじみやすい空間系
Nectar ElementsはMac/Windowsで使え、Audio Units/VST/AudioSuite/RTAS/AAX Native/DirectXに対応します。基本的に7セクションのプロセッサーから成り立っており、それらを組み合わせて処理を行います。一通りのエフェクトが入っているので、短時間でさまざまな音色を試せるのが特徴のツールと言えるでしょう。 まず画面の中央上にあるウィンドウの中からプリセットを選び、ボーカルの大枠の音色を決めます。左側には12の音楽ジャンル(Alternative & Indie/Classical/Countryなど)が用意され、右の欄で音色スタイルを選んでいきます(画面①)。なおこのスタイルに合わせて、後述する幾つかのパラメーター項目も変更されます。

シンプルながら効果の高いピッチ補正 5バンドEQはナチュラルな効き
中段の左にあるのがDE-ESSERセクションで、“Ess”を上げると、ボーカルの歯擦音が抑えられていきます。GATEセクションはその名の通りゲートのかかり具合を“Threshold”で調節。その隣にある“PITCH CORRECTION”セクションではピッチ補正が行えます。“Correction Speed”は補正のかかり始めを調整。“Correction”は左側が♭/右側が♯として現在のピッチの状態を表示します。“Range”はキー・レンジを設定するもので、Low/Middle/Highを男声/女声に合わせて選択すれば良いでしょう。“Scale”はMajor/Minor/Chromatic/部分転調に対応するCustomの4種類のスケールを設定し、キーは“Root Note”で選びます。ピッチ補正は基本的にかかりっぱなしになるので、EDMのようにエフェクト的にかける方が向いている感じでした。音質的にもザラっとした印象です。 最後に下段のグラフがEQセクションで、20Hz〜20kHzの間で±15dBの調節ができる5バンド仕様となっています。必要な帯域にポイントを合わせてイコライジングすることが可能で、かなり効きが良い印象です。ちなみに、ここまで紹介した各セクションは個別にON/OFFが可能です。またルーティングに関しては内部固定のようで、ユーザー側で変更することはできません。 設定によっては原音からの音色変化が割とありますが、筆者はプリプロの段階で有用なツールだと思いました。なぜなら楽曲制作中は最終形も見据えながら可能な限り方向性を絞り込んでおきたいので、短時間でいろいろな処理を試せるのは非常に効果的なのです。実際に数曲レコーディングで試しましたが、Nectar Elementsを使ってボーカル・サウンドのガイド・ラインを決め、そこからほかのプラグインも併用して詰めていくという使い方ができました。入門ツールとしてはもちろん、プロの現場でも重宝しそうです。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年7月号より)
IZOTOPE
Nectar Elements
オープン・プライス (市場予想価格/13,440円前後)
▪Mac/Mac OS X 10.5.8以上、Intel Macのみ
▪Windows/Windows XP(32ビット)/Vista(32/
64ビット)/7(32/64ビット)/8(32/64ビット)
▪対応プラグイン規格/RTAS、AudioSuite、AA
X Native、VST/VST3、Audio Units、DirectX