「MIDAS Pro1」製品レビュー:48入力に対応し柔軟な操作性を実現したPA用コンパクト・コンソール

MIDASPro1
イギリスの老舗コンソール・メーカーの1つ、MIDAS。多くのサウンド・エンジニアが同社のコンソールに信頼を寄せており、特にアナログ・コンソールの音質の良さで不動の位置を築いてきました。約7年前に同社として初めてのデジタル・コンソールXL8が発表され、その革新的なデザインとテクノロジーを引き継いだProシリーズは世の中のニーズに対応したモデルとしてリリースされています。今回紹介するPro1もコンパクトながら内容は充実したデジタル・コンソールです。それでは早速製品の説明をしていきましょう。

48入力/24出力まで対応
任意チャンネルを呼び出すPOP機能搭載


コンソールのパネル左上には大きなディスプレイ・スクリーンがあり、その右側にはパラメトリックEQやコンプレッサーのツマミが配置されています。これらのツマミとディスプレイは連動するため、まるでアナログ・コンソールを操作しているような感覚で扱いやすいです。これにはXL8から引き継がれるMIDASの一貫したデザインと操作性に対するこだわりを感じます。その右には“mix sends”セクションがあり、各チャンネルからAUXバスへの送り量が確認できるスイッチ×16とマトリクス・バス用のスイッチ×8があります。その右にはステレオ・マスター・フェーダー×1とモニター・フェーダー×1を装備。右上には“OSC”スイッチ×2を装備したトークバック・セクション、チャンネルのソロ設定やポスト/プリフェーダーを選べる“solo”セクション、ヘッドフォン・レベル調整用のツマミを装備した“phones”セクションがあります。下半分のフェーダー・セクションを見てみましょう。左右にそれぞれインプット・フェーダー×8が並んでいます。その上にある“solo”スイッチは黄、“mute”スイッチは赤に点灯。その右横にはMIDASらしい11段階あるLEDでボリュームが確認できます。その上にはチャンネル・セレクト・ボタン(写真①)があり、左右に付いている“scroll”ボタンを押すことによって合計で入力チャンネル×40とエフェクト・リターン・チャンネル×8を操作することが可能となり、“scroll”ボタンを押すと8本単位でチャンネルがスクロールしていきます。その上にはツマミとスイッチがセットになった“assignable controls”×8系統があり、これによってディスプレイで選ばれたパラメーターを操作できます。例えばヘッド・アンプをディスプレイで選ぶと“assignable controls”のツマミはゲイン・コントロールになり、スイッチはファンタム電源のON/OFFになります。assignable controls_2013-3▲写真① 点灯しているのがチャンネル・セレクト・ボタン×8、左右には“scroll”ボタン、その上にはツマミとボタンで構成される“assingable control”×8を装備本機の特徴の1つとして、フェーダー・セクション右上のチャンネル・セレクト・ボタンの上にある“POP”グループが挙げられるでしょう。これはVCAのように多くのチャンネルのレベルを同時に変化させるという機能ではなく、“POP”で選んだ多チャンネルを1つのグループとして1カ所に集め、それぞれのパラメーターを個別にコントロールする機能です。例えば“POP1”にドラムだけを集めるには “POP1”を長押しして個々のドラムの入力チャンネルのセレクト・スイッチを押していきます。そうすることで“POP1”にアサインしたチャンネルを1カ所に集めることができます。左右それぞれ8本あるインプット・フェーダーの真ん中には“screen access”セクション(写真②)があります。screen access_2013-3▲写真② パネル中央下にある“screen access”。これらのボタンを押すとディスプレイが専用画面に変わるこれには6つのボタンがあり、“automation/filing”ボタンはコンソール・データの保存や呼び出し、“effects/graphics”ボタンは内蔵エフェクターとグラフィック・イコライザーの調整、“patching/metering”ボタンはリア・パネルに入力された信号を入力チャンネル・フェーダーにアサインしたり各入出力レベルの確認ができます。“inputs/outputs”ボタンはUSB接続する付属のキーボードを使用して6文字までチャンネル名の入力やセレクト・スイッチに色(16色)を付けることが可能です。“monitors/preferences”ボタンは“OSC”やモニターの設定をディスプレイで確認し変更するために使います。“preference”ボタンでは内蔵エフェクトと内蔵グラフィック・イコライザーの使用数を決めたり、マトリクス・バス×8の設定を変えることができるので便利です。“vcas”ボタンはVCA、POP、MG(ミュート・グループ)にUSB接続の付属キーボードを使用して、名前の入力とスイッチのディスプレイの色(16色)を決定していくために使用します。続いてリア・パネルの入出力端子を見ていきましょう。左上にアナログ入力×24(XLR)があります。ファンタム電源をONにした入力は赤いLEDが点灯します。その下にはAES/EBU入力×2、AES/EBU出力×3を装備。アナログ出力×24(XLR)は右上にあり、AUX出力、マトリクス出力もここに割り当てられます。また、初期設定の出力は右側中央にモノ・マスター出力×2(XLR)、ステレオ・マスター出力×2(XLR)、ステレオ・ローカル・モニターA/B出力×4(XLR)があります。さらにワード・クロック入出力(BNC)、MIDI IN/OUT/THRUもあるので同期も可能です。入出力を拡張するには、AES50ポートに別売オプションのDL251 Audio System I/Oを最大3台使用することで入力×100(XLR)と出力×102(XLR)まで拡張できます。ポートは3系統あるので、大きなステージ上の各所にDL251を設置することができ便利です。

アナログとデジタルを合わせた音作り
直感的に使えるEQコンプを装備


では、実際にマイクをつないで音を出すまでのプロセスも含めて見ていきましょう。リア・パネルのアナログ入力1(XLR)にマイクをつなぎ、“screen access”セクションの“patching/metering”ボタンを押します。すると接続用画面に切り替わるので、スクリーン左側の“From”から“In1”を選択した後に右側の“To”から“1”を選択します。接続されていない入力は無色で接続されると緑色になります。接続された“From”を選択すると、それがどの“To”にパッチされたのか黄色で表示されますのでとても分かりやすいです。フェーダーの上、左端にある“HOME”ボタンを押すと基本ディスプレイに戻るので、そこでチャンネル1のチャンネル・セレクト・ボタンを押します。次にレベルを上げましょう。まず、ディスプレイ・スクリーン右横にある“gain”ノブで上げていきます。上げながらマイクでしゃべるとインプット・チャンネル・シグナルが点灯します。シンプルに音を出すには、ディスプレイ・スクリーン右側の一番下の“masters”ボタンを押して赤く点灯させて、マスター・フェーダーを定格0dBに合わせて、インプット・フェーダーを上げていけば音が出ます。これからの時代のサウンド・エンジニアはPro1のような質の高い小型コンソールを使って、ホール・クラスのコンサートをクオリティ・キープしながらミキシングするのでしょうね。PRO1 Back_2013-3▲リア・パネルの入力端子は左上に24ch(XLR)、出力は右上に16ch(XLR)分を装備。入力部の下にはAES/EBU入力×2系統、AES/EBU出力×2系統、AES/EBU Sync×1系統(そのうち出力はAES/EBU出力として利用可能)、その右にはトークバック入力(XLR)、出力部下にはローカル・モニターA出力×2(XLR)、ローカル・モニターB出力×2(XLR)、トーク出力(XLR)、モノ・マスター出力×2(XLR)、その下にはMIDI IN/OUT/THRU、フット・スイッチ用端子、ビデオ・シンク(BNC)、ワード・クロック入出力(BNC)、AES50ポート×6(RJ45)が並ぶ (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年3月号より)
MIDAS
Pro1
フライト・ケース無し:1,837,500円 フライト・ケース付き:1,890,000円
▪最大入出力/48イン、24アウト▪AD/DAビット・レート/40ビット▪サンプリング・レート/96kHz▪周波数特性/22Hz〜22kHz▪ダイナミック・レンジ/106dB▪外形寸法/685.2(W)×288.75(H)×722.14(D)mm▪重量/約21.5kg