「VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Vienna Instruments Pro 2」製品レビュー:アップ・グレードしたVIENNA専用の高機能プレイバック・エンジン

VIENNA SYMPHONIC LIBRARYVienna Instruments Pro 2
Windows/Mac対応の老舗オーケストラ・ライブラリー、VIENNA SYMPHONIC LIBRARY(以下VSL)。同社の何らかのライブラリーを購入すると付属のプレイバック・エンジン=Viennna Instrumentsで、ライブラリー内のすべてのパッチとサンプルが再生できる。ここで取り上げるVienna Instruments Pro 2 (以下Pro 2)は楽器群ライブラリーをより便利かつ効率的に使用するための“アップ・グレード版”として、別途でダウンロード販売されている(スタンドアローン、VST/Audio Units/RTAS/AAX Native対応)。制作環境を構築する上で“音が出ないもの”に対しての出費を後回しにしたいのはもちろんだが、Pro 2にアップ・グレードした場合の作業上のメリットは非常に大きい。ここではVSLの総合音源パックVienna Special Editionのユーザーが Pro 2を使った場合の利点を挙げていこう。

細かな音価調整が可能なストレッチ機能
楽器音源を最大で2半音拡張が可能


Pro 2の機能としてまず取り上げたいのはエンベロープ・タイム・ストレッチ機能。これはバイオリンを例に挙げると、ショート・ノートはスタッカートとデターシェの2つしか含まれないが、楽曲のテンポによってはスタッカートでは長過ぎ、デターシェでは止め過ぎに感じることもある。そんなときにこの機能を使えば楽曲に見合った長さに調節できるほか、トリルやポルタメントのスピードの編集も可能。テンポが速い楽曲の場合はMIDIノートのデュレーションで短い発音も可能だが、スロー・テンポ時のスタッカートなどは、Pro 2を使って音源自体を長く発音させないと、うまくなじまない場合もある。筆者もよく利用するオート・ヒューマナイゼーションは、ピッチや発音のタイミングを微妙にズラす機能だ。例えばプロが演奏しても比較的ピッチが揺れやすいフレンチ・ホルンなどをサンプリングのフォルテシモで演奏すると、音色やピッチが均一になり過ぎて、いかにも音源的なサウンドになることがある。そんなときにベロシティを一定にしたままこの機能を使えば、MIDIデータとしても管理しやすく、かつ音色に自然なバラツキを付けられる。ちなみに同じノートを続けてトリガーしても、その都度発音のタイミングやピッチのエンベロープにバラツキを付けられる。また楽器の音域を最大2半音拡張できるのも見逃せない(Pro 2を使用しない場合は音域拡張は不可)。サンプリング・ライブラリーを使ったアレンジの場合、楽曲の完成後にボーカリストの都合でキーを変更する場合でも、Pro 2なら音域を拡張することで手軽に対応できる。

iPadなどでのリモート操作に対応
作業効率がアップするSSDへの最適化


また同ソフトには“APPシーケンサー”という独自のMIDIシーケンス機能があり、指定したキーの中でポリフォニックでトレモロをしたり、ストリングスや木管の駆け上がりフレーズを作成して演奏させられる。例えば7連符などの駆け上がりの途中でアーティキュレーションの異なるセルに乗り換える場合、あらかじめフレーズ・プリセットのように組んでおくことができる。オーケストレーションで頻繁に使う定型のスケールランなどPro 2に用意されるAPPのプリセットを使うと効率もアップするだろう。加えて筆者がよく使用する機能として挙げたいのが、APPLE iPadやAndroidのタブレットからのリモート操作。先述のオート・ヒューマナイゼーションの効きを調節するフェーダーや、Pro 2内部のリバーブなどを遠隔操作できるのは便利である。ちなみにタブレットを使用する際はアプリをインストールするように見えると思うが、これはホスト・コンピューターと同じIPアドレスにタブレットを登録し、“ホーム画面に追加”して使用する。一度設定すると非常に簡単なので、タブレットを所有している場合はぜひ試してほしい。またラップトップ・コンピューターなどの限られたメモリー環境でVSLを動かす場合、“セルの有効/無効状態の切り替え”が有効だ。これは呼び出したパッチから楽曲に不必要なセル(=使わないサンプル)を選んで、その分のメモリーを解放できる。例えばストリングス・アレンジなら、一通りのアーティキュレーションをキー・スイッチで切り替えていくようなパッチを呼び出しておき、アレンジが終わったら必要のないセルを捨ててメモリーを確保すると、よりスマートに作業できる。またSSDに最適化されているのもポイントで、これは筆者の回りの同業者のように、サンプリング・ライブラリーはSSDに、レコーディングはハード・ディスクにという使い分けをしているユーザーには大変うれしい機能。資料を読むとSSDからの読み込みはハード・ディスクの最大10倍と謳っており、DAWの作業中にシステム・クラッシュしても、その直前環境に戻るまでの待ち時間が格段に短くなっている。そのため筆者も日々この機能にはかなり助けられている。このようにPro 2を使うことでの利点は多岐にわたる。VSLをより本格的に使いたい人にはぜひ一度試してみてほしい。 サウンド&レコーディング・マガジン 2013年3月号より)
VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
Vienna Instruments Pro 2
15,750円
▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.6以降(10.7推奨)、INTEL Core 2 Duo(INTEL i5 Xeon以上を推奨)、2GB以上のRAM(4GB以上を推奨)、動作フォーマット:VST/Audio Units/RTAS/AAX Native/スタンドアローン ▪Windows/Windows 7(最新Service Pack 32/64ビット)、INTEL Core 2 DuoまたはAMD Athlon X2以上、2GB以上のRAM(4GB以上を推奨)、動作フォーマット:VST/RTAS/AAX Native/スタンドアローン