「MIKTEK CV4」製品レビュー:往年のビンテージ・モデルを意識した真空管コンデンサー・マイク

MIKTEKCV4
“音楽の街”として知られ、カントリー・ミュージックのホーム・グラウンドであるナッシュビルにて2009年に創立されたMIKTEK。新興メーカーでありながら、ハンド・メイドで製作されるマイクやマイクプリなどのクオリティの高い製品が評判となっている。そんな同社の日本初上陸というタイミングに合わせて、フラッグシップ・モデルである真空管コンデンサー・マイクCV4を紹介していこう。

往年のサウンドを意識したパーツ選び
指向性は9段階からセレクト可能


本機のサイズは長さが228mm、直径が50mmの円柱形で、名機TELEFUNKEN Ela M251とほぼ同等の大きさ。外観はクロムメッキ処理が施されたメッシュ周りからCV4というモデル名が控えめに刻まれた黒い樹脂部分を挟んで、ブラスト処理されたボディにはブランド・ロゴとシリアル・ナンバーの刻印のみ……という非常にシンプルな佇まい。これまた名機AKG C12のルックスによく似ており、後に紹介する仕様も含めて本機がクラシック・マイクを強くイメージしていることがよく分かる。マイクを収納する木製ケースにはスイベル・マウントも同梱され、さらに電源ユニット、専用7ピンXLRケーブル、ショック・マウントなども付属する。そのすべてがアルミ製ハード・ケースに収まるので収納時の取り回しも良い。続いて本機の仕様に目を向けてみよう。MK9と名付けられたデュアル1インチ・ラージ・ダイアフラムは、0.4ミクロンの金蒸着を施した5ミクロン・マイラーによって構成される。音の心臓部ともいえるアンプ部にはNOS(New-Old-Stock)のTELEFUNKEN EF800真空管を使用。独自の高電圧回路によってクラス最高峰のパフォーマンスを生み出している。さらにマイク用トランスとして有名なAIM BT4により、ビンテージ・チューブ・マイクの持つ温かみのあるサウンドを生み出す。これらの厳選されたパーツを精密かつ慎重に組み上げることによって、マイクの基本性能をより高めているのがこのブランドの大きな特徴と言えそうだ。また、パワー・サプライ部にあるスイッチによって、双指向〜単一指向〜無指向と9段階の指向性のセレクトが可能なため、さまざまな音源を多様なスタイルで収録できるフレキシブルな一面も併せ持っている。

アコギはナチュラルかつタイトな印象
一歩前に出てくる男性ボーカル


それでは肝心の音色をチェックしてみよう。まずCV4をRUPERT NEVE DESIGNS Portico 5012 Dual Mic Pre-Ampにつないでアコースティック・ギターに立ててみた。音を聴いた第一印象はナチュラルかつスムーズ。低域は豊かでしっかりとした太さがありながら、もたつく感じが無いので逆にタイトな印象すら覚えるほど。低弦のサステインをブーミーになり過ぎずにつややかにとらえているのが好印象であった。中域も非常にしっかりしているが、嫌なピーク感や硬さは全く感じられない。音の立ち上がりは速く、全体的にカラッとした音像なのは、中域の張りの良さによる部分が大きい。高域は明りょうかつ伸びやかで、きらびやかではあるがジリジリする耳障り感は微塵も無いので安心して聴ける。アルペジオでは一音一音に対する反応も良く、サステインや胴鳴りの感じを立体的にとらえてくれる。ストロークに対しても詰まったり、レンジが狭くて平面的な音像にならない点からも、本機のポテンシャルの高さを伺うことができた。次に男性ボーカルでチェック。アコギでのテスト時と同様に、太さや伸びがありつつ中域の芯がボケないので、音が一歩前に出てくる印象を受けた。少しオフめに立てて歌ってもフォーカスがしっかり合うため、音がにじまないのも特筆すべきポイントであろう。今回はチェックできなかったが女性ボーカル、アコースティック・ピアノ、ストリングス、各種ルーム・マイクとしての相性も良さそうな印象だ。 近年、コスト・パフォーマンスに優れたチューブ・マイクが数多くリリースされており、筆者もそのうちの幾つかはチェックしたが、中でも本機はラージ・ダイアフラムのチューブ・マイクとしては正統派のモデルと言える。上質なビンテージ・チューブ・マイクが持つ、リッチでヌケが良くてシルキーな音像を、この価格帯で表現しようとするメーカーの意気込みがしっかりと伝わってきた。流通数も限られた高価な本物が持つ“独自な世界観”には及ばずとも、ビンテージ・モデファイ・モデルとしてのクオリティとしては、肩一つ抜きん出たレベルという印象を受けた。近々リボン・マイクの発売も予定されているとのことで、そちらにも注目したい。 名称未設定-1.indd▲付属のパワー・サプライには、9段階の指向性をセレクトできるスイッチが付属する (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年3月号より)
MIKTEK
CV4
157,500円
▪形式/コンデンサー▪指向性/9パターン(無~単一~双指向/全9種類)▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪出力インピーダンス/200Ω▪最大SPL/133dB▪感度/−35dBX/Pa▪外形寸法/50(φ)×228(H)mm▪重量/780g