低域の音作りに力を発揮する音楽的パワード・モニター・スピーカー

KRKRokit RP5 G2

KRKの低価格なモニター・スピーカー・シリーズ、RokitがG2バージョンになって戻ってきた。1986年の設立以来、多くの革新的デザインのモニター・スピーカーを発表してきた同社だけに(特に小型パワード・スピーカーのV4は革新的だった)期待が膨らむところだ。

丸みを帯びたバッフルのデザインで
広いスイート・スポットを確保


KRKの低価格なモニター・スピーカー・シリーズ、RokitがG2バージョンになって戻ってきた。1986年の設立以来、多くの革新的デザインのモニター・スピーカーを発表してきた同社だけに(特に小型パワード・スピーカーのV4は革新的だった)期待が膨らむところだ。Rokit G2シリーズはパワード・モニターのラインナップで、ウーファーのサイズ違いでRP5、RP6、RP8の3機種があり、今回のRokit RP5 G2は25mmツィーターと127mmウーファー搭載の最小機種。より低価格のものも次々に登場してきているが、実売価格が4万円台は、かなり手ごろ感がある。箱から取り出してみると、黒一色にKRK独特の黄色のウーファーがインパクトがある。また、前面は角が丸くなっていてとても個性的。これはスイート・スポット(リスナーが音を正確に聴き取るための範囲)を広げる効果もあるそうだ。なお、ウーファーの材質は上位機種のVXTシリーズがケブラー素材なのに対し、本機はグラス・ファイバーを使用している。入力は背面にアンバランスのステレオ1系統(RCAピン)とバランスの2系統(TRSフォーン、XLR)。コントロールはVOLUME(−30dB〜+6dB)とHF LEVEL ADJUST(2kHz以上の高域調整用で、−2/−1/0/+1dBの切り替え)を用意する。なお、背面の電源スイッチを投入すると、前面のKRKロゴが点灯する。これは分かりやすい。また、同価格帯のパワード・モニターの多くが背面バスレフ・ポート式なのに対し、KRKは一貫して前面バスレフ・ポート式である。背面バスレフ・ポート式は、スピーカーと後ろの壁との間に適当な距離を置かないと、壁から反射する低音で音が不正確になりやすいが、前面バスレフ・ポート式では壁の影響が出にくいので、狭い自宅スタジオなどでは便利。とはいえ、スピーカーは設置位置でとても音が変わるので、正しく設置することが重要なのは、どのスピーカーでも同じである。

ビート作りに適した
迫力のあるサウンド


早速、いろいろな音源を試してみた。KRKらしく、低音の効いた打ち込みものやクラブもの、ディアンジェロなどのヒップホップ/ソウルには抜群の強みを発揮する。音が太いし、低域にスピード感があってしっかりしている。普段使っているモニターに比べると、同じくらいのサイズとは思えない迫力で、最初に同社のV4を聴いたときの驚きを思い出した。背面のボリュームは上げるほどに音がどんどん大きくなり、しかも音がくずれないので、ホーム・スタジオでは鳴らしきれないほどの大音量もOK。これでツィーターが15W、ウーファーが30Wの出力とは信じられないくらいだ。ボサノバの弾き語りや、クラシックの弦楽四重奏はどうかといえば、これも悪くはない。ややおとなしく、さっぱりとした印象だが、ルーム感や定位、高域もちゃんとしている。余計なぎらつきはない。普通に音楽を聴いていても、オール・ジャンルが楽しく聴ける。なお、背面のHF LEVEL ADJUSTはかなり効果があって、0dBから±1dBに切り替えるだけでかなり印象が変わる。いろいろ試して、ほかのスピーカーとも比べたりしたが、今は0dBで落ち着いている。部屋によって吸音されすぎる場合は+1dBにした方がいいだろう。また、録音用のモニターとしてチェックするために、まず普通の打ち込みでビートを作ってみた。これは至極快適だ。低音が気持ちよく前に出てくるし、低い音同士のニュアンスの違いもしっかりと聴き分けられる。音にノリながらどんどん作業が進められる。テクノとかクラブ系といったジャンルに関係なく、ビートものを作っていくのにはとても向いている。あまり音を出せない場合でも、低音がやせたりせずに同じバランスで聴けるので、住宅環境の厳しいところでビートを作りたい、というときにも活躍しそうだ。次に、アコギやバイオリンなどの生楽器とボーカルを録音してみた。ホーム・スタジオでは、録音時はヘッドフォン、再生時にスピーカーで音を確認することが多い。EQの効きやコンプのニュアンス、リバーブののり具合などがポイントになる。本機はやや重心が低めなので、アコースティック楽器はどうだろうと思ったが、先ほどのリスニング・テストと同じで、高域に関してはさらっとしていて余分なピークもなく正確、音作りはやりやすい。本スピーカーががぜん強みを発揮するのは、マルチトラック録音で、ベースやドラムなどとの組み合わせで低音の調整が必要になったときだ。ボーカルやギターの余計な低域をどのくらいカットすると良いサウンドになるかが見えやすいのだ。また、コンプに関しても、音の前後がとても把握しやすい。打ち込みもののリズム・トラックと生楽器の張り付き具合をそれぞれコンプで調節していくのが分かりやすく、とても面白かった。全体として、数十万クラスのモニター・スピーカーに比べるなら分解能が劣るが、ホーム・スタジオで使うのには全く問題ないクオリティを持っている。音楽的で、広い用途で楽しく作業できるパワード・モニターだ。
KRK
Rokit RP5 G2
41,790円/ペア

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/52Hz〜20kHz
▪ツィーター/25mm
▪ウーファー/127mm
▪クロスオーバー周波数/3kHz
▪外形寸法/185(W)×282(H)×230(D)mm
▪重量/6.1kg(1本)