ピッチ・シフトやノート・オブジェクト機能を備えた最新Auto-Tune

ANTARESAuto-Tune Evo
ANTARESからAuto-Tune Evoがリリースされました。Auto-Tuneは、エンジニアであれば知らない人がいないくらいメジャーなピッチ補正プラグインでしょう。スタジオには必ずと言っていいほど入っています。そのAuto-Tuneが、これまでのバージョン5からのアップデート。"6"ではなく"Evo"という名前を変えたところに意気込みを感じます。個人的にはバリバリ使用するような仕事はあまりしていませんが、気になっていたので早速試してみたいと思います。

リアルタイムのピッチ・シフトや
ボタン1つでフォルマント修正が可能


今回発表されたラインナップは、ここで試用していくネイティブ版のほか、ネイティブ版iLok付き(オープン・プライス/市場予想価格53,000円前後)、TDM版(オープン・プライス/市場予想価格84,000円前後)の計3種類。それぞれ、WindowsとMacに対応し、ネイティブ版はRTAS/VST/Audio Unitsに対応します。またこれまでAuto-Tuneを使ってきた人も、有償でアップグレードが可能です(詳しくはmusic.e-frontier.co.jp/参照)。早速立ち上げてみると、画面デザインの印象が結構変わっています。先日発表されたDIGIDESIGN Pro Tools 8のようなシックな感じです。また、オートマティック・モードとグラフィカル・モードは画面上部のレイアウトが共通なのですが、そこに重要なパラメーターが並んでいます。特に波形の特性を解析するためのTrackingツマミがここに配置されたのは使いやすいです。バージョン5では、何で多用するのにOptionメニューの中に入ってしまったのかが謎だったんです。ついでにOptionメニューの中も見てみると、ショートカットが自由に組めるようです。また画面のサイズも変えられるようになりました。それでは早速使っていきましょう。まずはオートマティック・モードです。これは、あらかじめ設定しておいたスケールに自動的にピッチを合わせることができるモード。ボーカル・トラックにプラグインしてぱっと聴いた音色は、今までに比べて少し硬さが取れて、自然で良い印象を受けました。続いてTranspose/Formant/Throat Lengthといった新しい機能を試してみます。まずTransposeツマミをぐっと上げてみたところ、これはいわゆるピッチ・シフトの効果が得られました。セミトーン単位で±1オクターブの範囲で調整できるようになっています。リアルタイムで使えるのは便利ですね。これだけだとそのまま使うのは音色的に不自然だったので、ピッチ・シフトした音を滑らかにするためのFormantボタンをオンにしてみると、自然になりました。さらに人間のノドの特徴をモデリングすることによって、声のキャラクターを補正することができるThroat Lengthツマミで少し調節すると、もとの声に近いナチュラルな感じに仕上がりました。

ノート・オブジェクト機能で
詳細なカーブやリチューンの設定


続いて、グラフィカル・モードを見てみましょう。ここでは検出したピッチを画面表示して、細かなピッチのコントロールを行うことができます。また編集ツールとしては、今までのラインとカーブに加え、新しくノート・オブジェクト機能が追加されました。Make Notesボタンを押すとオーディオを分析し、ピアノロール上のMIDIデータのように、一定範囲の波形が四角い枠の中に表示されます。この部分をノート・オブジェクトと呼び、その範囲ごとにカーブやラインなど細かいエディットが可能です。また、Number of Note Objectsツマミではオブジェクトの範囲も調節できます。さらに、ノート・オブジェクトは任意で選択したパートに適用することができるので、編集ツールを部分的に使い分け、そのパートに一番合った方法で作業することが可能になります。そのほか、それぞれのオブジェクトごとに、ピッチ修正を始めるまでのスピード(リチューン・スピード)が設定できるようになっています。これまでのAuto-Tuneでは、リチューンの設定はオートマティック・モードでオートメーションを書いて設定するのが一般的だったと思いますがが、今回からそれぞれのオブジェクトで、パートにごとに最適な設定ができるようになりました。新しい機能をざっと試してみて、使いやすさにさらに磨きがかかった感じです。正直いろいろできることが多すぎて戸惑ってしまいました。ちなみに互換はしていませんが、Auto-Tune EvoにはAuto-Tune 5のライセンスも付属するので、いろいろ使い分けてみるのも良いと思います。同じ素材のトラックを2つ作り、それぞれにEvoとバージョン5をプラグインして聴き比べてみたのですが、かかり方と音色が違うので良いダブルができましたよ。
ANTARES
Auto-Tune Evo
ネイティブ版:オープン・プライス(市場予想価格/48,000円前後)

REQUIREMENTS

▪Mac/Mac OS X 10.4.11以降(詳しくはDIGIDESIGN Pro Toolsの対応OS参照)、Audio Units/RTAS/VST/TDM対応
▪Windows/Windows XP/Vista(詳しくはDIGIDESIGN Pro Toolsの対応OS参照)、RTAS/VST/TDM対応