UNIVERSAL AUDIO Volt 476 レビュー:1176と610のシミュレート回路を搭載するオーディオ・インターフェース

UNIVERSAL AUDIO Volt 476 レビュー:1176と610のシミュレート回路を搭載するオーディオ・インターフェース

 UNIVERSAL AUDIOより発売された新たなオーディオI/OのVoltシリーズ。Volt 1、Volt 2、Volt 176、Volt 276、Volt 476の全5種類をラインナップしています。今回はその中で一番入出力数が多いVolt 476を紹介しましょう。

一歩先を行く機能性で宅録に必要な性能と感覚をVoltで得られる

 かれこれ8年ほど前にApolo Twinを使い始めたことがきっかけで、私とUNIVERSAL AUDIOとの濃密な付き合いが始まりました。普段はApollo X4をメインに、Apollo 8 DuoをThunderboltで接続して計12chで使っており、ボーカルやピアノはもちろん、ドラムまで対応可能です。そんなApolloを使用してきた私ですが、Voltを手にした際にもUNIVERSAL AUDIOの良心に感動を覚えました。

 Volt 1とVolt 2はラック型、Volt 176とVolt 276、そして今回のVolt 476はデスクトップ型です。機種名の語尾“76”という数字から見てお分かりかと思いますが、デスクトップ型のモデルには同社のクラシカルな名機、1176コンプレッサーを再現した機能“76 COMPRESSOR”が搭載されています。また全機種には、同社の真空管プリアンプ610をシミュレートした回路も内蔵。こちらはVINTAGEというボタンのオン/オフにより回路を使用するかを選べるようになっています。

UNIVERSAL AUDIO Volt 476のトップ・パネル

トップ・パネル。左側はインプット1、2のパラメーターで、上から76 COMPRESSORとVINTAGEモードのボタン、ゲイン・ノブとなっている。76 COMPRESSORではアタックとリリース・タイム設定が違う3つのプリセット(VOC/GTR/FAST)を切り替え可能だ。右側にはモニター音をモノラル化するボタン、モニター・ボリューム・ノブ、モニター信号系統を切り替えるボタンを備えている

 Volt 476は4イン/4アウト仕様で、付属の5V DCアダプターで駆動します(ほかのモデルはUSBバス・パワー対応)。北欧のビンテージ・シンセのような木枠と白のボディで、机の上に置き、眺めていて音楽的に気持ちが良い見た目です。これは個人的に最重要なポイント。持ち運びにも便利かつ安心感のある重量感で、筐体の印象は100点です。

UNIVERSAL AUDIO Volt 476のリア・パネル

リア・パネル。左から、電源スイッチ、5V DCアダプター用端子、パソコン接続用USB-C端子、MIDI OUT、IN、モニター・アウト(フォーンL/R)、ライン・アウト×4系統(フォーン)、ライン・イン×2系統(フォーン)が並ぶ。フロント・パネルには48Vファンタム電源ボタン、マイク/ライン/インスト・イン×2系統(XLR/フォーン・コンボ)、Hi-Z切り替えボタン、ヘッドフォン・ボリューム・ノブ、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)がスタンバイしている

 UNIVERSAL AUDIOの中では低価格帯に位置するVoltですが、先述した76 COMPRESSORやVINTAGEモードを搭載することで世間的に言われる“必要最低限の機能”からは一歩先を行っており、同社がいかに良き音楽作りへと導こうとしているか、そこに必要なプロダクト作りにきちんと重点を置いているかが伝わってきます。これから音楽制作を始める初心者の方にとって、Voltは最初のオーディオI/Oの選択肢に入ってくると思いますが、宅録で最低限必要な機能や身に付けるべき感覚をこの1台で十分得られますし、Voltがそれを導いてくれることは間違い無いでしょう。

温かみがありレンジがぎゅっとまとまった癖の無いフラットなサウンド

 Volt 476を使って宅録を想定したボーカルとパーカッション、ギターのレコーディングをしてみました。とてもクリアでSN比も良く、全くストレスを感じません。スピーカー・アウトとヘッドフォン・アウトの音質も想像を上回るもので、同社らしい温かみのある音の方向性で、レンジ感を少しぎゅっとまとめたような印象です。癖の無いフラットな音になっています。

 次にVintageモードを使用しました。610を再現していることもあり、少し中域が膨らんで高域の伸びが減り、真空管のひずみに近い雰囲気を感じます。アコースティックな音楽の録音などで簡単に雰囲気を加味することができますね。次に76 COMPRESSORを試します。VOC/GTR/FASTという、アタック&リリース・タイムが違う3つのプリセットをボタン一つで切り替えるのみで細かな設定はできないのですが、入力のゲインによりコンプのかかり具合を調整できるように感じました。これは非常に便利な機能です。普段は歌でコンプのかけ録りはあまりしない方ですが、この76 COMPRESSORはかかり具合に嫌味が無く、簡単に押し出し感を得られるため、ボーカルや楽器録音の際の歌いやすさ、演奏のしやすさをもたらしてくれると思います。シンプルなコンプですが、表現力には1176らしさも十分に感じられました。

 最後にVINTAGEモードと76 COMPRESSORを同時使用してみました。Apollo+UADプラグインのユーザーとして、普段はたくさんの選択肢の中から何か自分で音を突き詰めたり、ゴールを見付けていくわけですが、このVINTAGE+76 COMPRESSORは便利なエフェクト・モードを使用している感覚で、一つのゴールとなるような、一聴して良いと感じられる音です。押し出し感、真空管回路のニュアンス共にUNIVERSAL AUDIOの音楽的な心意気が感じられます。

 Voltには多くの付属ソフト&プラグインがあり、そのチョイスにもセンスを感じました。DAWのABLETON Live Liteやボーカル・エディットに欠かせないCELEMONY Melodyne Essentialのほか、ギター/ベース・アンプ・シミュレーター、インストゥルメント、リバーブ、ディレイ、サチュレーター、コンプなど、音楽制作に必要なものがセットになっています。

 ビギナーの方のスタート・セットとしてはもちろん、Apolloユーザーとしても1台あったら使い道がたくさんあり、持っていて損は無いオーディオI/Oだと思います。個人的には、自宅スタジオから配信するバンド編成のインスタ・ライブなどで、Apolloのステレオ・アウトをAPPLE iPhoneと接続したVoltに入れて、76 COMPRESSORで2ミックスの音をまとめてみたいです。

 

神谷洵平
【Profile】ドラマー/作編曲家/プロデューサー。東川亜希子とのユニット=赤い靴での活動や劇伴、CM音楽の制作も行う。大橋トリオ、あいみょん、星野源、トータス松本らの作品やライブにも参加する。

 

UNIVERSAL AUDIO Volt 476

オープン・プライス

(市場予想価格:45,100円前後)

UNIVERSAL AUDIO Volt 476

SPECIFICATIONS
▪オーディオ入出力:4イン/4アウト ▪ビット・レート/サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪ダイナミック・レンジ:112dB(マイク・イン)、111dB(ライン・イン1/2、インスト・イン)、113dB(ライン・イン3/4)、110dB(アウト) ▪ひずみ率:0.0007%(マイク・イン)、0.0008%(ライン・イン1/2)、0.0006%(ライン・イン3/4)、0.006%(インスト・イン) ▪電源:5V DCアダプター ▪外形寸法:212(W)×66(H)×132(D)mm ▪重量:920g

製品情報